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というわけで、発売から半年経ったので解禁っ!
某ゲーム、すなわち、『星彩のレゾナンス』の、私が担当したとされるテキストについてです。 ゲームシナリオのお仕事は、まずプロットにOKをいただいてから、シナリオテキストに着手し、それを提出、OKをいただいて初めて納品となります。 他社さんでは、既に上がっているプロットを渡されて、「これに沿って書いてください」という仕事もあります。『星彩のレゾナンス』に関しては、共通ルートは既存のプロットがあり、攻略キャラルートは担当ライターが原案・プロット~テキストを仕上げるという感じの仕事でした。 ですが、この作品に関しては、プロットやシナリオにOKをいただいたいても、その後に細かい修正を要する仕様変更が多く(既に着手した後や、納品した後でも発生)、恵ルート納品時に、「私のテキストは素材に使っていただいて構いません」という言葉と共に初稿の最終納品をしました。 納品順は、共通ルート→真琴ルート→由布ルート→恵ルートの順です(縁子ルートなんて、存在することすら知りませんでした。公式サイトで神住と縁子のCGが出た時、「西村先生、攻めるなぁ」と思ったくらい)。 共通ルートを納品してしばらく経ってから、共通ルートを社内ライターの西村先生が書き直すことになりました。 私の書いたシナリオだと、販社さんのOKが出ないから、というのが理由だそうです。 先方さんのプロットに従って書いたのに。 修正指示に備えて、シナリオも早めに納品したというのに。 それまでポロポロと仕様変更があったため、多少の不信感はあったのですが、この共通ルート書き直しにより、既に書けていた真琴ルート全部と由布ルートの途中までを、またもう一回、共通ルートで出てきた情報に合わせて書き直すことになったのが、不信感の決定打です。 全てのテキストの納品以後は、ほとんど交流はなく、ただ報酬の支払いのみで株式会社八咫鴉さんと繋がっている感じでした。 発売前のブログで『私の文章、どこまで使ってくれてるんだろう?』と書いたのは、ある程度は改変されていても仕方がないと思ったからです。 プロットはかなり以前にOKをもらっていたし、多少はテキストを改変されたとしても、話の筋までは変えないだろう、という認識でおりました。 大幅に変える時は、共通ルートが書き直しになった時のように、一言でもご連絡をいただけるものだと信じてもいました。 が、発売後に聞こえてきた評判は、耳を疑うものでした。 書いた覚えのない、想像もしない類の物語が、私の書いた作品として発表されるのは、恐怖という以外の何物でもありません。 ユーザーさんのアップしてくださった画像にあった文章は、ひとつの文章内でさえ日本語として成立していない破綻したものでした。 しかも、それが私の書いたものとしてユーザーさんの間に伝わっていくことに、恐怖と共に憤りも覚えました。 いくら最終的に素材代わりにしてもいいと言ったとはいえ、物語自体が大きく変えられているなどとは、さすがに予想すらしていませんでした。 別件もあって、八咫鴉の代表さんに相談したところ、「調整するとは聞いていたが、こんな大掛かりなテキスト改変については、全く聞いていない」とのこと。 私自身が書いたテキストを改めて代表さんに送付し、厳重抗議と共に、社内にあるはずのゲームになった文章を読んでいただいたところ、「これは円さんの書いたものではない」とおっしゃってくださいました。 会話を続けてわかったことは、『星彩のレゾナンス』のディレクターさんが勝手な判断に基づいて、私の文章を勝手に差し替えたということでした。 「これでは当社が円さんに依頼した意味がない。円さんの名前・経歴に泥を塗るような事態になってしまい、申し訳ないことをした」と、代表さんから正式に謝罪をいただきました。 この件もあり、由布・恵・真琴というキャラに日の目を当ててあげたくて、また、あんな物語として破綻したモノを納品してはいないという証明として、ライターのワガママではありますが、一度、納品したストーリーで、シナリオテキストを小説という形で書き直し、同人誌で発表する許可をいただきました。 許可をもらった、というか、「これでは円さんの名前に当社が泥を塗った形になるので、ぜひ、同人誌で出して、身の潔白を証明してください」とお申し出いただいたんです。 ぶっちゃけていうと、八咫鴉さんも被害者であるので、同人誌を作るに当たって、「御社から出しますか?」と提案したのですが、労力に見合った収入が私に入らないということと、流通さんとの権利の関係上、いろいろと難しいということでしたので、同人誌は私個人で出すことになりました。 改変されたとはいえ、正史はやはりゲーム本編テキストです。 誰が書いたどんな話でも、事情はユーザーさんには関係ありませんし、あのテキストを好きだと思うユーザーさんもいらっしゃるでしょう。そういうユーザーさんの思いまで否定するつもりはありません。 書いたテキストが使われなかっただけでなく、あんなテキストを書いたことにされた私の思いも、ユーザーさんには何の関係もないことです。 ですので、「今すぐテキスト差し替えの件を公表していいですよ」という許可はいただきましたが、楽しんでくださっているかもしれないユーザーさんのことを考えると、せめて発売から半年は待った方が良いのではないかと提案し、8月下旬、こんなネットの片隅のブログで公表ということになりました。 こんな形で多数のユーザーさんを巻き込んでしまうことになり、特に、私が関わっているからということでご購入くださったユーザーさんを裏切ることになってしまい、大変申し訳なく思っております。 それにしても、ディレクターさんが、何を考えて、私の名前を使って、私の文章を差し替えたのかは、未だに意図がわかりません。 差し替えるのなら、そのテキストを書いた人の名前を出すこと、それが、責任というものではないでしょうか。 また、メインライターであるはずの西村悠一先生が、全てのテキストをチェックしなかった理由もわかりません(チェックしたのかもしれませんが、チェックした上であのテキストを通したのなら、私は彼の日本語能力を疑います。が、公式ブログでの彼の発言を見ると、おそらく彼も、彼自身が一度チェックした私のテキストが差し替えられているのをご存知なかったのではないかと考えます)。 というか、あれだけ大量の誤字脱字をそのまま製品として販売するなんて、商売としてありえない……。 共通ルートが書き直しになったのは、単に私の実力不足でしょう。その点は深く反省すると共に、謝罪いたします。 が、攻略キャラの3ルートを、あそこまで大幅に改変するのなら、プロットの時点でボツにするなり、初期の内に私のクビを切ってくれればと思うのですが。 ディレクターさんにどんな意図をがあって、あんなテキストに差し替えたのか、その真意は八咫鴉代表さんにもわからないとのことです。 状況からは穿った推測しかできませんので、私の意見はここでは伏せておきます。 ただ私からは、人の文章を勝手に『不細工な文章』に改悪しておきながら、ご自分の名前は表に出さずに、尻拭いを他人任せにして、ゲーム発売前にさっさと退職なさった良いご身分の方、という状況しか見えません。 事前に何らかの説明があれば、また話は違っていたんでしょうけれど。 ……もう、ただただ、アレを私が書いたことにはしないでほしかった、としか言えませんよ……。 レゾナンスの評判が出てくるにつれ、次の仕事(当時、既に着手済み)に影響したらどうしよう、と、内心、戦々恐々としておりました。 ですが、ありがたいことに、お仕事先の担当さんは「無能なディレクターさんに当たったんですね、ご愁傷様」と笑い飛ばし、労い(?)の言葉をかけてくださいました。 それだけでなく、「もしあなたがこんなクソテキストを出してきても、ウチは突っぱねますよ。こちらは提出された作品の出来に納得しない限り、納品を受け付けません。つまり、こちらがあなたのテキストの納品を受けつけている以上、ウチの仕事に関して余計なことを考える必要はありません」と、力強いお言葉もくださいました。恐縮です。 ご存知の方もいらっしゃるように、株式会社八咫鴉さんは会社を閉めました。 ブランドとしての『Yatagarasu』は他会社さんに委譲するとのこと。 なお、今後については、元・八咫鴉代表の蒼鴉さんと協議中です。 私の仕事に関しては、取引先がなくなるわけではありません。 業界内の人には経緯を話せばわかってくださるだけの実績を私は積んできておりますし、あんな破綻した日本語は書かないことくらいはレゾナンスの前後に出た作品で証明できるので、別に構わないといえば構わないんです。 ですが、高いお金を出して『星彩のレゾナンス』というゲームを楽しみにして購入してくださったユーザーさんに対する裏切り行為だけは、やっぱりどう考えても許せないんです。 ――もし、私が楽しみに購入したゲームの半分が、あんな日本語崩壊テキストで、物語としても破綻していたら。 そう思うと、平静ではいられません。 いくら絵師さんのイラストが素敵でも、西村先生が萌える話を書いても、「何だよこれは、金返せ!」と思ってしまうでしょう。 そう考えると、あの納品の時の自分の「素材にしてもいい」発言が本当に腹立たしいです。 納品後も、自分が書いたシナリオに責任を持つべきでした。 全てのユーザーさんにお詫びいたします。 申し訳ありませんでした。 この件に関係した続報が出せるかどうかはわかりませんが、出せることを祈っています。 また、私の名前で出された、あのテキストを「円さんの文章じゃない」と言ってくださったユーザーさんに、心の底から感謝します。 ライターとしてデビューしてから本当に色々ありましたし、辞めようかなと思ったことは一度や二度ではありませんが、それでも続けてきて、本当に良かったと思います。 (だからこそ、されたことが許せないんですが) 最後に、テキスト改ざん発覚後、業界内外の色々な方にご助力・ご助言をいただきました。 特に元・八咫鴉代表の蒼鴉さんは、ご自身が大変な中、とても親身になって相談に乗ってくださいました。本当に感謝しております。 沢山の方々に支えられている幸せを感じました。 まだまだ未熟な私ですが、今後一層、精進いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。 円まどか 拝 (※ その2に続きます) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年08月22日 17時32分43秒
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