WinMXとかWinnyとか、日本ではろくな扱いを受けていないP2Pですが、海外ではけっこう真面目に議論されてるんですよというブログ。
以下の文章は、TorrentFreakの「"Pirating" UK Student to be Extradited to the US」という記事を翻訳したものである。
原典:TorrentFreak
原題:"Pirating" UK Student to be Extradited to the US
著者:enigmax
日付:March 13, 2012
ライセンス: CC BY
英国のビデオ・リンク・サイト TVShackの元管理人リチャード・オドワイアが、著作権侵害の容疑で、米国に引き渡されることになった。市民から怒りの声が上がったにもかかわらず、本日、内務相テレサ・メイは引渡命令を承認した。この23歳の学生は、これまで一度も米国を訪問したことはないのだが、今、彼は米国で数年間の懲役刑を科せられる可能性に直面している。
昨年、リチャード・オドワイアは、著作権で保護されたテレビ番組へのリンクを掲載したウェブサイト TVShackを運営したとして、警察に逮捕された。
英国最大の刑務所に拘留された後、彼は米国への引渡し要求と戦った。が、その戦いに勝利することはできなかった。
2ヶ月前、英国法廷は、彼の引渡しにゴーサインを出し、内務相テレサ・メイは本日、公式に米当局からの引渡し要求を承認した。
リチャードの母、ジュリア・オドワイアは、この判断にひどく失望し、息子が米国に「売り渡された」という。この引渡しは彼の人生を失わせるかもしれない。
「今日、また一人の英国市民が英国政府に裏切られました」と彼女は言う。
「リチャードの人生-彼の研究、就職機会、経済的安定-は失われようとしています。回復までにどれだけの時間がかかるかわかりません。英国政府が、切望されていた引渡し法の改正を行わないためです。」
特定の状況において単に著作物にリンクする行為は英国では犯罪ではなく、この引渡しは議論を引き起こしている。2010年、リンクサイトTV-Linksの裁判では、情報の『単なる導管』とみなされ、サイト管理人は無罪となっている。
しかし、米国での最近の判決は、それとは全く異なる。つまり、リチャード・オドワイアが米国に引き渡されれば、、米国で裁判にかけられたリンクサイトの運営者と同様の運命を辿ることになる。
今年1月、Ninjavideoの創設者 ハナ・ベシャラは、懲役22ヶ月(執行猶予2年)、500時間の地域奉仕活動、およそ210,000ドルの賠償を命じられた。また、同サイト管理人のマシュー・スミスも、懲役14ヶ月(保護観察2年)、172,000ドル超の賠償を命じられている。
補足しておくと、2011年10月に、英米間の犯人引渡し条約に関する司法審査において、英米間の格差はなく公正なものであるとの判断が下され(これは英クラッカー ゲイリー・マッキノンの引渡しにも関係する)、今年1月には、地裁がオドワイアの米国への引渡しは妥当であるとの判決を下している。
地裁判事は、「リチャード・オドワイアが北イングランドから一度も出たことがなかったとしても、彼の犯罪行為による直接的な結果が米国にもたらされていると言われている。そのような事態は、権限を持つ英国当局が法的措置を講じない限り、ここ英国において審理を要求するものではなく、私の判断において、米国での審理を許可する」としている。
なお、記事本文中にもあるように、TV-Links裁判では、英国ではリンクサイトの運営によって著作権侵害には問われない、という判決が下されている。リチャード・オドワイアが運営していたサイトも、TV-Links同様に、コンテンツを自らが管理するサーバに蔵置していたわけではなく、たとえばYouTubeなどのビデオサイトにリンクを張っていただけであった。また、彼が運営するサイトは、米国のサーバを使用するものではなかったが、米国ドメインを使用していたという。
つまり、米国の引き渡し要求は、米国ドメインを使い、米国に被害をもたらしたと判断されれば、米国の刑事事件として裁ける(と米当局が考えている)ことを意味する。
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