WinMXとかWinnyとか、日本ではろくな扱いを受けていないP2Pですが、海外ではけっこう真面目に議論されてるんですよというブログ。
以下の文章は、TorrentFreakの「Canadian Songwriters Want to Legalize File-Sharing」という記事を翻訳したものである。
原典:TorrentFreak
原題:Canadian Songwriters Want to Legalize File-Sharing
著者:Ernesto
日付:December 06, 2011
ライセンス:CC BY
多くの大手エンターテイメント産業がBitTorrentサイトに戦いを挑んでいる中、カナダ作詞作曲家協会( Songwriters Association of Canada:SAC)はファイル共有に好意的だ。SAC副代表ジャン=ロベール・バイスランは、インターネットが音楽ビジネスを生き返らえらせたとTorrentFreakに語っている。音楽の共有は人の性であり、作詞作曲家は、作品に対する補償さえあれば、ファイル共有の合法化を望むのだという。
ブライアン・アダムス、エディ・スチュワート、ランディ・バックマンといった大御所を擁するカナダ作詞作曲家協会(SAC)は、1,500組超のカナダ人アーティストを代表している。
音楽産業に結びついた多くの団体と同様に、SACもファイル共有については強い意見を持っている。しかし、彼らは他の大多数とは異なり、音楽共有の場を閉じることを望んではいない。むしろ、まったく正反対の意見を持っている。
SACは、消費者が世界中のすべての音楽にアクセスできるべきだと考えている。これは今日では、ファイル共有サイトだけが可能にしているものである。そこでSACは、これらのサイトを閉鎖するのではなく、ファイル共有を合法化し、作品を共有されたアーティストに補償を与えるよう求めている。
「人々は、常に音楽を共有してきましたし、これからもそうでしょう。私たちが共有する音楽は、私たちが誰であるか、私たちの友だちが、私たちの仲間が誰であるかを決定づけてきました。私達の文化構造における音楽の重要性は、カナダだけではなく世界中で、共有体験と密接不可分に結びついているものです。」とSACは提案している。
SACによれば、ファイル共有は音楽産業にとって脅威ではなく、むしろ機会として捉えられなければならないという。SACはこの点を証明するため、ある種の消費者向けライセンスシステムを通じて、ファイル共有をマネタイズするというアイディアを提示し、他の利害関係者を説得しようとしている。
「音楽ファイル共有は、あらゆるジャンルの音楽にとって強力かつオープンな、世界規模の配信システムであり、クリエイターと権利者双方に大きなチャンスをもたらすものです。加えて、公正かつ適正なマネタイズ・システムが導入されれば、消費者やインターネット・サービス・プロバイダまで含めたすべての利害関係者に、大きな利益をもたらすでしょう。」
「特定のテクノロジーではなく、行為をマネタイズすることで、音楽クリエイターや権利所有者は、ますます短いサイクルで変化するテクノロジーからマネタイズするというほとんど不可能な挑戦ではなく、長いスパンで安定したビジネスモデルに基盤を置くことができるのです。」
上記は、技術的なイノベーションに対するメジャーレーベルやRIAAの硬直したスタンスを、SACが間接的に批判しているようにも見える。ラジオであれ、カセットテープであれ、ファイル共有であれ、彼らは新たなテクノロジーを音楽の人気の拡大を助けるものとしてではなく、脅威とみなしてきた。
TorrentFreakでは、この野心的な提案について詳細を伺うべく、SAC副代表ジャン=ロベール・バイスランにコンタクトを取った。彼は、他の音楽産業のキープレイヤーにも、共有のパワーと価値に気づいて欲しいと話した。
「(ファイル共有の)習慣は素晴らしく、止め難いものだと考えています。したがって、公衆に汚名を着せることなく、万人が音楽共有を続けられる制度を確立し、その代わりに、共有された音楽ファイルについて、アーティストや権利者に公正に補償する仕組みを模索したいと考えています。」とバイスランは我々に話した。
「他にもポジティブな側面はあって、商業的には流通していない音楽や、高品質なデジタルファイルを発見できたり、経済的に苦しくとも音楽を楽しむことができたり、新たなアーティストを発見、友だちにレコメンドしたりすることも出来るようになります。」
さらにバイスランは、大手レーベルの方針が、必ずしもミュージシャンやアーティストの最良の利益につながるわけではないと指摘する。彼は、多くのアーティストが未だにそうした企業に依存していることを認識しつつも、彼を含む作詞作曲家が、レーベルのやり方に必ずしも賛同しているわけではないという。
「大手レーベルは、法的措置を講じてでも、市場が利益を生み出すものだと考える限り、できるだけ市場をコントロールしようするでしょう。それがコンテンツプロバイダに不利益を被らせるとしても、市場のコントロールの維持に役立つと考えられる商業努力ならどのようなものでも取り入れようとするでしょう。」とバイスランはいう。
「と同時に、彼らは、脅威や嘘を弄してでも、彼らのコントロールを奪う可能性のあるあらゆる選択肢を阻もうとするでしょう。彼らは大金を注ぎ込み、彼らのビジョンを支持するよう政府にロビイングします。私たちは、消費者とクリエイターにとって、ともに良いと思えるような音楽への新たなアクセス手段を発展させ、提供することが、私たちの使命だと考えています。」
バイスランによれば、インターネットは天からの恵みであるという。大手音楽レーベルにとってはそうではないかもしれないが、ミュージシャンや消費者にとっては確実にそうであると。
「音楽は、ウェブによってより良い方向に向かっています。インターネット・ネットワークは、場所や時間に関わらず、音楽的なディスカバリーを可能にします。今まで想像だに出来なかったミュージシャン同士のコラボレーションを実現してもいます。国外でのツアーを組むにしても、高くつく国際電話や郵便の遅延などに悩まされることもなくなりました。」
「インターネットは、個人による非営利の音楽共有を劇的に広げました。私たちはそれを支持します。もちろんそれだけでは、音楽クリエイターが自らの作品が膨大に使われたとしてもまったく補償する術がありません。」
この最後のステップを解決するために、SACは消費者団体や権利者、コンテンツプロバイダら、これに関わるすべての利害関係者と、彼らが提唱するファイル共有ライセンスについて積極的に対話を求めている。
この最終ステップは関係者にとって大きな跳躍になるのだろうが、SACがファイル共有の良い側面に注目しているのは重要である。これは、RIAAやCRIAから聞かされてきた抑圧的なスタンスとは対照的に、歓迎すべきものである。
「ファイル共有をマネタイズする」という提案は、必ずしも理想的とは言えないのかもしれないが、SACのスタンスは『問題』の本質に向き合っているのだろう。規制を加える代わりに、音楽産業は公正な価格で、世界中のあらゆる音楽を無制限に提供する方法を見つけ出さなければならない。
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