英国:英国版ストライクポリシーが提案されるもISPは反発

以下の文章は、TorrentFreakの「UK Pirates Face Disconnection, ISPs Object」という記事を翻訳したものである。

原典:TorrentFreak
原題:UK Pirates Face Disconnection, ISPs Object
著者:Ben Jones
日付:August 26, 2009
ライセンス:CC by-sa

Digital Britain周りで起こっている最近の出来事は、どうもあらぬ方向に向かっているようだ。Mandelson卿は終始一貫して、司法手続きなしに、そしてそのような手段が本当の必要なのかというOFCOMの判断を待たずして、ファイル共有を疑われるユーザを切断するという提案を推し進めている。

現在、英国のDigital Britainは混乱と矛盾の只中にある。Mandelson卿がより強力な提案を求めたことでレポートの公開が遅延して数日、それは真実となった。また、昨年にはすべての手続きは事実をベースにすると確約していたが、そちらは全くの嘘であった。

Peter Mandelsonの向かうところ必ず論争が巻き起こるようである。彼は不正の疑いを受け、2度にわたりイギリス内閣を辞職しており、まさに彼こそ、Department for Business, Enterprise and Regulatory Reform (ビジネス・企業・規制改革省: BERR、またはビジネス・イノベーション・技能省: BIS。今年6月に名称が変更された)を率いるにふさわしいのだろう。

このタイミングについては、いささか疑わしい点がいくつかある。Mandelson卿が強硬な態度をとったのは、彼がDavid Geffen(訳注:あのアサイラム、ゲフィンレコーズ、Dreamworksで有名な人)と共に休暇を過ごした直後だったためだ。政府筋がThe Timeに語ったところによれば、「彼は先週まで、Digital Britainアジェンダに関して個人的関心をほとんど示していませんでした。Peterが休暇から戻ってくるやいなや、より厳格なレギュレーションが必要だとの命令を出してきたのです。」という。

本日、BISからリリースされた提案書によれば、以前の提案―2012年前に実施される技術的対策を考慮した上での今後数年にわたる変化の予測―では、対策にどれほど大きく後れをとってしまうのかという点の査定に取りかかっているのだという。そして彼らは、手段をさらに強化する必要があると主張する。たとえ、それが不必要なものであっても。実際彼ら自身、そう説明している。

以前の提案では、技術的手段が必要であるかどうかを査定するため、Ofcomにて詳細な手続きを経ることになるとしていた。このアプローチでは、最も新しい技術的対策でも、実装されるのは2012年となってしまう。政府は、もし対策が必要だと考えられたとしても、海賊行為によるプレッシャーに耐えているクリエイティブ産業が待っていられるほどの時間ではない、との見解に達した。本日概説される新たなアイディアは、より早期に対策を講じることを可能にするだろう。
(強調は筆者Ben Jonesによる)

もちろん、もし対策が必要であるとは考えられないのであれば、たとえば訴えを裏付ける証拠を見つけ出すことができなければ、著作権産業から要請されている種々の法案の多くが通ることはないだろう。コンテンツ産業に関する少なくとも2つの別個の調査を見ても、映画興行収入音楽セールスにほとんど影響を及ぼしていないことが示されている。このことは、事実以上に、繰り返し行なわれた必要性の主張に基づいて、突然に立法が促されたことを説明してくれるのだろう。

TalktalkのAndrew Heaneyは、ISPは今回の動きに対し反発している、とBBCに語っている。「どうしても続けてやるというファイル共有ユーザであれば、発見を避けるために自分自身のアイデンティティ、活動をマスクすることも比較的簡単にできてしまいますから、疑われた人を遮断するというのは無駄でしかありません。」と彼はいう。彼らは、調査者の誤認によって、またはオープン/アンセキュアなWifiスポットの利用によって、無関係の人々を遮断してしまうのではないかと、然るべき懸念をしている。

一方、音楽産業は歓喜し、BPIもこれを歓迎した。彼らは「デジタル・パイラシーは英国クリエイティブ産業にとって深刻な問題であり、真の脅威です。」といつものことではあるがそれをバックアップするデータを示すこともなくコメントした。「海賊行為問題の解決は、効果的で、現状に見合った、抑止的なものでなければなりません。」とはいうものの、1865年の赤旗法などは自家用車の普及を阻止することにも、鉄道産業、馬関連産業をテクノロジーの進歩からの保護することにも、効果的だったわけでも、状況に見合っていたわけでも、抑止的だったわけでもない(訳注:なのに法律として成立した)。

Digital Britainのサイトにコメントを投稿したある人物は、多数の人々が英国海賊党に加わっていると指摘している。ただ、これについて同党は、メンバーが微増していると感じる程度だと述べている。もちろん、そのメンバー達は今回の動きに対して激怒している。

Digital Britainを担当する大臣Stephen Timmsも以下のように発言している。「私達はこれまで、協議に対する反応に慎重に耳を傾けてきました。当初のプランが対策を遅らせてしまうことで権利者に不当に影響を及ぼすとの懸念が広く存在することも明らかになっています。そこで、私達の新たなアイディアへの意見を頂戴し、もちろん、これまで頂いた意見と合わせて、この難しい問題に取り組むための最善の策を決定するのに役立たせたいと考えております。」

彼は英国600万人のファイル共有ユーザのコメントを耳にしていないのは間違いないだろうが、彼に気付かせてやるのも悪くはないだろう。協議は9月まで開かれている。あなたの声を届けるためにはまだ時間は残されている。ただ、お願いなのだが、礼儀正しく、そして事実に基づいたものにして欲しい―たとえクリエイティブ産業が後者をできないとしてもね。

この英国での動きについては、無名の一知財政策ウォッチャーの独言さんでも紹介されていて、そちらでは提案の内容そのものを翻訳して掲載してくれているので、気になる方は是非チェックしてみて下さい。

第188回:ネット切断型のストライクポリシーを採用しようとあがくイギリス政府: 無名の一知財政策ウォッチャーの独言

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