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ソニー、電池パック回収対象は960万個、費用に510億円
~2006年度通期見通しを下方修正

10月19日 発表



 ソニーは19日、同社製リチウムイオン電池セルを使用したノートPC用の電池パックの回収対象が、約960万個に達することを明らかにした。PCメーカーに出荷したものが約800万個。残りの160万個は、ソニーがセルの形で販売して、サードパーティなどがパックとして販売しているものとした。

 また、電池パック回収などに関わる費用として、2006年度第2四半期に約510億円の引き当てを行なうことを発表した。

 510億円の費用の中には、バッテリ交換費用や運送費用、コールセンターの対応負担などのコストも含まれているが、東芝が検討している損害賠償の訴訟に関する費用などは想定していない。

ソニー執行役EVP兼CFO 大根田伸行氏

 「東芝とは具体的な話をしているわけではない。510億円は、現段階でのベストエスティメント(最適といえる見通し)といえるものであり、上ぶれあるいは下ぶれする可能性はある」(ソニー執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏)としている。

 この影響などを受けて、ソニーは、2006年度の業績見通しを下方修正することも発表した。 

 通期連結売上高の見通しには修正がないが、営業利益は、7月時点の見通しに比べて62%減(800億円減)の500億円、税引前利益は53%減(800億円減)の700億円、当期純利益は38%減(500億円減)の800億円とした。

 同社では、下方修正の要因として、リチウムイオン電池の回収問題のほかに、PLAYSTATION 3(PS3)の日本における販売価格の変更、およびプレイステーション・ポータブル(PSP)の売上高、利益が当初計画を下回る見通しであること、エレクトロニクス分野において、半導体などのPS3向けデバイスの生産調整を行なうことにより、利益の減少が見込まれることを挙げた。

 PS3の影響では、日本における販売価格の値下げの影響で約160億円、HDDを標準搭載としたことや、HDMI端子を付属したことによる仕様変更などで140億円の影響があったとしたほか、PSPでは、当初の生産計画の1,200万台を、900万台に引き下げると発表した。

 「PSPの楽しみ方をいかに増やしていくかが課題であり、ソフト、周辺機器を含めて、どうデペロップメントしていくかを検討している段階」(ソニー執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏)と語った。

 さらに、レーザーダイオードの歩留まり率の問題を背景に、欧州向けのPS3の出荷を2007年に延期したことで、半導体の生産稼働率が低下。この影響で330億円のマイナスインパクトがあるとした。「年度末までに600万台というPS3の出荷計画は変えないが、半導体は約2カ月のリードタイムがあり、600万台という計画に対して、前倒ししながら、バッファを持って生産する予定だった。このバッファの部分が落ちたと考えてほしい」(ソニー執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏)と説明した。

 一方、プラス要素としては、円安の影響で約350億円のプラス効果に加え、デジカメ、薄型TVなどのビジネスの好転で約200億円のプラスとなったことで、合計で約540億円をプラス要素とした。また、構造改革費用を500億円から400億円に修正したことで、100億円のプラス効果としている。

2006年第2四半期の連結業績 2006年度通期の見通し 下方修正後の営業利益の内訳

●バッテリ回収の詳細を説明

 会見では、リチウムイオン電池パックの回収問題に質問が集中した。

 冒頭、ソニー執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏が、「この件では、お客様をはじめ、PCメーカーをはじめとする業界関係各位に大変ご迷惑をおかけしている」とし、「デル、アップルコンピュータおよびレノボによるソニー製リチウムイオン電池セルを使用したノートブックコンピュータ用電池パックの回収、およびソニーおよびその他のPCメーカー製ノートブックコンピュータの一部に採用されている、ソニー製リチウムイオン電池セルを使用したノートブックコンピュータ用電池パックの全世界における自主交換プログラムに関わる費用として、2006年度第2四半期に約510億円の引き当てを予定している」と説明。

 「品質問題は、ソニーのビジネスにとって最重点事項であり、9月1日に安全責任の専任担当者を置き、再発防止に取り組んでいる。現在、各国政府やPCメーカーと回収に関する協議を進めており、それに関するプログラムが出来次第、詳細を発表する」とした。

ソニーコーポレイト・エグゼクティブSVP 原直史氏

 バッテリの不具合の要因に関しては、「製造工程の問題」(ソニーコーポレイト・エグゼクティブSVPの原直史氏)とし、「対象となっているバッテリは、円筒型の外側に金属を使用しており、封入の段階で金属粉が混入した。レノボ製PCのロサンゼルス空港での発火事件では、6セル中4セルが紛失しており、2セルでは原因の特定が困難あるいはできないという状況にある。セルが起因かどうかはわからないのが実際のところ。しかし、ユーザーに対して、ご不安を与えたのは事実であり、この不安を払拭、あるいは低減するという意味でPCメーカーと自主回収プログラムに踏み出した。現在、出荷しているものについては、生産プロセスを見直し、安全度を高めたものとなっている。工業製品という性格上、100%発火しないとは言い切れないが、安全度には自信がある。また、PC以外の製品向けに供給しているバッテリについては、構造が異なるため、同じように問題が起こるとは考えていないし、報告もない。なお、バッテリの交換に関しては、PCメーカーにご迷惑をおかけしないように供給したいと考えているが、スケジュールの関係上、一部、待っていただくことになるかもしれない」と説明した。

 また、「960万個のすべてのバッテリが回収されるわけではなく、PCメーカーごとに回収率に違いが出てくるだろう」(大根田氏)としたほか、「当社のVAIOシリーズに関する影響については、現時点でどの程度のインパクトがあるかはわからない」とした。

 当初200億円から300億円としていた回収に関わる費用が510億円となったことに対しては、「当初の発表では、デル、アップルの2社を対象としたものであり、レノボ製PCの発火事件によって開始した自主回収プログラムによって、対象会社が増えたのが要因」とし、「PCメーカーの費用負担がないかどうかは、今後調整を進めていくことになるが、そのほとんどをソニーが負担することになる」とした。

 情報開示や対応の遅れを指摘する声については、「デルおよびアップルへの対応では速やかに実施したと判断している。また、レノボに関しても、顧客の不安を払拭するために、早急に自主回収プログラムを実施したと考えている。ただし、米消費者製品安全委員会(CPSC)との話し合いもあり、その調整に時間がかかっているのも事実。プログラムを全世界で円滑に実行するために、現在調整を進めている」とした。

 さらに、トップの経営責任などについては、「経営トップも、この問題を真摯に受け止めている。現在は自主回収プログラムを円滑に遂行することに全力をあげて取り組んでいる。処分の検討や決定はない」(ソニーコーポレイト・エグゼクティブSVPの原直史氏)と話した。

 また、ソニーのモノづくり力が落ちているとの指摘に対しては、「レーザーダイオードの問題とバッテリの問題は、別次元の問題と認識している。レーザーダイオードは、新たな技術への挑戦であり、どうしても起こりうるもの。生みの苦しみでもある」(ソニーコーポレイト・エグゼクティブSVPの原直史氏)と語った。

 なお、同社では、リチウムイオン電池セルの問題に関して、米消費者製品安全委員会(CPSC)と回収プログラム実施に関する調整が完了次第、近日中にソニーの事業責任者出席のもとに、記者会見を開く予定であることを明らかにした。

●エレクトロニクス事業の黒字化は変更なし

 一方、エレクトロニクス事業全体の業績に関しては、「電池パックの回収および自主交換に伴う引き当ての発生や、PS3の導入スケジュールの変更などによりマイナスの影響を受けるが、エレクトロニクス事業全般では、液晶TVやデジタルカメラなどのデジタルイメージング機器がヒットするなど、業績は順調に回復している。TV事業も下期黒字化の計画には変更がない」とし、「現時点では、黒字化を確約できるものではないが、2007年度は大幅な利益改善が見込める」とした。

 なお、26日に発表が予定されている2006年度第2四半期の連結業績については、売上高は約1兆8,500億円、営業損失はマイナス210億円、税引前損失はマイナス260億円、当期純利益は約20億円になる見込みだという。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/fr/06revision_sony.pdf
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/fr/06revision_sonypre.pdf
□ソニー製リチウムイオン充電池問題 リンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/lithium.htm
□関連記事
【9月6日】SCE、欧州のPLAYSTATION 3発売を2007年3月に延期(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060906/sce.htm

(2006年10月19日)

[Reported by 大河原克行]

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