体が大きいクジラは、1日に自分の体重の3~4%の量のエサを食べます。ではクジラは、大きな体を成長させるためにどんなエサを食べているのかな?日本鯨類研究所に教えてもらったよ。
クジラは、魚、イカ、オキアミなどさまざまな種類の海の生き物を食べます。また、クジラの種類によってエサの種類も違います。
海域によってクジラのエサは違う
種類によって異なるエサを食べるクジラたちは、こんな場所でエサを確保しています。
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南極海南極の海は、とても冷たく栄養豊富なのでオキアミが大量に発生します。シロナガスクジラ、ザトウクジラ、ナガスクジラやクロミンククジラは、南極の夏にエサを食べに集まり、南極海で一番とりやすいオキアミを主なエサとしています。
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北西太平洋日本の太平洋側の海は、とても栄養豊富な海域で、たくさんの魚がいます。ミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラなどが、イワシやカタクチイワシ、イカ、サンマ、スケトウダラなどのエサを求めて、南から北へ移動します。
クジラは種類によって、エサが違うのね。
エサの量はこうして調べる
捕まえたクジラのおなかを調べると、どんな種類のエサを食べるのか、またどのくらいの量を食べるのかなどの、貴重な情報を正確に得ることができます。海の生態系やクジラの食性の研究では、①何を食べるか、②いつ食べているか、③どのくらい食べているのか、④どんなエサが好きなのかなどを調べる必要があります。
捕まえたクジラのおなかからエサを取り出します
どんな種類のエサを食べているのか、中身を確認します
取り出したエサの量を測ります
記録して研究資料にします
海の生態系を守る!
海の中に生息する生き物は、わたしたちにとってどれも貴重な資源です。海の生態系は、食物連鎖のバランスを保つことで守られます。食物連鎖の頂点にいるクジラは、季節や場所によって異なる、さまざまな海の生き物をエサにしています。そこで、わたしたちの研究所では、クジラの調査を通して海の生態系を解明し、クジラを減らすことなく利用できる状態でいることを目指しています。
1クジラの目
目玉の水晶体 から年齢 がわかる!
2耳アカ
耳アカの年輪から年齢 がわかる!
3脂皮の厚み計測
脂皮の厚み から、栄養状態 がわかる!
4体重計測
体長や体重、性別、子どもがいるか などがわかる!
5クジラの歯
歯のあるクジラは、
年輪が刻まれた歯の断面
6採血
血液に含まれる成分 から、クジラの健康状態 がわかる!
7胃の内容物を調査
胃の内容物 から、食べたエサの種類と量 がわかる!
船上にクジラを引きあげ、さまざまな調査を行います
泳いでいるクジラを見て、種類や数を調査します
クジラの調査や研究は、大小の調査船でクジラのいる海域に行って行われています。調査の方法は、双眼鏡などを使って、目で見て種類や数を調べる方法と、クジラを捕まえて体長や体重を測ったり、体の中の様子を調べたりする方法があります。
クジラを捕獲し、研究する仕事です
一般財団法人日本鯨類研究所研究者田村力さん
現在日本では、貴重な水産資源であるクジラの状態を把握するための捕獲調査を行っています。クジラを捕獲し、環境の変化にどのように対応しているかを明らかにする研究に取り組むこと、それが私たち日本鯨類研究所の仕事です。私は、クジラがどんな種類のエサを、いつ、どのくらい食べるのかについて、捕獲したクジラの胃袋の中身を調べたり、コンピューターを使ったりして調査しています。
この仕事は、人と違ったことをしてみたい、南極の大自然の中で働いてみたいと思う人にはうってつけです。ただし、体力、忍耐力が必要とされますので、小さい頃に十分に体力をつけて、何事にもへこたれないガッツを養ってください。
普通では扱えないクジラを研究する仕事です