楽しくないブログ

拡大するミドルメディアと著作権侵害

WEBサイト集客年間ランキングが発表され、NAVERまとめが19位から10位と大幅な躍進を遂げた。

WEBサイト年間集客ランキング、前年に続き1位はヤフー/NAVERまとめは10位に大躍進
http://markezine.jp/article/detail/21760

 サイト訪問者数ランキングを2013年と2014年で比較すると、「NAVERまとめ」が2013年の19位から、2014年では10位へと大きく順位を上昇させ、サイト訪問者数も前年比で109.3%と増加していた。スマートフォンの普及により、デバイスがPCからスマートフォンへ移行する中で、特に大規模サイトではPC単体でのアクセス数を伸ばすことが難しくなってきているが、そうした背景下でも「NAVERまとめ」は着実な成長を見せている。


NAVERまとめのような形式のサイトは、ミドルメディアと呼ばれる。ミドルメディアというのは「Yahoo!」等のニュース系のマスメディアと「Twitter」等のパーソナルメディアの中間に存在するメディアである。キュレーションサイトや口コミの集合体サイトがそれに該当し「2ch」もミドルメディアの一種である。言うならば、非公式な存在でありながら複数人の情報で構成されるもので、キュレーションサイトはまさにパーソナルメディアを集めて固めたようなものである。

NAVERまとめの構造として、自由にネット媒体から「引用」という形で情報をコピーすることが出来る点である。引用は法律上、何人たりともその行為を侵害されない守られた行動なのだが、当然引用要件は存在し、要件外の引用は引用と見なされず「転載」とされる。NAVERまとめはあくまでも「引用」という形でネット上の情報のコピーを促している。だが実際は引用要件は一切守られておらず、かつその引用要件から外れたまとめが「公式」にオススメまとめとしてピックアップされている現状がある。つまり、NAVERを運営するLINE社自らが引用要件をうやむやにしたまま、サイトの集客を図っているということだ。
NAVERまとめの引用の悪質性は有名な話である。実際引用でも何でもないような機能を「引用」と言い張り、利用者に使わせている。一方でSEO対策は非常に熱心で、恐らくGoogle等の検索サイトに金を払い、検索順位を上げてもらっているのだろう。場合によってはオリジナルのサイトよりも、引用後のNAVERまとめが検索上位に表示されることも珍しくは無い。Googleは特にコピーサイト対策には力を入れている、という触れ込みなのだが、どうも大手キュレーションサイトに対してはむしろ例外として優遇しているような現実が伺える。

Googleによるコピーサイトへの手動ペナルティが本格化している模様 - 楽しくないブログ
http://nvmzaq.blog.fc2.com/blog-entry-285.html

他者が作ったコンテンツを再展開し、集客する形のミドルメディアは拡大する一方である。最近伸びてきているのは、テレビCMも行っている「グノシー」や「スマートニュース」だろう。「グノシー」なんかはまさに「他者のコンテンツを再展開」しているような印象のテレビCMで「あたかもグノシーがコンテンツを作成している」かのような印象を受ける。実際情報を「まとめ」ているのはグノシーであり、そういう意味ではコンテンツを作成しているのには変わりはないのだが、やっていることはあまり正々堂々とは言えない。
一方で大体数のユーザからすれば「誰がコンテンツの発信元か」なんていうことはあまり関心が無く、面白いものが読めればいいわけである。そういう大多数の「権利無関心ユーザ」を取り込んで拡大しているのが「グノシー」であり「NAVERまとめ」なのだ。こういったコンテンツを楽しむユーザはいわゆる「2chまとめブログ」を楽しむ層と重なっている。

「グノシー」「スマートニュース」等の問題点は、単なる「アンテナサイト」のように記事を並べるだけのアプリではなく、アプリ内で配信元の記事が読めてしまう点である。当然この仕組みは著作権的にはNGで、この動きはスマートニュースが先んじて導入し、問題ではないかと話題になっている。

SmartNewsは何が問題なのか
http://lastline.hatenablog.com/entry/20121225/1356420832

各端末にインストールされたSmartNewsがどのようにキャッシュを保存しているかわからないため微妙な問題なのだが、各端末がそれぞれニュースサイトにアクセスしキャッシュを保存しているならば著作権的には問題ないはずだ。つまり、SmartNewsの運営が独自のアルゴリズムに基づきニュースを選択し、それぞれのニュースサイトから取得するべきデータの情報をプッシュ配信し、各端末がデータをダウンロードしている場合。この場合は、ユーザーが「あとで読むか」を決めていないけれども、挙動としてはインスタペーパーなどに近いだろう。
一方で、SmartNewsの運営が収集したデータをキャッシュとしてプッシュ配信している場合は著作権的に問題となる可能性が高いだろう。つまり、SmartNewsの運営が各ニュースサイトからデータを収集し、それをキャッシュとして保存し、ニュース本文だけを抜き取り、加工して各端末に配信している場合。あるいは、ニュース情報を更新する際に端末がSmartNewsの運営するサーバーにアクセスし加工されたデータをダウンロードしている可能性もある。どちらにせよ著作権的に問題であり、インスタペーパーやポケットなどと比較するのは不適切であろう。

「Smartモード」にはキャシュ取得時間が表示されるが、この時間とプッシュ配信した時間、あるいはアプリを更新し最新ニュースを取得した時間は必ずしも一致しない。そのため、恐らくSmartNewsの運営が収集したデータをキャッシュとして各端末へプッシュ配信しているか、各端末が加工されたデータを受信している可能性が高い。


現在では、配信元に広告料の一部を支払うという方法で、いわば「記事を買う」形でグノシーやスマートニュースはこの問題をクリアした。結局、著作権の侵害問題を超えられず、記事を購入することになったわけである。ミドルメディアがあくまで「口コミの集合体」「情報を集めた情報」という特性上、著作権問題は回避できない。
NAVERまとめは引用元に金銭を支払う態度は一切見せない。そもそもユーザに自由にコンテンツを作らせて、そのショバ代を広告費として頂く方式を取っている以上、全ての引用元に金を払うなんてシステムは成り立たず、破たんする。このような法の網目を抜けようとするようなサイトが日本10位のアクセスを誇っている時点で、ユーザ側にとって、権利侵害の意識は薄いことがわかる。ミドルメディアは「2ch」も含め、少なからず権利侵害を犯していることが多い。この意識が育たない限り、NAVERまとめのような権利侵害サイトが幅を利かせ続けることだろう。 このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

2015年2月9日
「BuzzNews」閉鎖 「A!@attrip」全記事削除……バイラルメディアの著作権侵害、運営元が相次ぎ謝罪
ttp://www.itmedia.co.jp/news/spv/1502/09/news066.html

  • 2015/02/11(水) 01:51:23 |
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  • 2016/05/05(木) 00:27:20 |
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著作権問題は企業名を出して運営することのリスクやな。

  • 2017/03/23(木) 14:28:01 |
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