ブラジルW杯通信BACK NUMBER
歴史的敗戦をセレソンはどう語ったか。
茫然、無言、饒舌……それぞれの傷。
posted2014/07/09 12:05
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Getty Images
薄暗いコンクリートの階段を、ミックスゾーンへむけて早足で降りた。
何かすごいものを見てしまった、誰もがそんな表情を浮かべている。あたりはどよめきに包まれていた。
1-7。ブラジル対ドイツの準決勝は、誰も予想できない結果に終った。
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ブラジルにとってみれば、決勝でウルグアイに敗れた1950年大会の“マラカナッソ”に次ぐ歴史的悲劇だ。ブラジルメディアは、大敗を速報で大々的に報じていた。
「大虐殺。ミネイラソ」(『フォーリャ・デ・サンパウロ』)
「歴史的屈辱」(『オ・グローボ』)
ミックスゾーンには人だかりができていた。
今大会一番の混みようだ。誰もが目にしたかったのだ。ブラジル人選手たちがどんな表情を浮かべ、何を口にするのかを。
後世に語り継がれるこの試合、悲劇の後のブラジル人の顔を目に焼き付け、その口から発せられる言葉をしっかりと聞いておきたかった。
なぜこんなことが。答えは簡単にはでてこない。
最初に現れたのはフンメルスだ。ブラジルメディアの前をいかにも神妙な顔つきで通り抜け、ドイツメディアの前で止まった。ボアテンクにメルテザッカーが続く。
クロースはすっきりとした表情で現れた。レアル・マドリーへの移籍もほぼ決定と言われている。この試合でもマンオブザマッチに選出された。すべてがうまく行っているときのサッカー選手に宿る、独特の充実感が漂っている。
ブラジル人はなかなか現れない。待ち続ける記者は、なぜこんなことになったのか理解できないと、様々な論を交わしていた。
プレースタイルを変えるべき。
選手をかえるべき。
いや、監督だ。
もちろん答えは簡単にはでてこない。
試合終了から1時間20分が経とうとしていた。