コプト語で「ユダ」と記された部分。
劣化でぼろぼろだった、修復前の状態。
『ユダの福音書』の冒頭の部分。
写本を調べる研究者たち。
保管が予定されているコプト博物館
紛失していて、今年2月に再び見つかったページ。
『ユダの福音書』と書かれた最終ページ。
発見場所近くの、エジプトのミニヤー県北東部にある洞窟群。
修復作業では、多数の断片を根気よくつなぎ合わせていく。
ユダの裏切りの場面を描いたフレスコ画。
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ナショナル ジオグラフィック協会の支援する専門家の国際チームが、エジプトで発見された1700年前のパピルス文書を鑑定し、その修復と翻訳を行いました。調査の結果、この文書は『ユダの福音書』の名で知られる初期キリスト教文書の、現存する唯一の写本であることが判明しました。修復された写本の一部は4月6日、米国ワシントンD.C.のナショナル
ジオグラフィック協会本部で世界に初めて公開されます。このプロジェクトはナショナル ジオグラフィック協会がウェイト歴史的発見研究所(米国・カリフォルニア州)、マエケナス古美術財団(スイス・バーゼル)とともに支援しています。
『ユダの福音書』は、イエス・キリストとユダの関係に新たな光を当てる重要な史料です。新約聖書ではユダは裏切り者として非難されていますが、新たに発見されたこの福音書には、ユダがイエスをローマの官憲に引き渡したのは、イエス自身の言いつけに従ってしたことだと書かれています。
パピルス文書は冊子状の写本(コデックス)で全体は66ページあり、26ページが『ユダの福音書』です。紀元3~4世紀にコプト語(当時のエジプトの言語)で書かれたこの写本は、ギリシャ語の原典に基づくとみられています。パピルスの断片をつなぎ合わせて文章を読み取り、英語に翻訳する作業は、コプト語の世界的権威であるスイスのロドルフ・カッセル博士の率いる専門家チームが行いました。
放射性炭素年代測定法、インクの成分分析、マルチスペクトル画像の解析、文章構造の分析、古文書学的な検証という五つの手法で鑑定を行った結果、この写本は後世の偽書ではなく、古代に記された本物の聖書外典であることが確認されました。
支援プログラムを担当するナショナル ジオグラフィック協会のテリー・ガルシア副理事長は「この文書はキリスト教黎明期の歴史と宗教思想を伝える重要な手がかりであり、歴史家や神学者をはじめとする専門家が今後も引き続き研究していくべき、第一級の史料です」と話しています。
日本では、この『ユダの福音書』の情報を次のような形でお伝えします。
■プロジェクトに関わったマービン・マイヤー氏の来日決定!
写真=Kenneth Garrett (c)2006 National Geographic Society(上から2番目をのぞく)
上から2番目の写真=Florence Darbre
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