第1回 津波研究者が見た“悪夢”
2011年の3月11日、ぼくは取材でカンボジアに滞在していた。
大地震の発生から2時間ほどたった頃に、宿泊先のホテルに戻ってきてインターネットで知った。部屋で視聴できるCNNなどの海外メディアも、すぐに震災一色になったので、とにかく日本で「とんでもないことが起こっている」と把握できた。最短で帰国できる飛行機で東京の自宅に戻ることに決めた。
その時点で報道されていたものの中で、最も衝撃を受けたのが、東北地方太平洋岸の津波の映像だった。巨大な水の壁というか、岸の見えない巨大な大河が逆流してくるかのような現象が、あちこちの都市を破壊していくのは、ただただ恐ろしかった。その時、報道されたのは、たまたま被害の現場に居合わせた人が撮影したビデオだったり、公的機関の公開映像だったりしたわけだが、今では観測データをもとにコンピュータシミュレーションで再現したCGで、マクロな視点から確認出来る。
海底の断層がずれた長大な海域で大きく水が持ち上がり、単なる波というより、巨大な水塊として、沿岸を襲った。それも、第2波、第3波と、延々と繰り返されて、特に仙台湾のような浅い海では、押し寄せた水塊が高い水の壁となって陸地になだれ込んだ。あくまで俯瞰的に「起こったこと」を再現したCGを観るだけでも、充分すぎるくらい生々しく、心が痛く、胸が苦しい。
2012年2月号特集「津波 そのメカニズムと脅威」
本誌でも世界の津波の記事を掲載しています。フォトギャラリーもあるWebでの記事の紹介はこちら。ぜひあわせてご覧ください。