80位 ザ・ベータ・バンド “Dry The Rain”


ザ・ベータ・バンドの独特の特徴は、時代を変えるような存在であったにもかかわらず、あまり彼らが苦労しているように聴こえないことだ。ストーナー・フォークとローファイなヒップホップを混ぜ合わせた彼らの摩訶不思議な楽曲は、ベックやフォーク・インプロージョンと同列に扱われるかもしれないが、優しくて威厳のあるこの“Dry The Rain”で、スコット・スティーヴン・メイソンが音のるつぼに厳しい衝撃を加えていることが、彼らの独自性と言えるだろう。

79位 ディー・ライト “Groove Is In The Heart”


ブーツィー・コリンズ、Qティップ、ハービー・ハンコックのサンプリングで構成されたメインリフという夢のコラボレーションチームによって彩られたディー・ライトの唯一の大ヒット曲“Groove Is In The Heart”は、Gファンク、デイジー・エイジのヒップホップ、サルサ、ディスコといった音楽の完璧なコラージュとなっている。UKチャートではニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの“Tonight”からスナップ!の“Cult Of Snap!”まで、シンセ音のダンスミュージックばかりだった中で、この曲のファンクさはかなり異質だった。しかし、それゆえに鮮明な印象がいまだに残っているのだ。

78位 ザ・KLF “What Time Is Love?”


3つのヴァージョンでリリースされたこの曲だが、耳について離れない、繰り返されるトランスからインダストリアルなゴス/ゴスペルへの展開がたまらなく、ダンスミュージックが1980年代後半から1990年代前半の全盛期に発展させたスピードに対する返答ともなっている。そして、いつも通り、ザ・KLFのリーダーであるビル・ドラモンドはその大言壮語な発言において、この曲についても「ありふれている」と評してみせるのだった。

77位 エール “Sexy Boy”


ジャン=ブノワ・ダンケルとニコラ・ゴダンのユニット、エールの『ムーン・サファリ』は、エレクトロニックの転機となったアルバムだ。イージーリスニングの要素とセルジュ・ゲンスブール的なメロディアスさに、実験的なエレクトロニカの雰囲気を融合されている。“Sexy Boy”では、それらすべてが完璧に統合されている。コーラスの歌詞が繰り返されるサビでは、ファッション業界の退屈さについて訳知り顔でコメントしているようだ。

76位 プライマル・スクリーム “Come Together”


この楽曲が『スクリーマデリカ』のファースト・トラックとしてレコーディングされ、アルバムのテンプレートとして設定されたことは、重大な意味を持っていた。プロデューサーのアンドリュー・ウェザオールの手がけた、優しく溶け込むようなバックコーラス、ハウス的なピアノ・リフ、映画『パリ、テキサス』や、ジェシー・ジャクソンの曲(リミックス版)からのサンプリングなどを特徴としており、プライマル・スクリームが新たなダンス/インディのジャンルを先導して、新しい10年の波の頂点に立ったことを示していた。

75位 ホール “Celebrity Skin”


コートニー・ラヴ、そして当時の恋人だったビリー・コーガンは、ホールの活動を真っ当に再開させ、重厚な高揚感のあるモンスター・リフを持つ“Celebrity Skin”を発表した。しかし、ホールが男性に賞賛を与えてしまっていれば、バンドはダメになっていただろうし、賞賛されるべきはコートニー・ラヴのハスキーな声と、「欲しいと思っているものには気をつけなさい(You’d better watch out for what you wish for)」と言ってのける、舞台をかっさらう挑戦的で尊大な自信だろう。

74位 ニュー・オーダー “Regret”


おそらくこれが彼らの最後の名曲だろう。ファクトリー・レコードの倒産に伴い、“Regret”はニュー・オーダーの生き残りをかけて、ロンドン・レコードからリリースされている。しかし、彼らは何度もインディ・ダンスポップの境界を広げてきた。“Regret”は、新しいレーベルに対するバーナード・サムナーによるリサーチであり、それはまったく問題のないことを示していた。

73位 シネイド・オコナー “Nothing Compares 2 U”


この曲は、プリンスが自身のバンド、ザ・ファミリーの1985年のアルバム『ザ・ファミリー』のために制作したもので、プリンスが自身の秘書の父親の死に心を打たれて作られた曲だと言われている。シネイド・オコナーのヴァージョンでは、彼女は亡くなった母親との嵐のような関係に置き換えて歌っており、「ママ、あなたが裏庭に植えた植物はすべて/あなたが逝った時にすべて枯れたの(All the flowers that you planted, mama/ In the backyard/ All died when you went away)」と声を響かせながら、ミュージックビデオで涙を流している。

72位 コーナーショップ “Brimful of Asha (Fatboy Slim Remix)”


これはティジンダー・シンが、インド映画女優のアシャ・ボスルのスクリーンで見せるまばゆい魅力について歌った曲だ。当初は完全に陽気なインディ・ポップの1曲だったのだが、1990年代後半にノーマン・クックがリミックスを手掛け、ペンキを塗り替えて、疾走感を与え、強力なビートをちりばめたことで、たちまちヒットチャートを駆け上がることになった。

71位 ウータン・クラン “Protect Ya Neck”


デビュー・シングルであり、ドぎつい「意志の表明」としても期待されていたこの曲は、ウータン・クランの「ハードコア」なラップを世に送り出すきっかけとなった。N.W.A.やパブリック・エナミーのようなメッセージ性はいくばくか残っているものの、それでも他を寄せつけない名声への意志は本物だ。RZAのビートはもちろんのこと、メソッド・マン、ゴーストフェイス・キラー、オール・ダーティ・バスタード、GZAの耳に残るヴァースがこの曲を完璧に仕上げている。

70位 レディオヘッド “Creep”


トム・ヨークがエクセター大学在学中に、アコースティック・ギターをかき鳴らして“Creep”を書いたという事実は、完璧なストーリーのように思える。トム・ヨークが、「so fucking special」なクールな大学の人々を見つめて、恋しく思いながらも、一方でめちゃくちゃにしたい欲求を抱いているのが目に浮かぶ。“Creep”は同じくアウトサイダーだったカート・コバーンを連想させ、そしてジョニー・グリーンウッドは唸るようにエレキ・ギターを掻き鳴らしている。

69位 ビョーク “Hyperballad”


ビョークの1990年代最大のヒット作『ポスト』の中で、“It’s Oh So Quiet”に感情面で対となるのが“Hyperballad”である。“Hyperballad”は真剣に昔の愛をもう一度復活させようという試みだ。この曲はその恋愛関係において「自らのことを忘れないように」するための方法をテーマにしており、それが優しいフォークトニカから、ドラムとベースで彩られたアシッド・ハウスに変化した音楽に反映されているとビョークは述べている。

68位 ケミカル・ブラザーズ “Hey Boy Hey Girl”


ビッグ・ビートとサイケデリカのループが特徴の1997年のアルバム『ディグ・ユア・オウン・ホール』はもはや過去のものとなり、ケミカル・ブラザーズは“Hey Boy Hey Girl”と共に戻ってきた、。彼らはボタンを押してハウスを鳴らし、弾むビートの嵐を掻き立て、本当の広がりを築くために音を鳴らし続けている。念のために言っておくと、ヴォーカルのサビ部分は1984年のヒット曲、ロック・マスター・スコット&ザ・ダイナミック・スリーの“The Roof Is On Fire”をサンプリングしている。

67位 トリッキー “Hell Is round The Corner”


アイザック・ヘイズの“Ike’s Rap II”は、1990年代半ばのトリップ・ホップに多用されていて、この曲の他にポーティスヘッドの“Glory Box”にもサンプリングされている。トリッキーは刺激を求め、この曲だけではなく、同じく1994年リリースのマッシヴ・アタック“Eurochild”からもラップを再利用している。でも、マルティナ・トップレイ・バードの魔法のようなヴォーカルがこれらすべての要素との化学反応を起こすと、オリジナルの曲のように聴こえてくる上に、トリッキー独特の酔った悪夢のようなスタイルを形作っている。

66位 ブランディ&モニカ “The Boy Is Mine”


この曲にはマイケル・ジャクソンポール・マッカートニーが1982年にリリースした“The Girl Is Mine”のような親しみやすさはなく、R&Bのディーヴァ2人をフィーチャーして、「ごめんなさいね、あなたを困惑させちゃったみたい(I’m sorry that you seem to be confused)」と、遠回しな攻撃の掛け合いが続いていくのが素晴らしい。ロドニー・ジャーキンスとダラス・オースティンがプロデューサーを務め、ブランディとモニカ双方にとってキャリア最大級のヒット曲となった。ちなみに2015年にはベン・ディレイのリミックスによる再ブレイクを目論んでいたが、失敗に終わっている。

65位 U2 “One”


バンドの新たな境地を開いた1991年リリースのアルバム『アクトン・ベイビー』の中で、人々の記憶に刻まれた唯一の楽曲は、大胆不敵な“Mysterious Ways”や、淫らな“Even Better Than The Real Thing”ではなく、このバラッドの名曲“One”だろう。ボノによると、この楽曲の歌詞はどこからともなく浮かんできたもので、ジ・エッジのコード進行はジャム・セッションで生まれたものだという。あまりにシンプルなため、ブライアン・イーノは明らかに嫌いそうだが、彼以外の皆にとっては大事なアンセムだ。

64位 ミッシー・エリオット “The Rain (Supa Dupa Fly)”


この驚くべきデビュー・シングルで、プロデューサーのティンバランドはミッシー・エリオットというモンスターを世に放ち、5年分のキャリアと同等の価値があると予言して、魅惑的なライムを探し求める冒険を始めた。この曲はアン・ピーブルスの“I Can’t Stand The Rain”をサンプリングしているが、豊満なベースラインはすべてティンバランドによるもので、妖艶でスローな歌い方もミッシー・エリオット独自のものだ。彼女はこの曲でUKチャートのトップ20に入り、瞬く間にスターとなった。

63位 スピリチュアライズド “Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space”


ジェイソン・ピアースは当初、このスピリチュアライズドの代表曲にエルヴィス・プレスリーの“Can’t Help Falling In Love”を取り入れたかったのだが、彼の遺産管理人から断られている。だが、それは何とか10年後に実現することになった。オリジナルのアルバム収録ヴァージョンの、“Ladies And Gentlemen We Are Floating In Space”の揺らぐような没入感のあるイントロは、この楽曲がいつ何時も、心の琴線に触れる名曲であり続けている由縁である。

62位 パール・ジャム “Alive”


ニルヴァーナの影響は、彼らを模倣する多くのバンドだけではなく、自分たちの表現方法でブレイクできるほど幸運ではなかったバンドにも及んだ。ニルヴァーナの人気に誘発されて、エディ・ヴェダー率いるパール・ジャムがリリースしたファースト・シングル“Alive”もヒットの恩恵を受けている。エディ・ヴェダーのぞっとするような声や、マイク・マクレディの驚くべきギター・プレイによって、この曲には強大なパワーが込められている。そして、近親相姦についての歌詞や、自分が親だと思っていた人が違ったという一節には衝撃を禁じ得ない。

61位 レモンヘッズ “It’s A Shame about Ray”


イヴァン・ダンドは、スターになるまでの長い下積み時代を経て、グランジやジェネレーションXが台頭する頃、ゆるくレイドバックした流行の波に乗った5枚目のアルバムで、ようやく日の目を浴びることとなる。アルバムのタイトル・トラックにもなった“It’s A Shame About Ray”は、新聞の見出しや皆にレイと呼ばれていたバーの店主についての曖昧にまぜこぜになった話にインスパイアされたものであるが、メロディはキラキラと透き通っていて、とても愛らしい曲だ。

広告 ザ・ビートルズの新作ドキュメンタリー『ビートルズ ’64』がディズニープラスで11月29日(金)より独占配信!

Copyright © 2024 NME Networks Media Limited. NME is a registered trademark of NME Networks Media Limited being used under licence.

関連タグ