入りきらなければ移動式書架を導入すればいいじゃない 本好きの夢が詰まった同人誌『せっかくだから俺はこの動く本棚を選ぶぜ』:司書メイドの同人誌レビューノート
スライドするぞ、気を付けろ!
本好きの方、本棚ってどうされていますか? 私設図書館でも、訪れた方にそれとなくお聞きしてみることがあるのですが、割とよく「諦めてます」「本って、自然に増えますよね」とおっしゃる方がいます。自然に増えるとおもってしまうほど、本ってどんどん増えるものですよね……。だって、世の中は面白そうなご本であふれているのですものー! 放っておくだけでは増殖の一途をたどる本たち。でも諦めないで、と言いたくなる同人誌が発行されました。
今回紹介する同人誌
『せっかくだから俺はこの動く本棚を選ぶぜ』
B5 52ページ 表紙カラー・本文モノクロ
作者:suzuko
蔵書に悩む本好きに、一筋の光明! 自宅に移動式書架を設置する
収納を諦めない方法……ずばり、専用本棚を作ってしまう! という道を選んだ、とある同人誌好きご夫婦の一つの答えが同人誌になりました。新築の住宅に専用書庫を作ってしまう、しかもより効率的に収納するために、移動式の書架を設置することを選ばれた書庫作りのノンフィクションです。
移動式の書架とは、床にレールがついており、本を取るときだけ必要な場所の本棚を動かして、スペースを作る本棚です。これによって、収蔵できる資料の数もぐっと増えます。しかし、横にちょっとスライドしてくれるタイプの本棚をお部屋に置いてあるのは見たことがありますが、書架そのものが移動できるタイプ、しかも一部屋まるまる書庫だなんて、夢のよう! これって図書館のお話ではなく、個人の住宅という点で目が真ん丸になってしまいますっ。
個人宅でめったに無い思い付きを実現するために、まずは情報収集から。でも個人宅に移動書架を設置したらいくらかかるか、本棚そのものの価格は分かっても、トータルの値段なんて本棚メーカーさんのカタログには載っていません。そうですよね、あったらいいなーと思っても、「よし設置しよう」までには遠い隔たりがあるのです。
総距離180メートル分、本が置けるよ! そのお値段は……
なぜ移動式の書架を導入しようと思ったのか。そんなことは可能なのか? 設置する価格は? 施工はどうする? と、次々湧いてくる疑問。どう解決して設置が実現したのか、こちらのご本では順序を追って経過を記してあり、要所要所で写真が掲載されているのも理解を助けます。
本棚を選ぶにあたっていくつかの候補があった中から絞った決め手は、主な所蔵資料となる同人誌のサイズB5の本が収めやすいことと、個人住宅への導入実績を知ったからだとか。ああ、とにもかくにも、先人というのは偉大なのです。
設置するには本棚だけでなく、家を建てる方とも連携が必要です。家の土台を作る段階から、たくさんの本を収める書架を置くために、「移動式書架のレールが乗る部分は特にしっかりと」という状況に。「そうそう本って重いですよね!」と同意しながら、周到に進んでいくさまを憧れの目で見守ってしまいます。
そして出来上がったのは本棚8棚も設置された専用書架。本が置ける棚の長さを算出すると、その距離180メートル分。180メートル! かかった費用は約237万円とのことです。思い切った額ですが、夢と憧れのまなざしです……!
完成するも、これはまだ序章にすぎない……愛しい書物を保っていくためにできること
本が部屋に生えるとタイプの方は、うすうすお察しのことでしょう……やがてこの書庫もいっばいになる未来が来てしまうことを。そもそも作者さんは、現段階で書庫に入りきらない資料をお持ちなのです。移動書架の他にどんな本棚が効率がよさそうかという視点も、ご本に記されています。もちろん日々の書庫の利用しやすさを考慮した、照明や冷暖房、湿気のことなど保存についても言及され、気になる税金についてまでも。
さらに、本を運ぶときに適したダンボールの大きさについて、引っ越し会社さんのダンボールの大きさを調べて本の詰め込みパターンを算出してみたり、実物の保管だけでなくいずれは蔵書の情報をデータベース化することで、所蔵資料を検索しやすくすることまで言及されています。さらにそのための情報はすでにある専門図書館を参考にして、もしものときは寄贈を検討したいことまで……未来を見ていらっしゃる!
いつかやりたいこと、を本当にかなえ、それだけでなく、こうして書き残してくださったことで、大いなる前例があることを知らしめてくれるという点からも、すばらしいご本だと思います。同人誌が好きなものとして、夢を現実にする場面をありありと見せてくださったことに、ありがとうございますという気持ちでいっぱいです。自宅に移動式書架の導入を考えている方には必携の資料です!
今週のシャッツキステ
著者紹介
関連記事
- ガーターベルトに仕込みメガネ メガネフリークしか出てこない1ページまんが「めがねのね〜眼鏡の音〜」が狂気の沙汰
「委員長の眼鏡ふきを煎じて飲んで、心を落ち着かせよう」 - 税率で変わる2人の関係 お金“異形頭”マンガ「おかねちゃん!」は恋するコインの物語
手袋はめてるのもポイント高いです。 - こんなの待ってた! アメコミの効果音を集めた辞書がマニアックすぎて心くすぐる
今週はサークル「FANDOMAIN」さんの同人誌「アメリカンコミックス効果音辞典 スーパーヒーロー誕生から70年代まで」をご紹介。 - マンボウ最弱伝説はウソ? 「着水の衝撃で死ぬ」「朝日が強すぎて死ぬ」などの真偽を研究者が判定
今回はマンボウ研究家が調査結果などをまとめた「マンボウの都市伝説-噂の根源と真偽- ver.3」をご紹介。 - 黒電話っぽいけどダイヤルがない……? レトロかわいい「磁石式電話機」にファンタジー脳が刺激される
こんな面白い電話機があったとは。 - 音が出るものから計算できないものまで!? 作者の“変な電卓”愛が爆発した同人誌に電卓の可能性を感じる
変な電卓が114種類を掲載した「変な電卓2017」を紹介します。 - “もしも埼玉にプロサッカークラブがなかったら” 架空の“埼玉”が舞台のちょっぴり変わったサッカーマンガ
同人誌『かつてこの地に栄えたというでんせつの』をご紹介。 - 「人工培養肉」を作って食べてみた 理系大学院生が体を張った同人誌にドキドキが止まらない
味付けはクレイジーソルトがおすすめだそうです。 - 「取ってしまえばどうということはない」 魚屋さんがまとめた寄生虫データが食卓に安心を届けてくれそう
「魚屋が出会う身近な魚の寄生虫」をご紹介。フルカラーで寄生虫の画像が載っているので、苦手な人は注意。 - 「えっ、名前って誰でも変えられるの?」 改名を経験した著者による同人誌が読み物としても傑作だった
現在、Amazonプライム会員向けに無料配信中。 - 「る」で終わるは序の口? 「しりとりが絶対に強くなる10の方法」でワンランク上の戦いを
今週はサークル「弐人国家」さんの同人誌「しりとりが絶対に強くなる10の方法」をご紹介。 - ポスドクたちのリアルな声に共感 研究者を応援する同人誌「月刊ポスドク」
付録の「進捗ラムネ」が気になる。 - 萌えと宇宙は無限大? 女子高生×人工衛星の組み合わせにロマンを感じる「衛星研究部」
作者は、実在の人工衛星をかわいく擬人化させた「現代萌衛星図鑑」の二人。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
-
ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
-
真田広之の俳優息子、母・手塚理美と“超大物司会者”に対面 豪華ショットに「ご立派な息子さん」「似てる雰囲気」【注目の“二世タレント”】
-
賞味期限「2年前」のゼリーを販売か…… 人気スーパーが謝罪「深くお詫び」 回収に協力呼びかけ
-
ディズニーランド、新イベント前に「強制退園」対応が話題 「これくらい厳しい方がいい」などさまざまな意見
-
母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
-
「幸子のコートばかり着ています」 音無美紀子、“大好きな妹”の一周忌に故人の孫と参列 受験前の成長した姿に「賢い子ばかり」「何より嬉しいでしょう」
-
道に落ちていそうな黒い石ころ→磨いたら…… まさかの“正体”が158万再生「超すごい」「砂利に似ているのに」【海外】
-
浜崎あゆみ、子ども引き連れた韓国旅行が“最っ幸”でしかない 豪華ホテルの“すごい広い”テラスでママの顔「鬼ごっこ出来て良かった」
-
「酷すぎる」「不快」 SMAPを連想させるジャンバリ.TVのCMに賛否両論
- 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
- 「大根は全部冷凍してください」 “多くの人が知らない”画期的な保存方法に「これから躊躇なく買えます」「これで腐らせずに済む」
- 浜崎あゆみ、息子2人チラリの朝食風景を公開 食卓に並ぶ“国民的キャラクター”のメニューが意外
- 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
- 中2長女“書店で好きなだけ本を買う権”を行使した結果…… “驚愕のレシート”が1300万表示「大物になるぞ!!」「これやってみよう」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”の家族に反響 ジュノンボーイの幼少期が香取慎吾似?【コンテスト特集2024】
- 大好きなお母さんが他界し、実家でひとり暮らしする猫 その日常に「涙が溢れてくる……」「温かい気持ちになりました」
- 「やばすぎ」 ブックオフに10万円で売られていた“衝撃の商品”に仰天 「これもう文化財」「お宝すぎる」 投稿者に発見時の気持ちを聞いた
- 「こんなおばあちゃんになりたい」 1人暮らしの93歳が作る“かんたん夕食”がすごい! 「憧れます」「見習わないといけませんね」
- 【今日の難読漢字】「碑」←何と読む?
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」