「アニメ不毛の地」の現実 なぜ静岡は「キテレツ」「ONE PIECE」を延々再放送するのか? 編成担当者が語った理由とは:編集部通信
ちゃんと理由があったのでした。
アニメ不毛の地・静岡でまた新たな伝説が生まれてしまったようです。テレビ静岡は2月14日で、これまで平日夕方に放送していた「ONE PIECE」の再放送をいったん終了、後番組として2月17日から「ONE PIECE」の再放送をスタートしました。な、何を言ってるかわからねーと思うが……(略)。
よく分からなかった人のためにもう一度説明しますが、つまり「ONE PIECEが終わったと思ったらまた1話からはじまった」ということです(そのままだった)。「階段を下りたと思ったら登っていた」並に意味不明ですが、残念ながらこれが静岡の現実……! テレビ静岡のサイトによると、放送終了は「放送権利の都合で」とのことですが、なぜそれをまた最初から放送する! ネットでは「なにそのループww」「第2のキテレツか」などのツッコミが相次ぎました。
ちなみに再放送終了時点で第578話(魚人島編のラスト)まで進んでおり、また1話から放送しなおしたとしたらほぼまる2年は続けられる計算です。なおテレビ静岡では日曜午前にも「ONE PIECE」を放送していますが、こちらは最新話をリアルタイムで放送中。今回新ループに突入したのは、平日夕方の「再放送枠」の方となっています。
なぜまた1話から? 編成担当に聞いてみた
もともと静岡はテレビ東京系列がなく、深夜アニメがほとんど放送されないことから、ネットでは「アニメ不毛の地」と呼ばれていました。また同じアニメをやたら繰り返し放送することでも有名で、「静岡=アニメはキテレツ大百科のみ」「静岡県民はキテレツに洗脳されている」などとネタにされることもしばしば……。
それにしても、なぜ静岡では同じアニメばかり延々放送するのか? 筆者も静岡出身なのでよく分かりますが、確かに静岡の「キテレツ」放送率は異常(今はもう終わっちゃったけど)。別のアニメを挟むという選択肢はなかったのか? いろいろ気になったので、テレビ静岡の編成担当者に聞いてみました。
「もともとあそこ(平日夕方)は『夕方のアニメ再放送枠』として昔から続いている枠だったんです。ただ最近はアニメも厳しくなってきていて、あの時間帯のアニメもなかなか視聴率が取れなくなってきた。そうした状況の中で、みなさんに支持されているもの、楽しんでいただけるものをと考えた結果、やっぱり『ONE PIECE』ということになったんです」(テレビ静岡 編成担当者)
結局のところは「視聴者のニーズに合わせた結果」ということらしい。最近では再放送の効果もあって「平日夕方はONE PIECE」という習慣が子どもたちの間でも定着してきているそう。もちろん別のアニメを望む声があるのも理解はしているものの、「それ以上にONE PIECEのニーズが大きい」というのが最大の理由のようです。
また、静岡が「アニメ不毛の地」と呼ばれていることについては「知っています(笑)」と担当者。キテレツ大百科についても聞くと「あの頃とは担当が変わってしまっているため推測ですが、視聴者のニーズを第一に考える、というのは昔から変わっていないはずです。キテレツ大百科が多く放送されていたのも、それだけ反応が良かったからなのでしょう」とのことでした。キテレツ、そんなにニーズあったのか……。
アニメはアイデンティティ アニメ枠を守りたいからこそ
話を聞いていて印象に残ったのは、「(テレビ静岡としては)決してアニメをおろそかにしているわけではありません」という言葉でした。
もともと静岡はテレビ東京やTOKYO MXといったアニメに強い系列局がなく、アニメ文化が根付きにくい。加えて昨今ではますますアニメが厳しくなってきており、昔は1時間だった「夕方枠」も、今では30分に縮小されてしまいました。そんな中でも、子どもたちに親しまれている「夕方枠」を続けていくには、視聴者のニーズに合わせ、結果を出していくしかない。「ONE PIECE」再放送は、夕方枠を守るための精いっぱいの努力でもあったのでした。
もちろん「ノイタミナ」などフジテレビ系列のアニメは基本すべて放送する方針。また「カードファイト ヴァンガード」や「たまごっち」「ダンボール戦機」など他系列のアニメでも、子どもたちに人気のあるものはなるべく放送権利を買い取り放送するようにしているそうです。「むしろアニメは(テレビ静岡の)アイデンティティだと思っています」と担当者。
「アニメ不毛の地」とネットでは揶揄(やゆ)されがちな静岡県ですが、その裏には編成担当の人知れぬ苦労とこだわりがあったのでした。
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