パープルフリンジの原因は何?
・パープルフリンジの原因は何?
最近はふざけた内容の記事ばかりだったので
もっと身のあるまじめなのも書こうと思います。
大学生のレポートでぱくられる程度の内容には。
今回はパープルフリンジについてです。
パープルフリンジとは、デジタルカメラで写真を撮っていると
強い光源の周りに紫色のオーラのようなものがまとわりつく現象です。
下が典型的なパープルフリンジの例です。
木の枝の色づき
このパープルフリンジですが、原因がネット上ではいろいろ言われています。
・センサの光漏れ(光が強すぎて隣の画素に漏れてしまう)
・レンズの収差
・画像処理の結果
だいたいこの三つなのですが、
パープルフリンジの主原因は「レンズの軸上色収差」です。
センサ起因のこともありますが、レンズ要因に比べると非常に微々たるものです。
じゃあ、なぜセンサ起因だという話が出るのかというと
フィルムからデジタルになってパープルフリンジが特に目立つようになったからです。
フィルムの場合は
感光材に厚みがあること、
CCDのように完全な平面でないこと、
デジタルのように等倍拡大で見ることがめったにないこと
が重なって発生していても目立ちませんでした。
レンズ起因とするとどういう原理で発生するのでしょうか。
レンズにはザイデルの五収差といわれる収差があります。
たいてい最初に紹介されるのが球面収差です。
中学の理科で習いますが、レンズを通った光は一点に集まります。
ところが次の図のように、実際は一点に光が集まりません。
レンズの端(瞳像高の高い位置)から入ってきた光と中心付近から入ってきた光が異なる点に像を結ぶのです。
これは非球面レンズを使用することで改善が可能です。
また、次の図のように絞りを入れて
像高の高い位置の光線をなくすことによって球面収差を改善することができます。
二段絞ると画質が良くなる、と言われる要因の一つです。
で、パープルフリンジといわれるくらいだから紫の色がつくわけです。
実際は青だったり緑だったり黄色だったりすることもあります。
なので、これからは「フリンジ」とよびます。
光の波長による屈折率の違いからプリズムを通過した光は虹色になります。
レンズも光を屈折させているので
光の波長による屈折率の違いが影響してきます。
この図のように、
代表的なR,G,Bの各色でも結像面が異なります。
そのため、像面の位置によって色づきが起こるのです。
これが軸上色収差です。
上側はパープルのフリンジが出る場合。
下側はグリーンのフリンジが出る場合です。
色による屈折率の違いと、前述の球面収差の合わせ技で
フリンジが発生します。
このようにレンズ起因でフリンジが発生しますが
巷で言われているように
センサの分光特性(どの色の光に強く反応するか)や
画像処理(どの色を強調するか)も合わさった結果で
諸説言われるようになったんだと思います。
当然、レンズ起因の現象なのでファームアップで
消すことはできません。
補正はやろうと思えばできます。
軸上色収差がフリンジの原因と上記では書きましたが、
球面収差によるものも大きいです。
レンズの球面収差図があればある程度のフリンジの予想ができます。
下の図は球面収差図の一例です。
この図は縦収差図といいますが、横収差図なるものも存在します。
縦軸は瞳像高、横軸は光線が光軸と交わる位置を表します。
たいてい、光の三原色の赤、緑、青の三色が描かれることが多いです。
ちなみにこの図で像高0の位置でもRGBそれぞれの結像位置がずれています。
これこそが軸上色収差です。
下の図は収差図の縦軸と横軸の関係が分かりやすいように
単色光線を描いたものです。
この図をみると、今回の項目の冒頭の
球面収差によって光線が一点に収束しないことが分かります。
…わけがわからないよ。
レンズの下側も光線もかきました。、
図のグレーの位置に投影されるであろう像が右の円。
カラフル!
パープルの中に黄緑が!
こんな収差ありうるの!?
でた!
あるレンズで撮影したらでました。
分かりやすいように彩度上げています。
収差図は何かのレンズを参考にしたわけでなく、
てきとうに描いたのですが…。
この図において、一番ピントが合うところ
(光線が一番集まっている所)の像がどうなっているかというと
下の図のようになります。
これぞまさしくパープルフリンジですね。
このようにフリンジは軸上色収差と球面収差の合わせ技で発生します。
一般に言われる絞ると改善するというのも説明がつきます。
瞳像高の高い光線がシャットアウトされるのでフリンジが減る。
ちなみにこの図から分かりますが、
絞るとジャスピン位置が微妙にずれます。
星の撮影とか、ほんとにピントにシビアな撮影をする時は
絞りによってピントを変えなければなりません。
こんなかんじでフリンジが出ます。
でも実際は、
そのほかの収差(コマ収差など)に起因することもあるので
球面収差図だけではフリンジと完全な相関は取れないです。
第二回はこちら
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