上司からの評価が良くないのに出世する人の特徴5つ

上司からの評価は決して低くないし、昇給だって賞与だって多い方だ。 なのに、なぜだかなかなか昇格できない。その逆に、なんだかあまりぱっとしなかった奴がいきなり抜擢された。おまけにまわりの予想に反して意外にちゃんと活躍できている。ビジネスシーンにおいて、決して珍しくないシチュエーションだ。

私たちは評価の中で、数値目標を立てさせられたり、あるいは決まった数値目標を与えられたりする。それらは私たちの「できる」度合を測るKPI(Key Performance Indicator)だ。営業だったら売上額、事務だったら効率性などが代表的なKPIじゃないだろうか。

私たちの日々の目標になっているそれらのKPI、そしてその達成度を測った結果としての「評価」はもちろん私たちの出世にも関係しているだろう。じゃあ実際のところどれくらい関係しているのか、ビジネスパーソンなら誰もが気になるところ。

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そんな疑問に答えてくれる著書に「出世する人は人事評価を気にしない」(日経プレミアシリーズ)がある。

大失敗してしまった人や敵をつくってしまっている人が時に一番に出世する。その理由について、著者である人事コンサルタントの平康慶浩氏は、「競争ルール」が2回変化するからだ、と教えてくれた。

一般社員や係長であるときと、課長などの管理職になるとき、そしてそこからさらに上の経営層になるときにルールが変わるということだ。なぜそんなことが起きるのか、平康氏にお話を伺ってみた。

卒業基準と入学基準:人事制度には2つの昇格基準がある

人事制度には2つの昇格基準があります。

そのうちのひとつが一般社員層の評価基準である「卒業基準」です。平社員から主任、主任から係長に昇進するときなどに用いれられ、主に業務の正確性やスピードなど、現在担当している仕事がそれくらいできているのかを測るものです。
一方、管理職になるときには、「入学基準」と呼ばれる別の昇格基準が用いられます。

「卒業基準」とは文字通り、今、良い成績をとっているから次のステップに進ませてあげましょう、というもの。たとえば小学校のカリキュラムを終えたら中学校へ、中学校のカリキュラムを終えたら高校へと進むのと同じ理屈ですね。
しかし「管理職」はできるかどうかわからない人を進ませるわけにはいかない。なので、高校から大学への入学試験のようなもので、大学生としてふさわしい学力があるかどうかを大学入試で判断されるように、管理職としてふさわしい仕事ができるかどうかが昇格の基準になるのです。

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なぜ失敗した人や敵をつくりやすい人が出世するのか

なぜ忠実にキャリアを積んできた人より、大失敗をした人や、お調子者といわれている人、敵をつくりやすい人が先に出世するケースがあるのでしょう。

それは、管理職の仕事と、それまでの一般社員の仕事がまったく異なるものだからです。

わかりやすい例で言えば、「言われたことを完璧にこなせる人」は一般社員として高い評価を得ることができます。でも「何をどう指示すれば人が動くのか」をわかっていなければ、管理職にはなれません。大失敗した人や敵をつくった人は、本質を見極めて、あえて上司に従わなかった可能性もある。課長はその部下をうとましくおもっていても、部長や役員達は、「有望なやつだ」と認めていたりするわけです。

大企業では、そのような入学基準についてもコンピテンシー評価と言う手法を用いて、昇格にふさわしい候補者を人事部がまとめている場合があります。課長が「こいつはせいぜいB評価」としていても、人事部が「彼は課長にすると活躍する可能性があります。なぜなら『課長としての入学基準』に照らし合わせるとA評価になるからです」とする場合もあるわけです。
そうなると仮に、それまでの働きぶりが悪くて評価が今ひとつでも、役員たちが候補者を気に入れば「次の部長にしよう」と昇格させるケースがあるのです。

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評価されずに出世する人の特徴

では、「卒業基準」では今ひとつなのに、「入学基準」で管理職へと抜擢されやすい人の特徴にはどのようなものがあるのだろう。平康氏は5つの特徴を示してくれた。

1.論理思考がある

「AだからBになってCになる。CになるためにはBを経てAから始めなければならない」といった論理思考は、管理職になる際は最低限なくてはならない能力のひとつです。「なぜ?」「どうして?」といった疑問を抱くトレーニングを繰り返すことで、論理思考は養われます。そして、言われたことを忠実にこなすだけでは、論理思考能力は手に入りづらい。上司が指示した言葉を疑ってかかるくらいの姿勢が重要になることもあるのです。

2.特定の専門性がある

組織の中で生きていこうとするのなら、専門性はわかりやすくてはいけません。たとえばMBA大学院の講座にあるような、財務、マーケティング、人事マネジメントなどのジャンルはわかりやすいですね。意外と侮れないのがOA系スキル。「Excelなら完璧」、「Powerpointなら誰にも負けない」など、特定のOAスキルがあれば最低限戦えます。
専門性を持っていないエグゼクティブはこれからは淘汰される時代。名刺に書かれてある肩書き無しで、何で勝負できるかを問われた際に、答えられる専門性を持つことが求められています。

3.素直さ

人の話を最後まで聞くことができ、わからないことを質問できる能力を兼ね備えていることもまた大切です。この2つの行動が個人やチームの成長につながります。仕事ができるかどうかはもちろん、その後の将来性やどれだけ成長できるかも入学基準では検討されるので、その要となる素直さは大事です。
素直さを獲得する方法はとても簡単です。とにかく相手の話をさえぎらないこと。そしてその話の中の良い点や学ぶべき点をちゃんと口に出して相手に伝えられること。要は、相手がどんな人であろうと、敬意を示せるようになることです。たとえ相手が部下であろうとも、です。

4.傲慢さ

外資系の役員候補を中途採用する基準に「役員らしいふるまいができるかどうか」があります。優秀であっても、おどおどしているからダメという評価がついてしまう場合があります。小さな声で腰を低くしながら面接室に入ってくるのと、姿勢よく、胸を張って面接室に入ってくるのとでは受け手の心象が違いますよね。自信なんてなくてもいいんです。見せ掛けだけでも胸を張る。そして相手の目を見て話す。それだけのことで、人の価値はずいぶんアップします。
但し、素直じゃない傲慢さはただの嫌な人間になるので、素直さを伴っているのが必須条件です。

5.ひとりでいられる

昼食をいつも同じメンバーと行くのではなく、一人でさくっと済ませるようなタイプの人の方が実は出世しやすい。一人でいられる人は自分と対話できている人。自分が今どこにいるのかを冷静に把握できる能力を持っているのです。そもそも同じ面子で毎日昼食をとること自体、変化を嫌う人だと思われかねません。

人事制度の課題

結論として整理してみましょう。

企業規模が大きくなるほど人事部は現場を見られなくなります。すると誰が次の管理職や経営層に最適だ、ということの説明が難しくなるのです。そうなると人事部として説明責任を問われるので、「過去の評価がよかった人はこれからも活躍してくれるだろう」という基準で人を選び、給料にも反映するのです。

それは能力の再現性を求めるという意味では正しい。しかし、管理職として将来性があるかどうかはその評価に現れない場合があります。

給料を決めるための人事評価と出世候補者選択は元来別でなければならないのに、それが一緒くたに考えられている場合すらあります。それは多くの企業の人事制度の課題です。候補者選定までは人事評価基準を使い、候補者の選定の際は別の評価基準を用いる企業はありますが、完全に最初から分けている企業というのは稀です。しかしながら、先進的な企業やベンチャー企業では評価基準のない会社もあって、そういう会社では給料を増やす人とマネージャーになる人は別に考えられています。

また、ひとつ気を付けていただきたい点があります。それは、出世したからといって、必ずしも幸せになれるわけではない、ということです。

出世した結果、地位と名声とお金はあるものの、自分の時間がなくて不自由という状態に陥ることも良くある話です。実際、今はそういう人が多いのではないでしょうか。
出世をゴールとしてとらえてしまうとそういう状態に陥りやすい。出世とはあくまでも手段にすぎないのです。「入学基準」を意識して行動した先にある生活に思いをはせてほしい。

それは自分が求めるゴールなのか。

私の本は、30代半ばあたりで頭打ちを感じている人たちに向けて書いたつもりです。出世するためには「入学基準」を意識して活躍してほしい。そうすれば確実に出世できるようになる。ただ、その先にある自分自身の人生を考えてほしいと思うのです。そのためには早い段階からセルフブランディング=どんな生き方をしたいのか、を考えていってほしいと思います。
意外に思われるかもしれませんが、そういう人の方が、結局その会社の取締役や社長になったりするものです。

取材協力

セレクションアンドバリエーション株式会社代表取締役・平康慶浩氏

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人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所を経て、2012年よりセレクションアンドバリエーション株式会社代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。著書に「7日で作る新・人事考課」、「うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ」。ブログ「あしたの人事の話をしよう

取材・文:山葵夕子

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