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ニュースの現場で考えること

外務省が大臣会見を「開放」した!

鳩山首相の就任会見が「開放」されなかったことについて、あちこちから激しい批判が沸き上がっている。会見は広く開放した方がいいに決まっているから、批判は当然である。

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ところで、そんな最中、外務省では、きのう18日、岡田外相が会見の「開放」方針を表明し、あっさりと大臣会見の「開放」が決まった。又聞きではあるが、その外相会見では、早速、「週刊プレイボーイですが」と手が上がったらしい。外務省が作成した「大臣会見に関する基本的な方針について」は、以下のように書いてある。「歴史的な出来事」なので、全文を記しておこう。

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1.外務大臣は、原則として毎週2回、外務省内で定例記者会見を開催する。国会開会中は、これを国会内での「ぶら下がり会見」に替えることがあるが、その場合であっても、週1回は省内での会見を行う。

2.大臣会見は、外務省記者クラブ(「霞クラブ」)所属メディアに限らず、原則として、すべてのメディアに開放する。

3.上記2.にいうメディアとは、以下の者をいう。
 1)日本新聞協会会員
 2)日本民間放送連盟会員
 3)日本雑誌協会会員
 4)日本インターネット報道協会会員
 5)日本外国特派員協会(FCCJ)会員及び外国記者登録証保持者
 6)上記メディアが発行する媒体に定期的に記事等を提供する者(いわゆるフリーランス)

4.大臣会見に参加するメディアは、所定の手続きにより、事前に登録を行う。

以上

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若干付け加えれば、3の「メディアとは」の部分に例示された1~4の「会員」は、いずれも会社単位だ。個人単位は5と6のみ。4のインターネット報道協会も、「JANJAN」など有力ネット媒体によって構成されており、私の知る限り、会員は「個人」単位ではない。

実際の運用はこれからだから、上記の文面だけで判断はできないが、問題が生じるとすれば、まずは「4」であろう。「所定の手続き」による「登録」の際、例えば、「3の6」に記された「定期的」はどういう基準で判断されるのか。また、フリーランス記者は、上記3に明示された媒体にのみ記事や番組を提供しているわけではあるまい。個人運営のブログで立派な記事を書いている人はたくさんいる。例えば、元外務官僚だった天木直人さん。天木さんのブログは、私も大いに参考にさせてもらっているが、仮に、彼が岡田会見に出て質問をぶつけたいと思った場合でも、活動の場が個人運営のブログしかないとしたら、上記のどの括りにも該当しない。

政党機関紙の問題もある。共産党の「赤旗」は、上記の括りに当てはまらない。中国共産党の機関紙「人民日報」の特派員はFCCJの会員であるはずだから、岡田会見には出席可能だが、日本の共産党機関紙は除外されるかもしれない。赤旗は例えば、ワシントンやロンドンでの種々の会見等には出ることができる。それが世界標準である。公明新聞や自由新報も同じような立場になる。外務省がここまで「開放」するのであれば、政党機関紙を除外する正当性はどこにあるか、という疑問も出てくる。

「3」の6)の「定期的に記事等を提供する者」という「記事」とは、何か、という問題も考える必要があるかもしれない。なぜなら、記者の中には、情報収集のみを担う人もいるからだ。いわゆる「データマン」的な活動を行う人たちである。彼ら彼女らの中には、取材はしても、自身の名を出して記事を書かない(記事は別の、多くは著名な記者がまとめる)ケースも少なくない。

「3」の1)や2)の会員は、いわゆる「大メディア」である。実際、CSなどの番組制作会社は、日本民間放送連盟にほとんど加入していなから、CSの報道系番組はすんなりとは、大臣会見に参加できない事態も考え得る。

……そんなことを考えると切りがないが、それでも今回の「開放」は大きな前進である。この流れは、他の省庁にも拡大していくはずだ。既存メディアの体たらくは、メディア企業内部の官僚化・保守化の裏返しだから、会見が開放されたくらいで主要な報道がそう簡単には代わりはしないが、少なくとも、「予定調和」的だった会見は、これを契機に、時間をかけつつ、やがて、本当の意味での勝負の場になっていくのかもしれない。
by masayuki_100 | 2009-09-19 14:06 | 東京にて 2009