韓国でなぜ!? 日本のアニメが社会現象に
歴史認識などをめぐり、ぎくしゃくした関係が続く日本と韓国。そんな中、韓国での人気を確立した日本の漫画やアニメがいま“社会現象”にもなっている。
1日、第3国のブルネイで9か月ぶりに日韓の外相会談が実現した。韓国のユン・ビョンセ外相は会談で「歴史問題は尊重しながら気をつけて扱うべきです。そうしないと一個人と一民族の魂、価値観を傷つけることになる」と述べ、歴史認識の問題で日本を強くけん制した。日本と韓国の間には深い溝が横たわる。
そんな中、韓国・ソウルのイベント会場では、ある催しが開かれた。若者たちがお気に入りのキャラクターにふんし、ポーズを決めている。その多くが“日本の作品”の登場人物だ。日本の漫画やアニメは、韓国での人気をすでに確立している。つめかけた人々のお目当ては日本のスタジオジブリのキャラクターだ。“レイアウト”と呼ばれる普段は見ることができないアニメの“設計図”の展示会。そこには日本語を流ちょうに話す熱心なファンもいた。アニメーターを目指すパク・キワンさんは「これ、伝説のレイアウトですね。さすが宮崎さん。実際に見ると本当にすごいな」と、貴重なレイアウトを前に感嘆の声を漏らしていた。
人気があるのは、おなじみのテーマソングとともに親しまれている、いわば“定番”の作品だけではない。書店の漫画コーナーでは通路側の一番目立つ位置に、翻訳された日本の漫画が並んでいる。人間を食べる巨人との戦いを描いた“進撃の巨人”は、大手書店ではベストセラーにランクインした。アニメも字幕入りで放送され人気だ。この漫画を手にしていた学生は「ストーリーが複雑でおもしろいです。隠された部分が多くて単純じゃないんだ」と語る。テレビのお笑い番組にも、この作品に出てくる巨人のようなキャラクターが登場する。人気にあやかろうと、パロディ映像を市の広報に使う自治体もあらわれた。なぜこれほどのブームとなったのだろうか。
日本以上の競争社会とされる韓国。大手新聞は特集記事を展開し、作品に描かれた人々の無力感が、韓国社会が直面する問題に通じると分析する。“進撃の巨人”の韓国での版権を持つアニメ配給会社の社長はこう語る。
「学業での競争、20~30歳代は就職、40~50歳代はリストラや老後への不安感が反映されていると思います」
韓国では一般的に、アニメは小さな子供が見るものとされていますが、日本アニメのファンには大人の姿も目立つ。あるファンは宮崎駿監督の作品についてこう話してくれた。
「子供のころに見た風景がたくさん盛り込まれている気がするんです」
韓国で幅広い年代に愛される日本のアニメ。日韓関係が冷え込むなかでもその人気は揺らいでいないようだ。