NASAの広視野赤外線掃天探査機「WISE」が、PHAの総数や起源、それらが持つ危険性について、新たな情報をもたらした。
PHAとは、地球の軌道に最も近い軌道を持つ地球近傍小惑星の小集団を指す。小惑星同士の互いの距離は約800万キロメートルだ。地球の大気を通過しても消滅しないため、地球に衝突するなどして、地表に部分的なダメージを与えると考えられている。
「WISE」が抱えているミッション「NEOWISE」において、PHAのサンプルを取り、その総数を予測したところ、およそ4,700個、直径は約100メートル以上であることが示唆された。ただし、計数の誤差は1,500個ほどあるとされる。
実際に確認されているPHAは全体の20~30%と考えられており、その全貌を捉えるには今後20年間の集中的な研究が必要だとの声もある。さらに、低い軌道傾斜角の軌道には、これまで考えられていた数の2倍のPHAが存在する可能性があるということも分かった。
PHAは、その他の地球近傍小惑星よりも輝度が高い。そのサイズは小さいようだが、これは、火星と木星の間にあるメインベルト内で、2つの小惑星が衝突したためにできたものであるためだと考えられる。低い軌道傾斜角を持つ天体がメインベルト内で砕け、その破片がより地球に近い軌道の中に流れ込み、最終的にPHAになったというわけだ。
多くのPHAに輝度が高い傾向があるという発見は、その構成物が花こう岩などの石質なのか、金属質なのかなどの情報をもたらすもので、地球にとって危険な小惑星を評価する上で重要となる。それは、天体の構成によって、天体が地球の大気とぶつかった場合に燃焼する速度が変わってくるからだ。
「WISE」は小惑星の赤外線と熱を検知することができるため、明るい天体と暗い天体の両方を捉えることが可能であるまた、赤外線のデータから小惑星の直径の計測が可能で、可視光での観測と組み合わせて小惑星が反射する日光の量を計測することができる。この性能を生かし、小惑星の集団の全体像をより明らかにすることが期待される。