新宿
新宿のSOMPO美術館では「カナレットとヴェネツィアの輝き」が開かれています。
会期は12月28日(日)までです。
作品は撮影可能です。
カナレット、本名 ジョヴァンニ・アントニオ・カナル(1697‐1768)はヴェネツィアの風景画家で、
ヴェネツィアの景観を広々と、細密に描いたヴェドゥータ(景観画)で有名です。
17-18世紀にイギリスの貴族の子弟が見聞を広めるため、長期間ヨーロッパ旅行を行なう
グランド・ツアーが盛んになり、土産としてこのような景観画の需要が高まっています。
展覧会ではイギリスの美術館の所蔵作品を中心に、カナレットなどが描いたヴェネツィアの
景観画、約60点が展示されています。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ 「アントニウスとクレオパトラの出会い」
1747年頃 スコットランド国立美術館
紀元前42年にタルソスでアントニウスとクレオパトラが会った場面で、クレオパトラの
衣装はルネッサンス風です。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ(1696 - 1770)は18世紀のヴェネツィアを
代表する画家で、優美な作風で知られています。
カナレット 「サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ」
1730年以降 スコットランド国立美術館
左端の建物はコルネル宮で、右奥にサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の
ドームが見えます。
カナレット 「カナル・グランデのレガッタ」 1730-1739年頃 ボウズ美術館、ダラム
横約218cmの大きな作品で、カナル・グランデ(大運河)でレガッタが賑やかに
繰り広げられています。
レガッタは等級別に分かれていて、女性のレースもあったそうです。
カナレット 「サン・マルコ広場でのコメディア・デラルテの上演」
1755ー1757年 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ロンドン
ペン画で、イタリアの風刺劇のコメディア・デラルテが鐘楼の前に舞台をしつらえて、
上演しています。
カナレット 「昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ」 1760年 ダリッジ美術館、ロンドン
パンフレットに使われている作品です。
キリストの昇天を祝う昇天祭の状況で、ブチントーロはヴェネツィアの総督の乗る
巨大なガレ―船です。
ドゥカーレ宮殿の奥にサン・マルコ寺院が見え、左は国立マルチャーナ図書館です。
このガレー船はナポレオンが1798年にヴェネツィアを征服した際に焼却されてしまいました。
白い点を散りばめて光の注ぐ様を表していて、晩年の作品の特徴とのことです。
カナレット 「ロンドン、ラネラーのロトンダ内部」
1751年頃 コンプトン・ヴァーニー、ウォリックシャー
内部の直径は約46mあり、楽団の席も設けられていて、音楽界なども催されていました。
幼少時のモーツアルトもここで演奏したことがあるそうです。
窓からの光を強調した画面になっています。
カナレットは1746年から1756年までイギリスに滞在し、多くの作品を描いています。
そのため、イギリスにはカナレットの作品が多く残っています。
ウィリアム・ジェイムズ 「スキアヴォーニ河岸、ヴェネツィア」 東京富士美術館
スキアヴォーニ河岸は運河沿いにサンマルコ広場と並ぶ河岸です。
ウィリアム・ジェイムズはイギリスの画家ですが、生没年不詳で、かっきりとして
硬い描き振りに特徴があります。
ミケーレ・マリエスキ 「リアルト橋」 1740年頃 ブリストル市立博物館・美術館
ヴェネツィアの名所、リアルト橋です。
始めは木製の跳ね橋でしたが、石造の太鼓橋に架け替えられ、1591年に完成しています。
ミケーレ・マリエスキ(1710‐1743)はイタリアの画家で、カナレットと同じくヴェネツィアの
景観をよく描いていましたが、若くに亡くなっています。
フランチェスコ・グアルディ 「小さな広場と建物のあるカプリッチョ」
1759年 東京富士美術館
カプリッチョとは「気まぐれ」「奇想画」という意味で、空想と現実の世界が混在した
絵のことです。
崩れかけた建物はリアルト橋近くにあるヴェネツィア最古の教会、サン・ジャコモ
・ディ・ リアルト教会を基に想像していると思われます。
実際には周囲の景色も当時からこれとはかなり違い、建物に隠れて海も
見えなかったそうです。
フランチェスコ・グアルディ(1712‐1793)はマリエスキの工房にいたこともあり、
カナレットとマリエスキの影響を受けています。
ベルナルド・ベロット 「ルッカ、サン・マルティーノ広場」
1742-1746年 ヨーク・ミュージアム・トラスト(ヨーク美術館)
トスカーナのルッカのサン・マルティーノ大聖堂の前の広場を描いています。
ストリートビューで見ると、今も全く同じ景観です。
ベルナルド・ベロット(1722-1780)はヴェネツィア出身の画家で、母はカナレットの妹です。
カナレットの弟子になった後、ザクセン選帝侯やポーランド国王に仕えています。
第2次世界大戦で破壊されたドレスデンやワルシャワの建築を再建する際に、ベロットの
精緻な絵は貴重な資料になっています。
ウィリアム・マーロー 「カプリッチョ:セント・ポール大聖堂とヴェネツィアの運河」
1795年頃? テート
ウィリアム・マーロー(1740-1813)はイギリスの風景画家です。
ロンドンのセント・ポール大聖堂とヴェネツィアの風景が一体となった、奇想画です。
ウィリアム・エティ 「溜息橋」 1833-1835年
ヨーク・ミュージアム・トラスト(ヨーク美術館)
左のドゥカーレ宮殿と右の牢獄をつなぐ橋で、囚人はこの橋を渡る時がヴェネツィアの
景色を見る最後の時となるということで付いた名です。
月夜の情景で、牢獄から死刑囚の遺体を運河に運び出しているところです。
実際には、この橋が出来た頃には短期囚しか収容していなかったそうです。
ウィリアム・エティ(1787-1849)はイギリスの画家で、古典的でロマンチックな雰囲気の
裸婦像で知られています。
1822年から23年にかけてヴェネツィアに滞在し、描く速さと巧みさから「Il Diavolo」(悪魔)と
呼ばれたそうです。
ヘンリー・ウッズ 「サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ広場、ヴェネツィア」
1895年 ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドン
ヘンリー・ウッズ(1846-1921)はイギリスの画家で、ヴェネツィアの魅力に惹かれて、
定住しています。
ヴェネツィアの何気ない日常を描いた作品で、人気を得ました。
ウジェーヌ・ブーダン 「カナル・グランデ、ヴェネツィア」 1895年 東京富士美術館
ブーダンらしい、空を大きく取った広々とした景色として描いています。
ブーダンはモネに屋外で描くことを教えた人物でもあります。
クロード・モネ 「パラッツォ・ダーリオ、ヴェネツィア」
1908年 ウェールズ国立美術館、カーディフ
モネが2番目の妻、アリスとヴェネツィアを訪れた時の作品です。
モネらしく、運河の水面に映る建物の影に興味を持って描いています。
静養のつもりが、ヴェネツィアの光に魅了されて、制作に没頭したそうです。
クロード・モネ 「サルーテ運河」 1908年 ポーラ美術館
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の西側の運河をゴンドラから見て描いています。
明るい日の光と影が強調されています。
ポール・シニャック 「ヴェニス、サルーテ教会」 1908年 宮崎県立美術館
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂はカナル・グランデの入口にあります。
大粒の点描で、朝日を受けて明るく輝く聖堂を描いています。
シニャックはヨットにも乗っていたので、海の景色をよく題材にしています。
カナレットばかりでなく、彼に影響を受けた画家たちの作品も多く展示され、
ヴェネツィアの景観と雰囲気を存分に楽しめる展覧会です。
展覧会のHPです。
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新宿のSOMPO美術館では「カナレットとヴェネツィアの輝き」が開かれています。
会期は12月28日(日)までです。
作品は撮影可能です。
カナレット、本名 ジョヴァンニ・アントニオ・カナル(1697‐1768)はヴェネツィアの風景画家で、
ヴェネツィアの景観を広々と、細密に描いたヴェドゥータ(景観画)で有名です。
17-18世紀にイギリスの貴族の子弟が見聞を広めるため、長期間ヨーロッパ旅行を行なう
グランド・ツアーが盛んになり、土産としてこのような景観画の需要が高まっています。
展覧会ではイギリスの美術館の所蔵作品を中心に、カナレットなどが描いたヴェネツィアの
景観画、約60点が展示されています。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ 「アントニウスとクレオパトラの出会い」
1747年頃 スコットランド国立美術館
紀元前42年にタルソスでアントニウスとクレオパトラが会った場面で、クレオパトラの
衣装はルネッサンス風です。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ(1696 - 1770)は18世紀のヴェネツィアを
代表する画家で、優美な作風で知られています。
カナレット 「サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ」
1730年以降 スコットランド国立美術館
左端の建物はコルネル宮で、右奥にサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の
ドームが見えます。
カナレット 「カナル・グランデのレガッタ」 1730-1739年頃 ボウズ美術館、ダラム
横約218cmの大きな作品で、カナル・グランデ(大運河)でレガッタが賑やかに
繰り広げられています。
レガッタは等級別に分かれていて、女性のレースもあったそうです。
カナレット 「サン・マルコ広場でのコメディア・デラルテの上演」
1755ー1757年 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ロンドン
ペン画で、イタリアの風刺劇のコメディア・デラルテが鐘楼の前に舞台をしつらえて、
上演しています。
カナレット 「昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ」 1760年 ダリッジ美術館、ロンドン
パンフレットに使われている作品です。
キリストの昇天を祝う昇天祭の状況で、ブチントーロはヴェネツィアの総督の乗る
巨大なガレ―船です。
ドゥカーレ宮殿の奥にサン・マルコ寺院が見え、左は国立マルチャーナ図書館です。
このガレー船はナポレオンが1798年にヴェネツィアを征服した際に焼却されてしまいました。
白い点を散りばめて光の注ぐ様を表していて、晩年の作品の特徴とのことです。
カナレット 「ロンドン、ラネラーのロトンダ内部」
1751年頃 コンプトン・ヴァーニー、ウォリックシャー
内部の直径は約46mあり、楽団の席も設けられていて、音楽界なども催されていました。
幼少時のモーツアルトもここで演奏したことがあるそうです。
窓からの光を強調した画面になっています。
カナレットは1746年から1756年までイギリスに滞在し、多くの作品を描いています。
そのため、イギリスにはカナレットの作品が多く残っています。
ウィリアム・ジェイムズ 「スキアヴォーニ河岸、ヴェネツィア」 東京富士美術館
スキアヴォーニ河岸は運河沿いにサンマルコ広場と並ぶ河岸です。
ウィリアム・ジェイムズはイギリスの画家ですが、生没年不詳で、かっきりとして
硬い描き振りに特徴があります。
ミケーレ・マリエスキ 「リアルト橋」 1740年頃 ブリストル市立博物館・美術館
ヴェネツィアの名所、リアルト橋です。
始めは木製の跳ね橋でしたが、石造の太鼓橋に架け替えられ、1591年に完成しています。
ミケーレ・マリエスキ(1710‐1743)はイタリアの画家で、カナレットと同じくヴェネツィアの
景観をよく描いていましたが、若くに亡くなっています。
フランチェスコ・グアルディ 「小さな広場と建物のあるカプリッチョ」
1759年 東京富士美術館
カプリッチョとは「気まぐれ」「奇想画」という意味で、空想と現実の世界が混在した
絵のことです。
崩れかけた建物はリアルト橋近くにあるヴェネツィア最古の教会、サン・ジャコモ
・ディ・ リアルト教会を基に想像していると思われます。
実際には周囲の景色も当時からこれとはかなり違い、建物に隠れて海も
見えなかったそうです。
フランチェスコ・グアルディ(1712‐1793)はマリエスキの工房にいたこともあり、
カナレットとマリエスキの影響を受けています。
ベルナルド・ベロット 「ルッカ、サン・マルティーノ広場」
1742-1746年 ヨーク・ミュージアム・トラスト(ヨーク美術館)
トスカーナのルッカのサン・マルティーノ大聖堂の前の広場を描いています。
ストリートビューで見ると、今も全く同じ景観です。
ベルナルド・ベロット(1722-1780)はヴェネツィア出身の画家で、母はカナレットの妹です。
カナレットの弟子になった後、ザクセン選帝侯やポーランド国王に仕えています。
第2次世界大戦で破壊されたドレスデンやワルシャワの建築を再建する際に、ベロットの
精緻な絵は貴重な資料になっています。
ウィリアム・マーロー 「カプリッチョ:セント・ポール大聖堂とヴェネツィアの運河」
1795年頃? テート
ウィリアム・マーロー(1740-1813)はイギリスの風景画家です。
ロンドンのセント・ポール大聖堂とヴェネツィアの風景が一体となった、奇想画です。
ウィリアム・エティ 「溜息橋」 1833-1835年
ヨーク・ミュージアム・トラスト(ヨーク美術館)
左のドゥカーレ宮殿と右の牢獄をつなぐ橋で、囚人はこの橋を渡る時がヴェネツィアの
景色を見る最後の時となるということで付いた名です。
月夜の情景で、牢獄から死刑囚の遺体を運河に運び出しているところです。
実際には、この橋が出来た頃には短期囚しか収容していなかったそうです。
ウィリアム・エティ(1787-1849)はイギリスの画家で、古典的でロマンチックな雰囲気の
裸婦像で知られています。
1822年から23年にかけてヴェネツィアに滞在し、描く速さと巧みさから「Il Diavolo」(悪魔)と
呼ばれたそうです。
ヘンリー・ウッズ 「サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ広場、ヴェネツィア」
1895年 ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドン
ヘンリー・ウッズ(1846-1921)はイギリスの画家で、ヴェネツィアの魅力に惹かれて、
定住しています。
ヴェネツィアの何気ない日常を描いた作品で、人気を得ました。
ウジェーヌ・ブーダン 「カナル・グランデ、ヴェネツィア」 1895年 東京富士美術館
ブーダンらしい、空を大きく取った広々とした景色として描いています。
ブーダンはモネに屋外で描くことを教えた人物でもあります。
クロード・モネ 「パラッツォ・ダーリオ、ヴェネツィア」
1908年 ウェールズ国立美術館、カーディフ
モネが2番目の妻、アリスとヴェネツィアを訪れた時の作品です。
モネらしく、運河の水面に映る建物の影に興味を持って描いています。
静養のつもりが、ヴェネツィアの光に魅了されて、制作に没頭したそうです。
クロード・モネ 「サルーテ運河」 1908年 ポーラ美術館
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の西側の運河をゴンドラから見て描いています。
明るい日の光と影が強調されています。
ポール・シニャック 「ヴェニス、サルーテ教会」 1908年 宮崎県立美術館
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂はカナル・グランデの入口にあります。
大粒の点描で、朝日を受けて明るく輝く聖堂を描いています。
シニャックはヨットにも乗っていたので、海の景色をよく題材にしています。
カナレットばかりでなく、彼に影響を受けた画家たちの作品も多く展示され、
ヴェネツィアの景観と雰囲気を存分に楽しめる展覧会です。
展覧会のHPです。
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