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2008/02/16

初音ミクの版権について考える

 一週間後に迫ったガレージキットの祭典ワンダーフェスティバル2008冬。出展参加ディーラーのみなさんは追い込み中のことかと思います。
 前回のエントリーで紹介した「初音ミク」関連アイテムの版権申請したディーラーリストを眺めていていくつか気になったことを述べたいと思います。
 少しばかりカタイ話になりますので「ちょっと覚悟をしててよね♪」(おふざけはここまで(^^;)

 40以上のディーラーが版権申請を出していますがそのほとんどが「キャラクター・ボーカル・シリーズ01 初音ミク」という作品に対する申請です。では「鏡音リン・レン」は?という疑問が出ますよね。自分が調べた範囲では一ケ所だけ「キャラクター・ボーカル・シリーズ02 鏡音リン」を申請しているディーラーさんが有りました。それでも「レン」は?という疑問は残ります。

 これには明確な理由がありましてワンダーフェスティバル(以下ワンフェスまたはWF)では一日版権システムというルールの元に版権キャラクター・アイテムの頒布が許諾されます。
 参加申込み時に頒布を希望するアイテム・リストを提出し、その中で申請を認められたアイテムは写真による版権元の監修を受けることになります。最終時に監修審査を通った物だけがワンフェス開催当日の会場内でのみ頒布可能となります。つまり最初にリストで申請したもの以外の版権アイテムの頒布はあり得ません。
 一日版権にはこの他にも後述する頒布価格等の様々な条件が付与されており、これは参加ディーラーと版権元との正式な契約に基づく物です。よくイベント後にネットオークションで一日版権アイテムがプレミア価格で出品されているのを見かけますが、これらは厳密に言えば契約外取引きとなります。
 契約違反の転売業者を潤わせるるだけでなく版権元や場合によってはアイテムを販売したディーラーにも迷惑がかかることがあり得ますので決して手を出さないでください。

 話が横道に逸れましたが今回のワンフェスのアイテム・リスト提出の締切りは2007年9月28日。この時点では「リン」というキャラ名が発表されていたたかも怪しい時期でグラフィックについてはシルエットが公式サイトで掲載されていただけで11月8日発売のDTMマガジン12月号でラフイラストが初めて発表されたわけです。もちろんレンに至っては存在そのものが知られていませんでした。
 版権監修のための写真提出がWF2008冬の場合は11月9日が締切りですので、それまでに監修に耐え得る形に仕上げている必要があります。現実的に考えたら「リン・レン」の申請は不可能ですね。

 しかしながら今回唯一リンを申請しているディーラー「モリモリ部屋」さんのブログを見る限りきちんと形になって複製も終わっているようなので当日販売されると思います。
  9月28日までにアイテム申請したとしたら「キャラクター・ボーカル・シリーズ02」という情報だけで手続きをしたと思われ、これはかなりリスキーです。シルエットを頼りに作業を開始して早売りのDTMマガジンを見て2〜3日でそれなりの形を作ったと予測されます。 これは並み大抵の熱意では出来ないことですよ。
 ニコニコ動画に「初音ミクの妹フィギュアを勝手に造ろうZE☆」シリーズを上げていた方みたいなのでさもありなんですが。

 さて「初音ミク」の版権申請をしたディーラー・リストを元に各ディーラーのサイトを巡回してみました。
 着々と準備が進んでいる所もあればかなりテンパっている所などそれぞれの事情が見て取れるのですが、その中で出展申請を取り下げているディーラーが結構あるのが気なりました。
 取り下げの理由は色々あると思いますがその中で版権許諾の諸条件がアマチュアに対しては厳しすぎると言う意見が目立ちました。

 ワンフェスでの一日版権の許諾条件としては製品1個あたりの売価の一定割合に課せられるロイヤリティ、一回のイベントでの販売上限数、サンプルの提出等があり版元によってまちまちです。
 提出サンプルについてもキット状態の製品、塗装済み完成品、完成品を撮影した写真などがあります。
 この許諾条件の具体的な内容については版元とディーラ間の契約の守秘義務があるのでここでは書きませんが、初音ミク関係で提示された条件はロイヤリティの比率や提出サンプルでかなり辛い物が提示された様です。

 それに加えて造型のある面に特化した厳しい条件が提示され、これを忠実に守ろうとするとかなり限られた範囲の造型になるか非常に不自然な表現を余儀無くされるとのことです。
 ニコニコ動画のデッドポールPの一連の作品が削除されたことやミクを立体として見た際のデザインの特性、そして恐らくは鏡音リン・レンでは当てはまらないだろうと言うこと等から推測してみてください。
 このような状況下で造型をしている原型師達のモチベーションが著しく削がれてしまったことは想像に難くありません。次回以降のワンフェスの動向への影響が気になります。

 今回の提示条件を認めたにしてもそれをあらかじめガイドラインとして明示してあれば大きな問題にならなかったかもしれません。
 確かに公序良俗に関してのガイドラインとしてTVで放映出来るレベルということがピアプロに上がっていますが、このTVというのはテレビ東京のアニメ枠と言うくらいの限定を付けないと今回の件は正確には認知されないでしょう。

 版権を持つメーカとしてはキャラクターのブランドイメージを守るというスタンスは当然ですが、ここ最近の初音ミクを取り巻く対応は非常に神経質で過剰防衛とも思えます。
 かつてインターネットが普及する以前に第一次のDTMのブームがありましたが、JASRACによる著作権の規制によりDTM系のサイトはことごとく閉鎖され急激にブームが去ったと言うことがありました。
 まさにその再来がおきようとしている様にも思えます。
 これはCGMを推進する立場を標榜しているクリプトンが本当に意図することなのかと疑問がわいてきます。

 勿論、著作権を侵害してもよいと言うつもりはありませんし創作活動をするのにあたっては一定のルールが必要であることも認めます。ただし創作のステージには必要以上の枷があるとそれは自由な発想を奪い可能性を潰してしまうおそれがあるのも事実です。
 そのあたりのサジ加減と言うのは非常に難しい。
 かつてのDTMブーム消滅の苦い体験を知っているクリプトンならでは新しい解を見い出して欲しいものです。

 このような厳しい条件を乗り越えて来週のワンフェスではどんなミク作品に出会えるのか非常に楽しみであります。
 参加ディーラーの皆さん、最後の追い込み頑張ってください。

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コメント

>この許諾条件の具体的な内容については版元とディーラ間の契約の守秘義務があるので...

???
守秘義務が発生するのは,公務員法や電波法等の法律で規定された職業の人のみですよ.普通に考えると版元もディーラーも守秘義務は発生しませんよ.
個別にNDAを結んでるならば公開できないのは分かりますが,そんな事をしてるんですか?

投稿: とうりすがり | 2008/02/20 00:02

補足.
>普通に考えると版元もディーラーも守秘義務は発生しませんよ.
版元の社員,ディーラーの社員は,それぞれの労働契約において,秘匿義務を課す場合もあるんでこの事を言ってるんかも知れんけど,個人運営の出品者は,NDAで縛らない限りありえんっと思うわけだ.

投稿: とうりすがり | 2008/02/20 00:12

>JASRACによる著作権の規制により。。。
>まさにその再来がおきようとしている様にも思えます。

ゲーム化や立体化ができなかったとしてもDTMツールとしての初音ミクが潰れるとはとても思えません。

投稿: 別の通りすがり | 2008/02/21 02:29

MEIKOやKAITOと比べると、今回のムーブメントはボーカロイドの「キャラクター性」が先行した形でDTMブームを後押ししているので、仮にこのままキャラクターに強い規制をかけ過ぎると、ミクやリン・レン以降のキャラクターを使って表現をする人がいなくなり、ボーカロイド自体のブームが終わってしまう可能性を危惧しているのではないでしょうか。
確かにDTMツールとしては残りますし、以前からDTMを行っていたユーザーはボーカロイドを使うかも知れませんが、ユーザー増加は期待できないと思いますね。

投稿: 他のとおりすがり | 2008/02/21 22:38

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受信: 2008/02/17 01:29

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