File7 深海生物研究者 藤原義弘

第1回 深海生物フォトグラファーの表の顔は

すごくきれいな深海生物の写真を撮りまくっているフォトグラファーがJAMSTECにいると聞いて、今回も訪れました横須賀本部。うかがってみると写真撮影が本業ではないらしい。何者? まずは美しくも不思議な深海生物の写真からどうぞ!(写真=田中良知)


ユノハナガニ(写真:藤原義弘/JAMSTEC)(写真クリックで拡大)

 深海生物図鑑という名のカレンダーをご存じだろうか。JAMSTECの協力のもと、日宣テクノ・コムズという会社が販売しているものだ。このカレンダーはとにかく、写真が主役。真っ黒い背景に、神秘的な深海生物がふわっと浮かび上がって見えるのだ。

コトクラゲ。学名はLyrocteis imperatoris(写真:藤原義弘/JAMSTEC)(写真クリックで拡大)

 たとえば、この連載の初回でも少しだけ触れた深海の熱水噴出孔近くに暮らす白いカニ・ユノハナガニが正面ドアップでこちらを見ていたり、学名imperatorisは昭和天皇が採取したことにちなむコトクラゲが「まさに竪琴」と思わせる姿で浮遊していたり。
 ちょっと見るつもりが、つい、しげしげと眺めてしまい、確かに図鑑だ。

 これらの写真は、JAMSTECのメンバー3名による作品だ。そのうち最も多くを撮っているのが、藤原義弘さん。上野の国立科学博物館で開催中の特別展「深海」でも作品がたくさん展示されているほか、深海生物のビジュアル本をいくつも出している、深海生物好きの間で、とてもよく知られているフォトグラファーである。
 カメラマンT中にレンズを向けられて、「どうしたらいいですか?」とポーズを尋ねている。撮られるときもいろいろと考える人は、撮るときもいろいろと考えるのでしょうか。

「見た目が格好いい生物の方が、上手く撮るのは難しいんです。撮ったときはいいと思っていても、後になって『うーん』と落胆することもあります。でも見た目が格好良くないと、こう見た方がいいかなとか、こういう撮り方もあるかなとか、工夫するので、結果としてよくなるんです。だから、僕も、結構よく写るかも知れませんね(笑)」