本書の内容

勇壮で過酷な海の世界に写真家・中村征夫が惚れ込み、30年にわたり通いつめた成果をついに発表!

沖縄の県魚であり、長く食卓で親しまれている魚「グルクン」。
グルクンを追う伝統的な漁「アギヤー」と、漁にたずさわる海の男たち。
アギヤーの勇ましさ、水中の美しさ、沸き立つ港。沖縄の生活に根差した海の姿がここに。

アギヤーとは?

舟団を組み、人が魚を追い込む伝統的な漁のこと。現在のようなアギヤーは明治時代に始まり、隆盛を誇った時期には沖縄の各島でおこなわれていました。現在(2016年4月)は伊良部島の1カ所で続けられています。本書は一時代の貴重な記録でもあります。

グルクンとは?

沖縄の県魚にも指定されている魚です。とても美味で、沖縄の食卓には欠かせません。

30年にわたる取材

中村征夫さんがアギヤーと出合ったのは沖縄復帰前。30年にわたる取材で、モノクロで撮影するスタイルを通し、アギヤーの変遷を見てきました。アギヤーは非常に過酷な漁であり、その背景には厳しい歴史もありました。その姿に心打たれ、熱中し、沖縄に通い、ひたすら撮りためてきたのです。


グルクンを追い求める男たち(画像クリックで拡大)

袋網とダイバー

追い込まれたグルクンを内に抱え、美しい弧を描き浮上していく袋網。
グルクンはゆったりとした空間の中を編隊を組んで泳いでいる。

帰港する福里健三

サバニを操縦する福里健三氏(撮影当時51歳)。
伊良部島でウミンチュ一筋に生きている男だ。書籍では、氏にまつわるエピソードも語られている。

福里健三のフィン

破けたところを網の補修に使う丈夫なアンミ(糸)で、丁寧に縫い合わせてある、福里健三氏のフィン。
これほど道具を大切に使っている。

母船より飛び込み

走行する大型母船から我先にと飛び込むウミンチュたち。
すでに水中には網が張られており、手に持っている脅し棒のスルシカーで、魚を追い込んでいく。

袖網へと追込む

脅し棒のスルシカーを突き刺すように激しく動かし、沖合から袖網の中まで魚群を追い込んできたところ。
ここから一気に網の中へ追い込んでいく。

グルクンの群れ

グルクンの群れ。和名をタカサゴという。
沖縄県の県魚に指定されている、重要な食用魚。

著者紹介

中村征夫 (なかむら・いくお)
1945年秋田県昭和町(現・潟上市)生まれ。19歳のときに神奈川県真鶴岬で水中写真を独学で始める。撮影プロダクションを経て31歳でフリーランスとなる。1977年東京湾にはじめて潜り、ヘドロの海で逞しく生きる生きものに感動、以降ライフワークとして取り組む。数々の報道の現場の経験を生かし、新聞、テレビ、ラジオ、講演会と、さまざまなメディアを通して海の魅力や海をめぐる人々の営みを伝えている。2009年秋田県潟上市にフォトギャラリーブルーホールを開設。主な著書に『全・東京湾』『海中顔面博覧会』(以上、情報センター出版局)、『海中2万7000時間の旅』(講談社)などがある。主な受賞歴に、第13回木村伊兵衛写真賞、第28回講談社出版文化賞写真賞、第26回土門拳賞、2007年度日本写真協会年度賞などがある。

読者の声

  • 海人の息づかいが写真からとても伝わってきました。伝統の灯を消してはいけない。そんな想いも強く抱きます。(43歳、男性)
  • ひとつのテーマを追い続けた作品には、訴える力を感じる。(63歳、男性)

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