19世紀後半、独学で写真を学んだ米国バーモント州の農夫ウィルソン・ベントレー氏は初めて、雪の結晶を“顕微鏡写真”に収めることに成功した。使ったのは、蛇腹付きのカメラに顕微鏡を取り付けたものだ。
ベントレー氏が撮影した印象的な写真の一部は、1904年にナショナル ジオグラフィック誌で紹介された。さらに1923年にも特集が組まれ、雪の結晶の繊細な美しさと多様な幾何学模様を見事に写し出している。
光を反射し屈折させるごく小さな結晶の造形、しかも2つと同じ形が存在しないことは、現代でもなお驚きだ。1988年、米国ウィスコンシン州を襲った吹雪から同じ形状と見える結晶が発見されたが、米カリフォルニア工科大学の物理学者ケネス・リブレット氏によれば、これらもまったく同じではなく、分子配置などは異なる可能性が高いという。(参考記事:「氷晶が生み出す、光のダイヤモンド」)
ベントレー氏は1925年、自身の写真について次のように語っている。「顕微鏡で見た雪の結晶は奇跡のような美しさでした。この美しさが人の目に触れないことは残念だと思ったのです」。ベントレー氏は1931年、バーモント州ジェリコの自宅で他界した。生涯で撮影した雪の結晶の写真は5000枚を超えていた。(参考記事:「NASA黄金時代のお宝写真約700枚がオークションに」)
ベントレー氏が残した写真の中からえりすぐりをお届けしよう。
繊細な結晶
ベントレー氏は1931年、2400枚の写真を収めた作品集『雪の結晶』を出版した。結晶の形は、落下する際の大気の温度や湿度によって変わる。
多角形
ハチの巣を思わせる幾何学的な結晶。写真を撮影するようになる以前、ベントレー氏は結晶を鉛筆でスケッチしていたが、描き終えないうちに解けてしまった。
手裏剣
忍者が使う手裏剣のような結晶。
愛称
作品が人気を呼び、ベントレー氏は「スノーフレーク・ベントレー」の愛称で親しまれた。