初期宇宙の観測を行っていた天文学者らが、赤ちゃん銀河が多数集まっている場所を見つけた。これまで知られているうち最古の銀河団ではないかと見られている。天の川銀河をはじめとする現代の銀河はそれぞれ寄り集まって銀河団を形成しているが、その形成時の様子についてはこれまでよくわかっていなかった。
今回、米アリゾナ大学スチュワード天文台のブレンダ・L・フライ氏らの研究チームは、欧州宇宙機関(ESA)のプランク宇宙望遠鏡とハーシェル宇宙望遠鏡、そして重力レンズ効果を利用して、100億光年~110億光年かなたにある今回の銀河の集まりを発見した。天文学術誌『Astronomy & Astrophysics』の次号に論文が掲載される。
100億光年~110億光年離れた天体からの光は、その天体の100~110億年前の姿を示す。宇宙そのものは138億年前にできたとされているので、新たに発見された銀河は、宇宙の歴史のごく初期に生まれたものと言える。(参考記事:「宇宙の化石、「Segue 1」銀河」)
若い銀河は「全力疾走」する
研究者らはまず、プランク宇宙望遠鏡を使って作成された、ビッグバン後の放射を記録した巨大な全天マップを詳細に調べ上げた。遠赤外線からサブミリ波までの範囲で観測されたこのデータからは234個の天体が見つかった。これらは今日我々が目にしている銀河団よりも前の段階にある銀河団とみられる。(参考記事:「大量の星形成、巨大銀河団を発見」)
続いて、NASAのハーシェル宇宙望遠鏡でさらに詳しい観測を行い、プランクのマップに見られる黒い点が、それぞれ銀河が密集した領域であることを確認した。さらにそのうちの3つの銀河からは、かなり速いペースで星が生み出されており、生まれた星の全質量は最大で1年間に太陽1500個分にもなることがわかった。
これにより、長年にわたる疑問が解決された。「若い銀河が星を形成するスピードは、マラソンランナーがペースを調整しながら走るようなゆるやかなものなのか、それとも爆発的に速いものなのかはわかっていませんでした」とフライ氏は書いている。「若い銀河はのんびりとではなく、劇的なスピードで形成されることが判明しました。星が生まれる際の光で輝く銀河は、空に打ち上がる花火のようです。フルマラソンで言えば、最初の1マイルを全力疾走して、残りを歩いているようなものでしょう」