Raspberry Pi 5で「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」の届け出をしてみた
DigikeyでRaspberry Pi 5が買えるようになったわけですが、技適が通っていないため、案の定、技適警察が湧くという事態になりました。
さて、技適が通っていない装置でも180日を限度として実験に使える「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」という制度があります。この制度を使って届け出をすれば使用することができるようになります。
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/exp-sp/index.htm
やり方をざっくり説明すると、電子証明書を取得して総務省のWebサイトで申請するという簡単なものですが、FCCやCEなど外国の認証を得ている装置か否かで変わってきます。認証を得ていない場合は無線従事者による確認作業が必要になってきます。
Raspberry Pi 5はFCCを取っているという話もありますが、実物が届いてみないことにはわからないので、ここでは「無線従事者による確認」の方法で届け出を行ってみました。
■ユーザ登録から電子証明書の取得まで
まず、総務省のWebサイトから新規ユーザ登録を行います。
メールアドレスや会社情報、氏名などを入力しってください。本当に本人かどうかを証明するための本人確認までサクサク進むと思います。個人の場合はマイナンバーカードを用いた電子署名がよさそうですが、ここでは法人で行きます。
法人の場合は商業登記電子証明書を用いた電子証明書を使うのが最も簡単です。申請ページから法務省の「商業登記電子認証ソフト」のページにリンクが張られているので、そこへ行ってダウンロードしてきます。
商業登記電子認証ソフトを起動します。
西暦2000年ごろを彷彿とさせる素敵なUI/UXのソフトですね。
まず、鍵ペアファイルおよび証明書発行申請ファイルの作成をクリックすると、情報入力画面になるので、記入します。
「※必須」と書かれていない部分は空欄で構いませんし、パスワードはこれっきりしか使わないので深く考える必要はありません。
作成実行を行うと、SHINSEIというファイルと、鍵ペアファイルと、申請書のpdfが出来上がります。SHINSEIファイルはUSBメモリに書き込むかCD-ROMに焼きます。
申請書のpdfはこんな感じなので、
足りない所を手書きで書き、SHINSEIファイルの入ったUSBメモリを持って、登記所へ行きます。
登記所では1300円分の印紙(証明書の有効期限が3カ月分の場合)を購入し、申請書に貼り付けてUSBメモリと一緒に窓口に出します。
下の写真のような紙が戻ってくるので、
ここに記載されたシリアル番号を、先ほどのソフトに入力します。
電子証明書が生成されるので、総務省のWebサイトから本人確認を進めます。
電子証明書が求められるので、先ほどのソフトで生成した.p12ファイルを送信します。
これでユーザ登録と認証は完了です。
法務局へ行ってシリアル番号の書かれた紙をもらってくるというのが、本人認証の肝になるようです。
■開設の届出
総務省の「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」のページへログインして開設の届出をクリックします。
ここで、<<機器名>>を用いた<<具体的な機能・アプリ等>>の動作試験をクリックし、
- 科学若しくは技術の発達のための実験
- 電波の利用の効率性に関する試験
- 電波の利用の需要に関する調査
に適合するような具体的な実験内容を記入します。審査されて許可・承認がされるようなものではないのですが、科学若しくは技術の発達に資するような計画を書いてください。
次に、どのような無線の規格を使うかをチェックボックスで選択するのですが、
Raspberry Pi 5は、IEEE 802.11 b/g/n/ac 2.4/5GHz とBluetooth 5.0, Bluetooth Low Energy が使えるようですが、乗っているCypress CYW43455というチップはデータシートを見ると、もっといろいろなプロトコルをサポートしているようです。
ここでは実験が目的で、設定次第ではIEEE 802.11aとか出てしまうかもしれないので、CYW43455の出せる限りのプロトコルをチェックしておきます。
シリアル番号は自分で振った値でもよいはずです。機器の製造者、機器の形式、設置場所の住所を記入します。使用開始日は届け出を行ってからすぐに使えるので当日でも構いません。無線LANを使うなら屋内にしておいたほうが無難でしょう。
もし、FCCやCEなど外国の法令に適合していて技術基準に適合するような旨の記載があれば、左側をクリックして外国の法令を記入し、完了です。
もし、外国の法令に適合する記載がまだなければ、右側をクリックします。
ここでは、無線従事者免許証を持つものが技術基準に適合するかどうかを判断することになります。利用できる資格は上のもので、1アマは使えますが2~4アマは使えません。(1アマ強い)
具体的には、使用しているチップの出せる電波の周波数や形式、スプリアス、強度などを細かくしらべていって、法令や規格の範囲内かどうかをデータシート上で確認していきます。実際に規格内の電波が出るのかどうかを測定するのが実験の目的でもあります。
そして、工事設計書というのを書きます。無線局の工事設計書のひな形は
https://www.tele.soumu.go.jp/j/download/proc/
からダウンロードできます。ひな形は実験局のものを使えばよいと思います。
どの周波数で何ワット出て、アンテナの形状からEIRPは何ワットで・・みたいなことを書いていきます。
無線LANは規格によってOFDMだったりPSKだったりQAMだったりDSSSだったりと変調方式が変わってくるし、このICは規格ごとに出力パワーが少しずつ変わってくるので、最大パワーを出したと仮定して埋めていきます。
この工事設計書を書くのが一番大変かもしれません。
それから、「確認した、電波法の技術基準の別(該当する無線設備規則の条項)」というのを書くのですが、なんのこっちゃと思うかもしれません。その欄の下に「無線設備規則の条項の番号を記入してください。(例:第49条の20第3号)と書かれているので」これがヒントとなります。第49条の20第3号というのがまさにWLAN 5Gの上のほうのことですから、その周辺を探せばWLAN 2.4Gと5GHzの下も見つかります。
これで届け出ボタンが押せるようになるので、押すと、
というメールが送られてきて、技適未取得の機器を晴れて使えるようになります。なお、利用できるのは最長でも180日で、終了後に廃棄するか無線機能を使えなくしなければなりません。終了時には必ず廃止届を出す必要があります。
まとめると、
■本人認証で必要なもの
・法人・・・本人認証で登記所に行く必要がある。USBメモリと1300円
・個人・・・マイナンバーカードとスマホでいけるはず(未確認)
■外国の認証に通っている一般的な規格品?
・FCCやCEなど外国の法令が通っていて、一般的な無線LANなどの規格品であれば左側コースでオンラインで簡単申請
■外国の認証に通っていないか、わからない
・無線従事者の確認、工事設計書の作成、準拠する無線設備規則の適示が必要
最後に。この方法が使えるのは「技適未取得の機器」に限ります。もしRaspberry Pi 5が正式に技適を取ってしまったら、この特例の届け出はできなくなります。誰かが技適を取ったとしても、技適取得前に届出しておけば最長180日まで使えますが、技適前に製造された機器なので期間終了後(廃止届出後)は無許可の状態になるので使えなくなります。
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