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2007年10月11日 (木)

難しい内容を、難しい内容のままに、やさしい言葉で話す難しさ。

 確か、そんなことを糸井重里さんが書いていたような気がするのですが。

 難しい内容を、やさしい内容に変えて、やさしい言葉で話すのは、わりあい簡単です。その段階で、難しい内容が、別のやさしい内容、つまり、分かりきった内容に変わっているのですから。既知の内容へのすり替えですね。でも、これは人気がありますよね。すでに知ってることのデ・ジャビュですから気持ちがいいんです。テレビのワイドショーなんかは、きっとこういうことだと思います。

 やさしい内容を、難しい言葉で話すのは、案外、これも簡単です。人を煙に巻きたいとき効果的ですね。あと、自分を正当化したいときに、よく使いますよね。難解な言葉を使っているけど、言ってることは、俺はあいつが気に入らないっていうことだったり。

 難しい内容を、難しい言葉で話したり、やさしい内容を、やさしい言葉で話すのは、まあ普通ですよね。難しい内容を理解するためには、難しい言葉を必死で理解しなければいけないのは、しょうがないことでもあります。そして、難しい言葉というのは、じつは話をやさしくするために作られたものであって、例えば、広告で言えば「インサイト」という言葉。英語では「洞察」。広告的には、消費者の心理洞察という意味なんですね。

 例えば、「アクロン」のコマーシャルで「♪アクロンなら毛糸洗いに自信が持てます」というコマソンがありますよね。そのインサイトは、「毛糸洗いは不安だ」なんです。「エマール」は、「♪ホームクリーニング、エマール」ですね。そのインサイトは、「うちでクリーニングみたいに毛糸が洗えたらいいのに」です。こういう例を出すと、インサイトという概念は何者なのか、広告業界以外のひとにも少しわかってくるでしょ。

 でね、このインサイトという言葉のきちんとした意味を、やさしい言葉で伝えようと思うと大変なんですね。若い広告マンにインサイトというのは、こういうことなんだよ、と伝えるのは本当に大変。でも、こういう難しい言葉は、一度覚えてしまうと、その後のコミュニケーションが案外円滑になります。哲学者と哲学者の対談なんかも、見てるほうは難解だなあと思いますが、やってるほうはその難解な用語が既知であることを前提に話すので、案外円滑なんですね。

 やはり、最も難しいのが、難しい内容を、難しい内容のまま、やさしい言葉で話すことだと思うんですね。私が本当に書きたいことの多くはそういう感じだったりするんですが、なかなかうまくいきません。難しい内容の多くは、まだ自分が解決していない内容なんですよね。その難しい内容を、そのまま、できれば、難しい言葉を使わずに、やさしい言葉で語りたい。やさしい言葉が許容する、やさしい内容ではなくて。それは難しいんですよね。その言葉は、もしかすると詩に近くなってくるのではないかとは思うんですが、私としては、そういう詩的言語ではなく、やさしく書いていきたいという欲望があるのですが、これはしんどいなあ。でもね、ブログをやりはじめて思うんですけど、ブログの言葉の中に、もしかするとその答えがあるかな、なんて思います。

 ブログは日々のログですよね。日々の思いは、現在進行形の思いですよね。その思いを正確に、日々使う言葉で記述していくこと。それは、つまりまだ未解決のことがらを、未解決なままで書いていくこと。なんとなく、私は、そんな思いで、毎日楽しく言葉を綴っています。(うーん、今日のは、やぱりちょっと分かりにくいかなあ)

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コメント

インサイト???
初めて聞く言葉だ。
大阪では、聞いた事ないな。
今度、会った時、教えてちょ。笑

投稿: BRUCE from osaka | 2007年10月11日 (木) 17:14

BRUCE from osakaさん、ども。おひさです。
そですね、またてっちりでも食いながら。笑

投稿: mb101bold | 2007年10月11日 (木) 17:47

こんばんは。またコメント書かせていただきます!

「百聞は一見にしかず」だとしても、見せることなく、いかに話をして分かってもらうかにこだわりたいということなのかな、と思いました。そして、ああ、慣用句っていうのも、意味を分かっていることを前提に使う便利な言葉なんだと、書きながら気づいてしまいました。

ブログは現在進行形というのは同感です。1ヶ月前と言っていることが違っていてもいいんだよな、と思ったのがブログをはじめたきっかけなんです。1ヶ月つづけられるか、まだわかりませんが(笑)

投稿: そうちゃん | 2007年10月11日 (木) 20:47

どもども。
「百聞は一見にしかず」にはならないことも世の中には多くて、それを描きたいという感じかも。
慣用句はそですね。便利です。
ブログ、1ヶ月と言わず、10年20年とね。何もないときでも、とりあえずなんか書いてみるという感じで気軽にやると、いいみたいですよ。

投稿: mb101bold | 2007年10月12日 (金) 22:12

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