UIディレクションのカバレッジ
タイトルでは「UIディレクションのカバレッジ」という表現をしましたが、今回はクオリティの高いUIを作るためにはどういう観点での品質管理が必要なのか、ということを自分なりにまとめてみたいと思います。
- 情報設計・レイアウト
情報設計やレイアウトには無限に選択肢があるだけに、「どんなユーザーに、どんな接触態度で、どんな体験をしてもらいたいか」というマーケティング的な視点を持っているか否かで、アウトプットに大きな違いが出てきます。
ちなみに、初めにUIを設計する際には比較的このような視点を持ちやすいのですが、既にリリースしているサービスに対峙すると、どうしても既存のUIの延長線上で改善を考えてしまいがちです。そうならないよう、UIに関わる人たちは、常に提供したいユーザー体験の理想型を意識し、そこから逆算的にUIを考える癖をつけなければいけないと思っています。「なぜこれはこうしたのか?」と訊かれたら、いつでも自信を持って自分なりの狙いを答えられることが重要です。
※ 同じ料理投稿系サービスでも、レシピ検索サービスであるクックパッドと、料理日記コミュニティであるペコリではホーム画面の構成は大きく異なっています。(クックパッド=レシピ検索や人気のレシピ、ペコリ=自分が投稿した料理写真)
- 世界観・トンマナ
モチーフ、色味、質感、サイズ感、ラベル(文言)などはサービスのイメージや世界観を構成する重要な要素となります。一般的なユーザーは、情報設計云々よりもまずはこのレイヤーでサービスのクオリティ、もしくは好みであるかどうかを判断している気がします。いくら優れた情報設計ができていても、デザインの世界観が受け入れられなければ使ってもらうことすらできません。
また、サービスの世界観はユーザーの行動を方向付けます。例えば、AmebaのGIRL’S TALKというサービスのデザインテイストはこんな感じになっています。
黒いマットな背景の中に浮かび上がる「みんなにうちあける」ボタンが特徴的ですが、これが仮にクリーンな白背景+「投稿する」ボタンだったら、おそらくユーザーの投稿内容やコミュニケーションは今とは違ったものになっていたはずです。
同サービスが多くの女性の本音を吸い上げることに成功している背景には、こういった世界観作りが寄与している面も大きいと思っています。2ちゃんねるがいつまでもデザインを変えないのも、雑多でアングラな雰囲気をキープしたいという考えがあってのことかも知れませんし、結局はここでも目的から逆算したデザインというものが大切になります。
- 触感・動き
上記2点は静的な画面を眺めていても管理できますが、実際にアプリに触った時、また触った後の動きまでは見えてきません。最終的にプロダクトの品質を上げ切るためには、この観点のクオリティチェックも必要です。
タップした際にリアクションが返ってくるか、滑らかに動作するか、ローディング絡みの処理は最適か、など意識すべきポイントはたくさんありますが、これらはある程度チェックリスト化して管理できるものです。そうやって触感や動きの作り込みを丁寧にやっていくと、最終的にストレスがなく、手に馴染むアプリに仕上がります。
※ ネイティブアプリでは、画面遷移アニメーションを設定するなどして、画面間を滑らかに行き来できないと触感が悪いと感じてしまう(左)
※ pathはアプリの至る所にリッチなアニメーションが実装されており、気持ちの良い操作感を得ることができる(右)
以上、大きく3点にまとめてみましたが、個人的にはクオリティの高いUIを作るためにはこれら全てをカバーする必要があると思っています。どれか1つの視点が欠けてもダメです。
それぞれの領域が得意なメンバーを集めれば良いのかも知れませんが、そんな理想的なチーム編成ができるケースはまずないでしょう。ですので、基本的にはプロデューサーやディレクターなどの立場の人がこれらの観点を持って、一気通貫でUIを管理できるようになるべきだと思います。
ただ、本音を言えば、UIに関わる全ての人たちにもっと自身のカバレッジを広げて欲しいという気持ちもあります(あれもこれも手を出せと言っている訳ではなく、もっと多角的な視点を持って欲しいという意味です)。いつの間にか自分で自分の職域を狭めてしまっている人が結構いるんじゃないでしょうか。