無痛分娩の普及を阻むもの

塩村あやか・参院議員
塩村文夏氏=竹内紀臣撮影
塩村文夏氏=竹内紀臣撮影

 麻酔を使って出産の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」は日本では6%(日本産婦人科医会調べ)なのに対し、米国では7割、フランスでは8割、フィンランドでは9割ある。ドイツ(3割)、イタリア(2割)のように欧米でも低いところがあり、国によってバラツキが大きいが、それにしても日本の無痛分娩の比率は非常に低い。

 私がこの問題に取り組んだきっかけは「無痛分娩の費用が高い」という声が届いたことからだった。通常の出産費用に加えて5万円から10万円が多く、20万円というところもある。事実、我が家に一番近い無痛分娩対応病院はプラス20万円だった。

 それだけではなく無痛分娩に対応する病院自体が少ない。調べていくと事実上「都市部の金銭的に余裕のある人」に偏ってしまいがちであるようだ(熊本市の慈恵病院のように、追加費用がない病院もある)。

「痛みを経てこそ母」なのか

 無痛分娩が少ない背景の一つに「出産の痛みを経てこそ母になった実感が持てるのだ」という考え方がある。無痛分娩が初めから意識の外にある女性も多い。ただ、無痛分娩という方法を知れば選択したいと思う女性も多いはずだ。海外で出産する女性も増えている。海外では無痛分娩が普通の国も多く、友人・知人からの情報で良さに気がつく人もいる。

 歯の治療では普通に麻酔をするのに、「もっとも痛い」と言われる出産で麻酔を使うことが初めから選択肢に入らないのはおかしい。

 産婦人科系の医療ではなぜか女性が痛みを我慢するのが当然になっている。不妊治療などの検査でも痛いものがあるのに、麻酔をせず「痛みに耐える」ことが当然になっていることも多い。婦人科検診でも痛いものがあるが、それが当然とされている。これも「痛みに耐えてこそ」という日本の珍文化なのではないか。なぜ、婦人科まわりだけにこんなに多いのだろうか。

対応病院を増…

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参院議員

1978年生まれ。放送作家、東京都議を経て2019年参院初当選。参院東京選挙区、当選1回。立憲民主党。