ロゴマークの暗黙知について - Webサイトの上部にリンクは必要か? -
多くのWebサイトの上部にはロゴマークやサイト名が表示されており、
HOMEに戻るためのリンクが貼られている場合が多いと思います。
サイトの上部のHOMEに戻るリンクには、どのような効果があるのか、
また暗黙知としてのユーザーの反射的な行動について、20週間のデータから考えてみます。
デザインを変更して調査
暗黙知とは
認知の過程あるいは言葉に表せる知覚に対して、(全体的・部分的に)言葉に表せない・説明できない身体の作動を指す。
GoogleやYahoo!などの大手サイト、一般のサイトでも、左上のロゴマークにHOMEに戻るリンクが貼られている場合が多く、一般化している傾向にあると思います。
5週間ごとに当ブログのデザインを変えながら、ロゴマークについたリンクにはどのような効果があるか調査しました。
既存のデザインから、いきなりロゴマークをとってしまうと違和感があると思うので、デザインの要素をなるべく変えず、デザインを変更しました。
ロゴマークのあり・なしなどが分かりやすいようにdesign A, design B, design C とします。
design B, design C の期間中にブログ記事を2記事づつ書いていますが、design Bに変更したdesign Aの月には記事を全く書いていなかったため、design Aの時に5週間でブログ記事を2記事書いている月と、design Bになる前の5週間の両方を扱うデータとして扱います。
design A
期間:4月30日から5月27日(A-1)
期間:6月28日から7月25日(A-2)
左上にロゴマークを配置し、ロゴマークからHOMEに戻れる。
design B
期間:7月26日から8月22日
左上にロゴマークを設置しない。上部にリンクを一切設置していません。
design C
期間:8月23日から9月19日
desigin B と見た目上、変更ありません。
ただ一旦下に行き、上部に戻ってきた時に、ロゴ(ホームに戻るボタン)が出るようにしています。
無意識に上部に戻っていない限り、上部にリンクの存在を分からないようになっています。
データから影響度を調べる
Google Analyticsでどの程度、落差が出たか調べます。
比較する項目は以下の通りです。
- 全体のPV
- 訪問別ページビュー
- 直帰率
- 平均サイト滞在時間
- 上位のコンテンツ 平均ページ滞在時間
- HOMEを見ている割合 【(HOMEのPV)/(全体のPV)*100】
- 新規訪問者がHOMEを見ている割合 【(新規訪問者 HOMEのPV)/(新規訪問者 全体のPV)*100】
design A-1 (4月30日から5月27日)
- 全体のPV
- 36,202PV
- 訪問別PV
- 1.45
- 直帰率
- 75.65%
- 平均サイト滞在時間
- 00:06:53
- 上位のコンテンツ 平均ページ滞在時間
- 00:15:10
- HOMEを見ている割合
- 10.02% (3,628PV/36,202PV*100)
- 新規訪問者がHOMEを見ている割合
- 6.87% (1,893PV/27,528PV*100)
design A-2 (6月28日から7月25日)
- 全体のPV
- 19,440PV
- 訪問別PV
- 1.50
- 直帰率
- 80.06%
- 平均サイト滞在時間
- 00:04:46
- 上位のコンテンツ 平均ページ滞在時間
- 00:09:31
- HOMEを見ている割合
- 13.01% (2,530PV/19,440PV*100)
- 新規訪問者がHOMEを見ている割合
- 7.95% (927PV/11,646PV*100)
design B (7月26日から8月22日)
- 全体のPV
- 45,621PV
- 訪問別PV
- 1.52
- 直帰率
- 81.03%
- 平均サイト滞在時間
- 00:02:21
- 上位のコンテンツ 平均ページ滞在時間
- 00:04:32
- HOMEを見ている割合
- 6.70% (3,061PV/45,621PV*100)
- 新規訪問者がHOMEを見ている割合
- 4.25% (1,330PV/31,239PV*100)
design C (8月23日から9月19日)
- 全体のPV
- 43,736PV
- 訪問別PV
- 1.56
- 直帰率
- 78.61%
- 平均サイト滞在時間
- 00:02:12
- 上位のコンテンツ 平均ページ滞在時間
- 00:03:55
- HOMEを見ている割合
- 10.21% (4,468PV/43,736PV*100)
- 新規訪問者がHOMEを見ている割合
- 7.29% (1,909PV/26,175PV*100)
design | A-1 | A-2 | B | C |
---|---|---|---|---|
全体のPV | 36,202PV | 19,440PV | 45,621PV | 43,736PV |
訪問別PV | 1.45 | 1.50 | 1.52 | 1.56 |
直帰率 | 75.65% | 80.06% | 81.03% | 78.61% |
平均サイト滞在時間 | 00:06:53 | 00:04:46 | 00:02:21 | 00:02:12 |
上位のコンテンツ 平均ページ滞在時間 |
00:15:10 | 00:09:31 | 00:04:32 | 00:03:55 |
HOMEを見ている割合 | 10.02% | 13.01% | 6.70% | 10.21% |
新規訪問者が HOMEを見ている割合 |
6.87% | 7.95% | 4.25% | 7.29% |
アクセス解析を見て思ったこと
訪問別ページビュー
デザインに関係なく、ページビューは順調に伸びています。
サイトのページボリュームが増えているので、相対的に訪問者のPVも増えているようです。
直帰率
デザインに関係なく、75%から80%前後に留まっています。
平均サイト滞在時間と上位のコンテンツ平均ページ滞在時間
design Aから、design B, C のデザインを変更してから、ページの滞在時間が半分以下まで落ちています。
明らかに滞在時間が低下しているので、ロゴマークだけの影響ではないような気がします。
HOMEを見ている割合と新規訪問者がHOMEを見ている割合
上部にリンクを一切設置していない design Bでは他に比べて、HOMEへの流動が約40%ほど低下しています。
同じデザインの design Cでは最初にロゴマーク(上部へのリンク)を表示していないにも関わらず、HOMEへの流動が戻っています。
この傾向は、新規訪問者、リピーター関係なく、HOMEに移動する場合、無意識に上部に戻り、ロゴマークをクリックしようとする傾向があるように思えます。
暗黙知として、ロゴマークでHOMEに戻ることが、Webユーザーインターフェイスとして機能しているケースの数字を出せたと思います。
しかし当ブログのターゲットは、Web関係者であり、Webリテラシーのある人が多く見ていると思われます。
一般ユーザーが調査対象でないため、一般ユーザーの暗黙知としての効力がどの程度あるかは量れません。
ロゴマークの暗黙知について調査していましたが、滞在時間がデザインによって大きく変わったのは驚きです。
またHOMEのアクセス数が相対的に低下しているにも関わらず、訪問別PVが増加しています。
今回の実験から、"ブログにHOMEは、本当に必要なのか?"という新しい疑問が出てきました。
HOMEに戻らせたことよりも、訪問したページ内に関連した情報を提供できるかが重要なようです。
特にブログの場合は、その傾向が強いかもしれません。
追記
ご意見を頂きましたので、上部のロゴマークについて箇条書きにします。
- 迷った時に、クリックする。
- は、ユーザーが「Webサイトを保存」した場合でも、保存したサイトのURLが分かるように、ロゴマークにリンクを絶対パスでしていた。(ソースは未確認)