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2014.10.26

成功者とジレンマ

 いろいろ調べ物をしているのだが、ああ、あいつ(またはあの会社)はこんな悪いことをしているのか、ということが分かるとする。

 だいたい判明する10の悪事のうち、表で騒ぐのは1個あるかないか、残りの9割以上は心の中にしまっておく。あとで何があるか分からないから、忘れることはない。だいたい、悪いことをする奴というのは繰り返すから。

 成功しても、だいたい連中は同じ悪事をする。金であったり女であったり。人は、うまくいったと慢心したとき、悪事を繰り返す傾向があると思う。そのかなりの部分は、子供のころから持っていたコンプレックスやトラウマが、成功によって何でも出来るという万能感、多幸感を引き金として、行動に溢れ出てくる。

 そういう悪事を指摘して、しまったと反省するケースもあれば、そうでないケースもある。開き直られることもあれば、内容証明が飛んでくることもある。一口に「自分を客観視したほうがいい」といっても、やはり人間というものは見たいものを見て、自分に「なりたい自分」を投影する。

 結局誰かの悪事を調べると言うのは、その人の生い立ちを辿る旅に過ぎない。母親から認められなかった少年時代、友達がいなくて寂しかった学生時代、己の負の感情が湧き上がって実行に移すきっかけは、たいていが金か、女で、その引き金を引くのは取り巻きだ。

 なぜ茶坊主が増えるのか? 承認されたいからだ。こうでありたい自分、でもそうでない自分、それを制限してきた生い立ちと環境がコンプレックスを生み、成功した人の心を内側から蝕む。成功は成功で終わることが少ない理由は、成功者は全員人間だからだ。

 いまはネットバブルで、たいした会社でもないのに人間関係やコネや先方へのキックバックでいい値段で売れるケースがある。成功者になったという気持ちになるかもしれないし、成功者同士の付き合いで馴れ合おうという低きに流れる人間が、立派に見える人たちの輪の中でいい気分になっている。だが良く考えて欲しい。その身なりのいい人たちは、貴殿ではなく、貴殿の財布にしか興味がないのではないか。

 情報は、必ず漏れるように出来ている。知られていないと思うことでも、意外と見抜かれていて、調べ上げられていたりもする。己に問いかけて欲しいのだが、知られても問題ないと言い切れる取引を、人間関係を、人生を、送っているだろうか。

 やはり人間、うまくやったと思った瞬間から停滞したり、酷いときには転落するように出来ている。私自身も律するよう努力する一方、いろんなものを調べるたびに、やっぱりなんかパターンができているのが気になる。

 浮かれた業界のバブル特有の現象なのかもしれん。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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