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2012.03.07

ソーシャルゲーム(オンラインゲーム)のガチャがRMTと併せ技で賭博法に抵触の可能性について(追記あり)

 ゲーム業界のジャーナリスト、新清士さんが、某方面からの情報を真正面から受け取り、聞き取り調査をしたのかどうかいまひとつ判然としないながらも鋭い指摘の記事を掲載しておりましたので、ピックアップ。あ、私は一切関係ないルートでのお話ですよ、念のため。

ソーシャルゲーム企業はリアルマネートレードの全面禁止を明確に打ち出すべき - 新 清士
http://blogos.com/article/33428/

 平たい話が、ガチャの確率が不明確で、金銭的価値を持つ「デジタル資産」であるとするならば、それがRMTによって換金できた瞬間にそれは「デジタル賭場」であり賭博の性質を満たすので、それは未認可の賭場開帳を行ったかどで賭博法違反ですよね、という非常にシンプルかつ力強いお話なのであります。

 どのくらい問題なのかというと、街角の1円ポーカー業者と同じぐらいの問題で、当然、警察的には墨付き以前の問題としてその場で摘発すべえと考えるべき問題のひとつであります。ここにいたるまでは、オンラインゲーム会社がRMTとどう向き合ってきたのか、あるいはオンラインゲーム協会が全体としての指針を取りまとめ、ゲームデータはあくまで貸与であるという図式で対応を進めようとしたものの、いわゆる「BOT利用の業者」との戦いの結末はまだ迎えていない現状があります。

 問題をこなしきれないまま、GREEやDeNAなど(mixiをのぞく)各社がオンゲ同様の仕組みでゲーム市場を牽引したことで、結果として未整理の問題が拡散してしまった、というのが最大のポイントとなるでしょうか。

行き過ぎたソーシャルゲーム GREEで不正行為の内幕
無法の「換金市場」と「射幸性」
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A90889DE1EBE2E1E0E4E4E2E0E1E2E0E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2
ソーシャルゲーム「換金市場」の実態とは、競売サイトを温床に膨張
ゲームジャーナリスト 新 清士
http://www.nikkei.com/tech/personal/article/g=96958A90889DE1EBE3E4E5E1E4E2E0EAE2E0E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;p=9694E3EAE3E0E0E2E2EBE0E4E2E7

 二週間ほど前には、上記のような非常にのんびりとした牧歌的な記事が溢れておりましたが、さて、この半月の間に何が起きたのでありましょう。

 GREEの田中さんが、いろいろとしょっぱい話をされております。単純に、GREE内のいちコンテンツがバグ利用され、アイテムが増殖させられたことに対する措置としては満額回答だろうと思います。GREEの対応は素晴らしいものであります。

グリー、禁止行為の監視強化--ドリランドの不正受け
http://japan.cnet.com/news/service/35014496/

 なお、GREEの田中さんが日経の井上理記者に乗せられて「消費者庁は問題ないと言っている」と公言したので、各方面から消費者庁に突っ込みが入り、お陰様で消費者庁も「問題なしとは言えない」とひっくり返りました。まさに、雉も鳴かずば撃たれまい、という文字通りの意味で薮蛇となりましたことをご報告申し上げます。

 RMTの課題と言う点では、もともとのオンゲにおけるリアルマネートレードは中華と結びついたり、日本国内の暴力団が組織的に行っている可能性の指摘が多々あり、ある種のRMTシンジケートのようなものが違法組織と結びついて業界全体に対する悪弊にどう結びつかないようにするのかが重要になっていました。その点では、日本オンラインゲーム協会(JOGA)の果たした役割は貢献大と言えます。

 ところが、この議論の蓄積に乗っかろうというのがGREEであり、まあそれは別にいいんだけど、例のRMTがどっさり行われた去年の8月から現在にいたるまで換金場所となっていたヤフーオークションに対して自社サービスの取引停止を申し入れたり、情報提供を打診するような行為が一度でもあったのか、というところが気になります。ヤフーオークションが泥棒市になっている現状に対して、事態が露顕するまでに適切に対応してもらえるような働きかけをGREEが行ったのかどうか。

 したがって、冒頭の新さんの記事において、パチンコ業界に代表される三店方式をヤフーオークションなどの利用により適用できるのかが課題となるわけですが、そうであったとしても、レアカードの出現確率の明示や一定時間においての返り率(出玉率)の規定を今後行うよう制限をかけていかなければパチンコレベルですら透明性を達成できないという意味で、これらのサービスへの規制は早々に行っていかなければならんのではと考えられるわけです。

 どのような形であれ、現段階ですでに賭博法違反の可能性が高いと言うことで、一日も早い是正をしなければならんのでしょうが、公取の勧告は人事の問題でどうも出そうにないのと、DeNA裁判でもご承知のとおりGREEの後ろ側には西村あさひがおられますので、そのあたりのアドバイスは商売に抵触しない限りにおいては行われているものと認識するわけですね。危機管理で済ませられる範疇においては。

 ただし、GREEかDeNAか他の業者か(mixiを含む)は分かりませんが、また問題となる抵触事項が何であるのかははっきりしませんが、そろそろ何らかの事案での摘発を考えて調査を開始している向きもございますので、個人的にはライブドア問題同様にヲッチして参りたいと考えております。はい。

(追記 23:10)

 賢い人から、以下のような指摘がありました。

[引用] ID:charleyMan いやいやいや、その理屈はおかしい。これが賭博になるならMTGや遊戯王カードやNBAカードもカードゲームは全て賭博になるじゃん。

 その通りなのです。いままで、有形のカードをパック販売して、それが古物商に流れて有価物として流通をしている場合はどうなのか、ずっとグレーのまま存在しておりました。正確に言えば、このビジネスを問題視する人がいなかったために、厳密に法解釈するまでもなくスルーされてきました。

 TCGというジャンル自体も、子供を相手にしており、「親の金で」箱買いをすることは親の認知の元で行われているだろうという目算と、現物がカードとして存在するということで、問題視する人はいなかったのだろうと思います。他方、換金可能なカードの窃盗はかねてから問題視されており、中古PCゲームと共に「買取をする業者は必ず印鑑を、未成年者の場合は保護者の付き添いを」という指導が入り、是正されて問題にならなくなりました。

 今回は、次々と未成年者が多額のガチャを回して消費者センターにコールする保護者が増え、またレイプ犯罪などの未成年者略取が一時期増加した(現在はGREEの対策がようやく功を奏して一部減少したが、なお高水準にある)こともあり、冒頭オンラインゲーム業界やトレーディングカードゲーム業界の間隙を突く形でガチャ&RMT問題が顕在化した、という認識です。

 新さんがRMTを違法とすることはできない、と記事中書いておられましたが、厳密に運用し始めるとガチャに対する総合的な規制が入るという薮蛇を恐れて、オンラインゲーム会社がRMTの違法性を最後まで追及しなかった、というのも一因です(オンラインゲーム会社が怠惰だった、という話ではありません)。ただ、この事案がここまで社会問題となったからには、何らかの制限や規制がかかるのは仕方のないことでしょう。

 問題は、ビックリマンシールの公正取引委員会の勧告にロッテが従って、ブームが去ってしまった事案と同様に、ガチャの中身を開示し確率を公表すること、ならびにゲーム世界でのアイテム発行はタイミングよく随時に行いたいという提供者側の都合で”敢えて”問題を解決に向かわせなかったことが原因になっています。

 したがって、厳密にはTCGも有価物が流通するという点で賭博法回避の三店方式気味だよねえという議論は昔からありました。突き詰めて言えば、コレクション性を高めて価値を上げていくタイプのビジネスは総じて有価換金もひとつのモチベーションですし、市場ができてなんぼという部分もありますので、致し方ない部分かなあと思います。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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