10月14日正午、タンクローリーの火災事故から73日目に首都高速5号池袋線が全面開通した。約20億円を投じて、火災の熱で損傷した高架橋の鋼桁と床版を2径間分の計40mにわたって架け替える工事は前代未聞。部分開放しながら半断面ずつ施工するという厳しい条件の下、当初の予定よりも工期を約1カ月短縮した。架け替えの施工手順と復旧までの軌跡を写真で振り返る。
首都高速5号池袋線の下り線で、タンクローリーが横転して炎上したのは8月3日のこと。事故の現場は、下り線の上に上り線が通る2層構造。いずれも長さ20mの鋼製I桁を6本ずつ各径間に架けた鋼単純桁橋だ。火災の熱で上り線の鋼桁が大きく変形し、路面が60~70cm沈んだ。
通行止めによって、首都高速道路全体の料金収入は1日当たり5000万円減少。周辺の一般道にも大渋滞を引き起こした。1日も早い復旧が“至上命令”だった。
首都高速道路会社は8月8日、被災前と同じ構造で上り線の2径間を半断面ずつ架け替える方針を決めた。まず、タンクローリーが炎上した場所から離れた東側の1車線を一時的に部分開放して、西側の3本の鋼桁と床版を架け替える。次に、部分開放する車線を東側から西側に切り替えて、東側に残る3本の鋼桁と床版を架け替える。
まずは、事故が発生した8月3日から西側の架け替えが完了した9月18日までを見ていく。
(注)以下の写真はすべて首都高速道路会社が提供。写真をクリックすると拡大して表示します
8月3日午前5時52分
事故発生
8月4日から
(1) 西側を仮支柱で支えて、東側の1車線を部分開放
上り線の鋼桁を支える仮支柱を設置しているところ。JFEエンジニアリングが手持ちの資材を提供した | 上り線の東側にある鋼桁の一部は、部分開放する前に当て板して補強した | ||
上り線の東側1車線を部分開放するのに先立ち、載荷試験をしている様子。鋼板を積んだ重さ25tのトラックを2台走らせた | 載荷試験で、トラックが通過する際の鋼桁の変位などを測定しているところ | ||
8月10日から
(2) 西側の上り線を小ブロックで撤去。橋脚を補修
8月27日から
(3) 西側の上り線の鋼桁と床版を構築。橋脚を補修
9月14日から
(4) 車線の切り替え準備
床版のコンクリートを打設してから8日後、アスファルト舗装を施した | 架け替えを終えた西側の上り線を部分開放するのに先立ち、警視庁などが現地調査しているところ | ||
9月18日午後2時、部分開放する上り線の車線が東側の1車線から西側の2車線に切り替わった |
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