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2008年 12月 30日
Malcom Gladwell "Outliers: The Story of Success" [http://www.amazon.com/dp/0316017922]
Outliersのブックレビューの続きである。 第一回はここ [http://kashino.exblog.jp/7771399/] 第二回はここ [http://kashino.exblog.jp/7771432/] 前回はここ [http://kashino.exblog.jp/7775674/] 意味のある仕事 10000時間の法則にあるような、継続的な努力を続けるためには、その仕事は意味のある(meaningful)ものでなければいけないのだ。Gladwellは意味のある仕事を次のように定義する。 ・自分の意志でハンドルできる自律的(autonomy)があること。 ・創造性や工夫が必要な複雑(complex)さがあること。 ・努力と報酬の間に直接的な関連性 (a connection between effort and reward)があること。 これはBill GatesやBill Joyが従事するプログラミングに全てあてはまり、下請け業務でないプログラミングは自律的に行うものだし、クリエイティビティが必要だ。そして、努力と報酬の間に明確な関連がある。同様に音楽活動にも、服飾縫製にも、全てのクリエイティブな活動にいえることだ。19世紀末、20世紀初頭のユダヤ系服飾縫製職人達も、日本の稲作農家達も、自分たちが意味のある仕事をしていたと意識していたからこそ、朝早くから深夜までの労働を何十年も続けることができるのだ。 問題は、このような意味のある仕事をどうすれば見つけることができ、どのようにすれば10000時間を費やすことができる環境を持つことができるかどうか、ということになる。しかし、それについてGladwellは、幸運の導きとしか述べていない。 ドンピシャな時期にスキルを活用できるか 10000時間を費やしてスキルを手に入れたとしても、そのスキルをドンピシャの時期に活用できなければ、成功することはできない。Bill GatesもBill Joyもプログラミングのスキルを、まさにパーソナルコンピューティングが離陸しようというときに、レディな状態で身につけていたからこそ、その後の飛翔ができたのだ。Joe Flomが発展するキッカケとなった、企業買収のための法的テクニックも、その当時のエスタブリッシュな法曹からは半端物のように取り扱われてきた。しかし、それにコミットすることでスキルを磨き、1970年代の金融自由化の波で企業買収が盛んになった時期を掴んで、そのテクニックを活用することで、世界第二位の法律事務所に持って行くことができたのだ。 スキルは活用するためにある。しかし、全てのスキルはそれを必要とする時期がある。その時期にキチンとスキルを発揮できるかということが、成功するためには必要である。そして、どのスキルを選択するかということは、自分の置かれた来歴(いつ生まれたか、どこで生まれ育ったか)と、継続努力をしてきたことにより決まるものだ。 偶然のキッカケを逃さず掴むことができるか 10000時間の法則に因んでGatesやJoyをみると分かるように、10000時間の継続的努力を続けるためには、偶然のキッカケをキチンと掴むことが大切であることが分かる。Gatesは、通っていたLakesideスクールのコンピュータクラブ、Washington大近くに住んでいたということ、そして空白のマシンタイムというように、偶然のキッカケを掴んでいるのだ。またJoyにしても、Michigan大学を選択したこと、ホストコンピュータのバグというように、偶然のキッカケが10000時間の継続的努力をサポートできるような決断をし、そのような運を掴んできているのだ。これらの偶然のキッカケを逃さず掴んでいかないと、10000時間の法則を実現できないし、人より秀でたスキルを持つことができないのだ。 改善策 Gladwellは先天的に決まってしまう環境についていくつかの改善案を提示している。いつ生まれたかによってマタイ効果が効いてしまうことについては、複数回のスタート時期を設けるようにするべきだといっている。ホッケーリーグの例であれば、ドラフトを年二回にする、つまり1月生まれを筆頭とするグループと7月生まれを筆頭とするグループの二つの優秀なリーグを抱えることにより、有能な選手を二倍抱えることができるという案である。 どこで生まれたかによって、継続努力のエートスが決まってしまうということについての改善案については、KIPP(Knowledge Is Power Plogram)スクールと呼ばれている公立中学校の紹介をして、必ずしも家庭環境が良くなくても、学校教育によって継続的な努力をするエートスを子供に身につけさせることができるといっている。 自らの来歴 最後の章においてGladewllは自分の来歴として、祖母の話にも触れ、偶然のキッカケと継続的な努力が自分の母を形作り、そしてそれが自分をも形作っているというように述べている。この本はその意味で、Gladwell自身のインナートリップでもあるのだ。ただし、それだからこそ前二作よりもインティミットな記述となってしまって、各サイトの書評を見る限り、従来からのGladwellファンがこの本を敬遠する理由にもなっているようだ。 僕個人としては、この本の方が前2作よりも内的な入り込み度が大きかった。それは、19世紀末NYのユダヤ人服飾縫製業界のアントレプレナシップの話に、自分の来歴と共鳴して深く感じ入ったためである。この本を読むことによって、なぜ父母が朝から深夜に渡るまで繰り返しの労働し続けたのか、なぜ父が不況期なのにサラリーマンを辞め自営という不安定な道に入っていったのか、その理由がわかったのだ。それは意味のある仕事をしていたし、したかったからだ。人に使われ、責任が分割した役人、サラリーマン的な仕事には自律性を感じないし、創造性を発揮することができないし、何より努力と報酬の関係が明らかでないからなのだ。 さて、多少長くなったが、以上がOutliersの概説である。この本は掻い摘んで言うと、自分の来歴を受け入れた上で、継続的努力のエートスと実際の継続的努力を推奨する本であり、その継続的努力により"Outliers"が生まれるということを、唱道する本だといっても過言ではない。 この本の主張部分については、今後も科学的な検証が望まれるし、個人的にはそのことを継続的にウォッチするつもりである。しかしそれ以上に、この本を読んだことで、これからも継続的な努力をすることが間違っていないことを認識したし、自分の子供にもそのようなエートスを身につけさせることが、僕の彼らへの義務であることを強く意識することができた。この本は、子供を育てる立場にいる親・教師・指導者に遍く読んでもらい、自分の頭でGladwellの論じるテーマについて考えてもらいたいと思う。 超オススメである。
by yutakashino
| 2008-12-30 14:28
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