メインコンテンツにスキップ

人間を人工冬眠させて火星に送る?NASAが火星有人探査計画の一環として、コールドスリープを検討中

記事の本文にスキップ

42件のコメントを見る

著者

公開:更新:

この画像を大きなサイズで見る

 オバマ大統領の下で2030年代半ばの有人火星飛行実現というビジョンが提示されているが、そのコストを大幅に削減する画期的な方法として、NASAでは人工冬眠が検討されているらしい。人工冬眠には既存の医療技術が利用され、宇宙飛行士の代謝機能を低下させることができるそうだ。目が覚めたらもう、そこは火星とか・・・

 米アトランタに拠点を置くスペースワークス・エンタープライジズ社の航空宇宙工学者マーク・シェーファー氏によれば、医療に応用可能な冬眠の理論は1980年代頃に提唱され、2003年からは重傷患者の治療にあたって必要不可欠な技術となっている。大きな病院なら大抵の場合、医療用冬眠を患者に適用する手順を有しており、治療がなされるまで命をつなぎ止めるうえで欠かすことができない。

広告の下に記事が続いています
医療現場で使用されている冬眠システム The body cooling system

 この手法に点滴による栄養補給を組み合わせれば、宇宙飛行士を冬眠させたまま最短で片道180日を要する火星まで送ることが可能となる。

 ただし、現在のところ、医療の現場で患者が冬眠状態でいられるのはおよそ1週間が限界だ。これは医療においては7日以上冬眠を保つ必要性がないためであるが、火星有人探査計画においてはこの期間を90日、その後は180日へと延長させなくてはならない。

この画像を大きなサイズで見る

 コスト面での恩恵は非常に魅力的だ。調理場や運動器具のほか、水、食料、衣服といった物資をこれまでより減らし、宇宙船も小型化できる。そうした小型化可能な設備の中には、骨や筋肉の減少を防ぐため回転して低重力を発生させる居住空間も含まれる。

 NASAが出資したスペースワークス社の研究では、冬眠中の乗員のスペースは5分の1、食料や水などの消耗品の量は3分の1に削減可能であるとしている。基準ミッションでは、全体量を約440トンから220トンまで削減できるそうだ。これは重量物打ち上げロケット1機分にも相当する。

この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る

 この人工冬眠の研究では、入眠と覚醒の双方が実験されている。入眠については、鼻孔から冷却剤を吸入することで行われるが、これはどうやらあまり快適なものとは言えないようだ。しかし、外部の冷却パッドを用いた方法よりも望ましい方法だ。と言うのも、身体の外部から冷却した場合、震戦や細胞組織損傷の危険性が高まるからだ。

 このライノチル・システムで冬眠状態となる31.6~33.8度まで体温を下げるには6時間もかかる。一方で、冬眠中の人間を目覚めさせるには、冷却剤の循環を止めるだけでいい。ただしスペースワークス社では、緊急事態に備えて覚醒を促す加熱パッドも研究されている。

 また乗員全員を冬眠させる代わりに、2、3日の起床期間と14日間の冬眠期間というスケジュールを組み、乗員のシフトをずらすという手段もある。こうすれば常に1人は起きており、実験や機内のメンテナンスに当たることができるのだ。

この画像を大きなサイズで見る
via:io9・原文翻訳:hiroching

 シェーファー氏の説明によれば、人工冬眠は心理面での利点もあるそうだ。180日間狭い母船の中に閉じ込められるよりは、眠っているうちに目的地へ到着した方が気持ちも楽だろう。

 長期間、安全に人工冬眠を行うにはまだまだ今後の研究が必要であるが、これまでのところ結果は上々だ。健康面でも、技術面でも今のところ大きな問題はないそうだ。

広告の下にスタッフが選んだ「あわせて読みたい」が続きます

この記事へのコメント 42件

コメントを書く

  1. 確かに180日狭い宇宙船の中はキツイな。
    冬眠失敗→永眠とかにならないように、確実な研究をオナシャス!

  2. 無重力空間での筋力低下は著しい。同様に寝たきりというのも筋力低下の要因となる。それで火星に着陸して活動できるのだろうか? 「宇宙空間における長期滞在」という観点では、コールドスリープが解決できる問題はまだ限定的である。ハードSFファンにとっては是非とも実現してほしいものだが。

  3. 特別な装置が無くても熊なら毎年やっている。
    訓練された熊を宇宙飛行士にしたほうが早そう。

  4. くまもんには冬眠してる時
    筋力が低下しないと聞いた事がある
    瞬時に活動する為遺伝子にそう組み込まれてるらしい
    くまもんの冬眠遺伝子を見つけ出して
    人間に移植したほうが安く済むかもね
    冷凍による冬眠は危険な感じがする。
    あとどちらにせよ宇宙船には必ず1人は
    起きてるクルーが安全性状、必要だろうね

  5. 火星まで片道180日じゃ着かないだろ
    なんか別の数字と間違ってないか

  6. コールドスリープと聞いて真っ先にPeeping Lifeのオタク君を思い出した

  7. そこまでして生身の人間を火星に送り込む意味があるのかな?
    生きて帰ってこれる可能性も低いというのに。

  8. 眠るのに冷やすって、寝冷えになりそうで違和感がある。体温が33程度になったら寒くて眠れそうもない

  9. 宇宙ドラマみたいに物質転送や航行時間短縮装置も
    ないと人工冬眠だけでは厳しいと思う

    1. ※15
      他の生命体は銀河間を旅行すらしてるというのになにをいう
      目覚めたら100年経ってて、地球に戻ったら文明や知識についていけなくてサル扱いは嫌だ

  10. 情報を収集するだけなら遠隔操作できる高度なロボットでもいいと思うけどなw
    人間が行く必要性は無いと思うがw

  11. 倫理的にもパイロットは火星から帰って来なきゃならないんでしょ?
    行きはまだマシで帰りが怖い

  12. 長期の宇宙旅行にコールドスリープ技術と
    高度なVR技術は欠かせないだろうな

  13. 目が覚めてから正常に活動出来るようになるまで
    かなり時間がかかりそう…

  14. 一手でもトラブルがあったら恐ろしく悲惨な状態になるよな
    自決用の手段だけは備えておいてやって欲しいものだ

  15. 実はもう火星への移住は行われているのである
    既に、数万いや数十万人はいるであろう
    それは米国地下基地にあるテレポーテーション装置からわずか30分で火星へいける
    オバマは若い頃、既にいっているのである
    信じるも信じないもあなた次第

  16. いわゆるコールドスリープと違って心臓まで止まるわけじゃないみたいだな
    文字通り「冬眠」が近いのか

  17. それで過酷な火星の任務から、安穏とくらす地球人に八つ当たりして、
    火星の騎士達が憧れの住まう青い星に攻めて来るんですね
    元々同じ地球人とはいえ、住むところが変われば、国や共同体の意識も変わる 
    多国籍の人々が打倒地球で一つに結びついてしまうんだ
    技術的条件が揃えば 星間戦争ってきっと思ったよりも簡単におきてしまうんだろうなぁ

  18. 高重力と仙豆を用意して、ずっと鍛え続けたほうが有意義じゃないか?

  19. ヒキニートならゲーム与えとけば180日ぐらい狭い空間でも余裕だ
    ただ使えるかどうかは別だ

    1. ※29
      映画「猿の惑星」(1968年公開)のマリアン・スチュアート中尉(ダイアン・スタンレー)です。

  20. その前にNASAは月と火星にある巨大人工物について真実を公表せよ

  21. 180日間寝てたとして
    その180日間分歳をとるということになるのかね?
    火星に行くだけで精一杯だな

  22. コールドスリープを実現させるには、組織が破壊されるのを何とかしないといけないな。あと心臓をどうするか・・・・。

  23. 栄養が足りていれば冬眠中に筋力が低下しないのは
    熊の冬眠を見ればわかる気がするが
    老化を遅らせることは出来るのだろうか?

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。