コラム:米利下げ局面、終了が視野に 来年の利上げ排除できず

コラム:米利下げ局面、終了が視野に 来年の利上げ排除できず
12月18日、米連邦準備理事会(FRB、写真)の利下げ局面終了がにわかに視野に入ってきた。2022年1月、ワシントンで撮影(2024年 ロイター/Joshua Roberts)
[オーランド(フロリダ州) 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の利下げ局面終了がにわかに視野に入ってきた。来年の利上げという180度転の政策転換も、もはや可能性を排除できない。
FRBは17─18日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を予想通り0.25%ポイント引き下げ、4.25─4.50%とした。「タカ派的な利下げ」というものが本当にあるとすれば、今回の利下げがまさにそうだろう。
市場は直ちに大きく反応した。ドルは2年ぶりの高値に急騰し、株価は急落。米国債利回りは急上昇した。最近は市場がオーバーシュートすることは珍しくないが、FOMC声明を見ても、パウエルFRB議長の会見を聞いても、こうした値動きを裏付ける根拠は山ほどある。
まず、利下げは全会一致の決定ではなかった。クリーブランド地区連銀のハマック総裁が反対票を投じた。パウエル議長も今回の25bp利下げが最近の決断よりも「きわどい決定」だったと明かした。パウエル氏は金融政策の「景気抑制度合いが大幅に低下」し「中立に大きく近づいた」との認識も示した。
さらにFOMCの2025年のインフレ予想は2.5%と、前回の2.1%から大きく上方修正された。長期の中立金利見通しは6年ぶり高水準の3.0%に引き上げられ、来年の利下げ回数の予測も2回に半減された。
今回の予測では依然として来年50bp、26年末までに計100bpの利下げが見込まれているが、市場が現在予想しているのは来年の35bp利下げのみだ。
つまり、市場は事実上、FRBの虚勢を見抜いているのだ。
最大の原因はFRBの25年の見通しにうかがえる矛盾したロジックにある。インフレ率が従来の予想を大幅に上回ると予想しておきながら、依然として利下げを計画しているのだ。これはパウエル議長が会見で認めたように、極めて難しい問題と言える。
経済成長と雇用が急減速しているのであれば、FRBのスタンスはまだ正当化でき、市場もそれほど違和感を感じないのかもしれない。だが、現実はそうではない。経済成長、失業率ともFRBの予測はほとんど変わっていない。経済活動と労働市場は26年まで好調を維持すると予想されている。
<何も排除できない>
パウエル議長のハト派転換からまだ1年しか経っていないが、市場はすでにタカ派転換のリスクを考え始めている可能性がある。
アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏は、来年の利上げの可能性をいち早く指摘した市場関係者の1人だ。同氏は米経済が力強く、金利を高水準に維持する必要があると主張しているが、18日の市場の値動きは、そうした見方を一段と強めるものだ。
スロック氏はFOMC後、「来年の利上げの確率は現時点で40%だと考えている」と述べた。
これは決してとっぴな予想とは言えない。金利市場はFRBが次回会合から相当期間、金利を据え置くと見込んでいる。次の25bp利下げが完全に織り込まれているのは来年9月以降だ。
もちろん、特にトランプ次期政権が来年1月に発足することを踏まえれば、9月までにはさまざまなことが起こり得る。公約に掲げた通商政策や関税が実行に移されれば、インフレが過熱し、FRBの政策運営は一段と複雑化する。
エコノミストのフィル・サトル氏は、これがFRBの背中を押すのではないかと指摘。「FRBの次の政策変更が7月の利上げになるとの見方を変えていない。関税の導入で第2・四半期にインフレが進行する」と述べた。
確かに、金融市場はFRBの利上げを明示的には織り込んでおらず、パウエル議長も来年の利上げはありそうにないと述べている。
だが、今年9月の利下げ開始以降、ドルは8%値上がりし、国債利回りは80bp上昇している。これは一部の市場関係者がすでに利上げを見越していることを示唆している。
来年の利上げの可能性について質問されたパウエル議長が語ったように「この世界では物事を完全に決めつけたり、排除したりすることはできない」。
ここ数年、FRBの政策を巡る市場予想が大きく外れてきたことを踏まえれば、予断を持たないというのが賢明な姿勢ではないだろうか。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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Jamie McGeever has been a financial journalist since 1998, reporting from Brazil, Spain, New York, London, and now back in the U.S. again. Focus on economics, central banks, policymakers, and global markets - especially FX and fixed income. Follow me on Twitter: @ReutersJamie