コラム:米株バブル崩壊に警戒感、欧州株は避難先にならず

コラム:米株バブル崩壊に警戒感、欧州株は避難先にならず
 ここ数週間、米国株のバリュエーション高騰に対する警戒感が高まっており、市場は調整の機が熟しているのかもしれない。投資家は米国株よりも割安な欧州株に資金を移動させる可能性があるが、米国株が大幅下落すれば欧州も引きずられるため、安全な避難場所とはならないだろう。12月5日、独フランクフルト証券取引所で撮影(2024年 ロイター)
[12日 ロイター] - ここ数週間、米国株のバリュエーション高騰に対する警戒感が高まっており、市場は調整の機が熟しているのかもしれない。投資家は米国株よりも割安な欧州株に資金を移動させる可能性があるが、米国株が大幅下落すれば欧州も引きずられるため、安全な避難場所とはならないだろう。
米国株のバリュエーションは、ほぼ全ての尺度で見て限界に達しつつある。S&P500種総合指数(.SPX), opens new tabの過去12カ月の利益に基づく株価収益率(PER)は27.2倍と、ハイテクバブルのピーク時に付けた29.9倍に近づいている。株価純資産倍率(PBR)は既に2000年初めの5.2倍を超え、過去最高の5.3倍に達している。
バリュエーションは何カ月も前から高かったが、現在注意すべきは米国株投資家の極端な強気ムードだ。米連邦準備理事会(FRB)の資金フローデータによると、米国の家計金融資産(不動産を除く)に占める株式の割合は現在36.0%と、2000年春の31.6%を大幅に超えている。
コンファレンスボードが実施した直近の消費者信頼感月次調査では、米国株に対して楽観的な米世帯の割合が、調査開始以来の37年間で最高となった。
これらを総合すると、プロ投資家の間で米国株が調整局面を迎えるとの懸念が高まっているのも無理はない。
This chart shows the percentage of U.S. households that believe U.S. equity prices will rise, from January 1990 to November 2024
<避難場所は無い>
顧客のポートフォリオを分散したいファンドマネジャーは、米国株ほど高くない欧州株に目を向けるかもしれない。何しろ、PERで見るとSTOXX欧州600指数(.STOXX.), opens new tabはS&P500より47%、PBRベースでは61%もそれぞれ割安になっている。
欧州株のファンドマネジャーの一部は、米国株の下落を待ち望む様子を見せている。そうなれば自らのファンドに資金が流入すると期待してのことだ。
しかし、そうしたファンドマネジャーは自分が何を望んでいるのか注意した方がいい。
米国株が大幅下落すると、米国の投資家は株式から資金を引き揚げて、より安全な資産に移動させる傾向がある。ただ同時に、外国株のエクスポージャーも減らすのが普通だ。
過去40年間、米国株が下落した局面で、米投資家は過去12カ月間に比べて欧州株の売りを平均約25%増やしている。多くの米投資家は母国市場よりも外国株の方がリスクは高いと考えているため、相場下落時には自国バイアスが一段と高まり、こうした結果になるのだろう。
米投資家による欧州株の保有割合が低ければ、こうした資金引き揚げは大きな問題にならない。しかし現状はそうではなさそうだ。米財務省のデータから私が推計したところでは、米投資家の欧州大陸株保有比率は2012年の約20%から、23年には30%前後に上昇している。同期間に、米投資家による英国株保有比率は25%から33%に上昇したと推計される。
This line chart shows the U.S. ownership of UK and European stocks from 2012 to 2023
欧州市場で米投資家の存在感が高まっているということは、米投資家が欧州株の行方を左右する要因になったことを意味する。米投資家による潜在的な資金引き揚げ規模は現在、非常に大きくなっているため、欧州投資家のポートフォリオが同時に動いたとしても相殺できなくなっているのだ。
実際、FRBが資金フローデータの収集を始めた1980年からのデータに基づき、米国と欧州の投資家による売買を差し引きしてみると、米国株が下落した際、欧州株からの純資金流出は過去12カ月間に比べて平均34%増えている。
例えば2000年から03年にかけて欧州株は50%、S&P500は46%下落したが、これは米投資家がハイテクバブルの影響の有無にかかわらず全ての株式市場から資金を引き揚げたことが少なからず作用した結果だ。
2024年現在、米投資家による欧州株の保有比率は10年前よりも高まっており、2000年に比べればなおさらだ。従って、米国株が下落した場合の欧州市場への波及度合いは、当時より現在の方がずっと大きいだろう。
「米国がくしゃみをすると世界が風邪をひく」という格言は、株式市場においてかつてないほど真実味を増しているようだ。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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