コラム:SNSへの懸念でフィーチャーフォン人気復活、スマホにまさかの競合相手

コラム:SNSへの懸念でフィーチャーフォン人気復活、スマホにまさかの競合相手
 12月19日、 スマートフォン・メーカーにまさかのライバルが登場しそうだ。写真はノキアのフィーチャーフォン。ロンドンで行われた発表会で2018年2月撮影(2024年 ロイター/Peter Nicholls)
[ロンドン 19日 ロイター Breakingviews] - スマートフォン・メーカーにまさかのライバルが登場しそうだ。SNSが若者に及ぼす影響が懸念され、昔懐かしいノキアブランド(NOKIA.HE), opens new tabのフィーチャーフォンの需要が高まっているのだ。アップル(AAPL.O), opens new tabやサムスン電子(005930.KS), opens new tabがより安全なスマホを提供できなければ、競争に負ける可能性がある。
フィンランドのノキアはかつて、世界一の携帯電話機メーカーであり、市場シェア40%近くを誇った。しかし自前でスマホのヒット作を出すことができず、市場支配は崩れた。今ではノキアはルーターやアンテナなど通信ネットワーク設備のメーカーとなっている。2016年にはノキアブランド端末の製造権をHMDグローバルに売り叩いたが、HMDは現在、予想もしなかったフィーチャーフォンの需要復活によってその果実を得ようとしている。
子どもたちがフィーチャーフォンのビンテージ感にひかれているわけではない。しかし保護者らは、SNSアプリを搭載したスマホよりもガラケーの方が中毒性が薄いことに気付き始めている。2023年に米国の保護者を対象に実施した調査では、67%がスマホの過度の利用を、子どもの健康を巡る懸念材料のトップに挙げた。
販売データを見ると、ガラケーの購入は増える傾向にある。コンサルタント会社CCSインサイトによると、2024年の英国でのガラケー販売台数は約45万台と、昨年の40万台から増えた。西欧でのガラケー販売は2023年に4%増えて2億1500万台となっている。
インターネットの安全性を巡る懸念はさらに顕著になっているため、この数字は今後増えそうだ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究員らによると、7カ国に1国が最近、学校での児童のスマホ利用を制限または阻止する政策を導入しており、同様の政策を検討中の国も多い。
オーストラリア議会は最近、16歳未満の子どもによるSNS利用を禁じる法案を可決した。10月には米国の33州が、フェイスブックやインスタグラムを擁するメタ・プラットフォームズ(META.O), opens new tabが若者のメンタルヘルス(心の健康)危機を煽っているとして、同社を相手取って訴訟を起こした。
サムスンやアップルのような企業にとって、これは長期的な試練になるだろう。アップルは年間売上高の半分以上をスマホ「iPhone」から得ている。中国の小米科技(シャオミ)(1810.HK), opens new tabなど同業他社との競争により、増収のペースは落ちている。新たな携帯ユーザー群は、メンタルヘルスへの影響を心配してスマホを買わなくなる可能性もある。
A line chart showing the number of smartphones sold per company in a given year, and estimates for the next few years.
これらのスマホ巨大企業は、対応を選ぶことができる。あくまで自社製品のメリットを主張して悪影響を否定するか、それとも方向転換して年齢にふさわしいスマート端末を創造するかだ。子どもが安全にネットを使えるよう、親がスマホを管理するためのアプリは既に数多く出回っている。しかし設定と監視に手間がかかる。もっとシンプルな代替手段が出てこない限り、フィーチャーフォンが復活を果たすことになりそうだ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。