焦点:宇宙にゴールドラッシュ到来か、「水確保」が課題に

焦点:宇宙にゴールドラッシュ到来か、「水確保」が課題に
11月21日、宇宙で鉱物資源を採掘するという発想は、もはやサイエンス・フィクションではなく、商業的に現実味のあるものとなりつつある。写真は小惑星ベスタを目標とする無人探査機のCG映像。2012年8月にNASA提供(2013年 ロイター)
[ロンドン 21日 ロイター] -宇宙で鉱物資源を採掘するという発想は、もはやサイエンス・フィクションではなく、商業的に現実味のあるものとなりつつある。
米国のベンチャー企業は、3年以内に小惑星を対象にした調査に乗り出そうとしている。小さな小惑星でさえ、数百年分のプラチナや金などの鉱物資源需要をまかなえるとの見方もある。
ただ多くの鉱物を宇宙から地球に持ち帰る手段がないため、企業は宇宙空間で燃料を補給したり、火星の居住区建設に向けて支援を行ったりするために、宇宙の鉱物資源を活用する方針だ。
宇宙には金のような資源があるかもしれないが、この新ビジネスにかける投資家が注目するのは水を確保できるかどうかだ。NASAは10年以内に小惑星に宇宙飛行士を送る計画を立てているほか、2030年代に火星へと飛行士を送る計画も進めており、この産業に対する政府機関の見通しは明るい。
小惑星での資源採掘を狙う米ベンチャー企業のディープ・スペース・インダストリーズ(DSI)は、2016年に小型の衛星を打ち上げ、調査に適した小惑星を探す予定だ。小惑星に含まれる水素と酸素を使ってロケットの燃料を再補給できるようにすることが最優先の課題となっている。
また別の米ベンチャー企業プラネタリー・リソーシズも同年、小惑星探査を目的とした宇宙船を打ち上げることにしている。同社の共同創設者エリック・アンダーソン氏は「小惑星は手の届くところにある太陽系の果実だ。小惑星に向かうのも、そこから帰ってくるのもそれほど難しくはない」と語った。
<水素と酸素>
一方、地球上に落下してくる隕石にも、プラチナやロジウム、イリジウムや金などの貴重な金属が豊富に含まれている。プラネタリー・リソーシズによると、プラチナを多く含んだ直径500メートルほどの小惑星なら、地球にある白金族金属の全備蓄を上回る分量を含有している可能性があるという。さらに鉄鉱も宇宙の方が豊富に存在するとした研究結果もある。
調査会社バーンスタインによれば、火星と木星の間にある直径約200キロメートルの小惑星「プシケ」にはニッケルと鉄の合金が多く含まれている可能性が高く、これは現在人類が必要とする量の数百万年分に相当する。
ただ専門家は、これらの資源を地球に持ち帰るためのコストや技術的な面が問題だと指摘する。小惑星での資源採掘は、将来の宇宙旅行のために役立てられるというところに真の価値があり、金属と同様に水素と酸素の存在も魅力的だと言える。
水素と酸素が化合して水を生成する時に生まれるエネルギーは、ロケットの推進力となる。小惑星で見つかった化合物に水素と酸素が含まれていれば、火星やそれ以上離れた場所に向かう際に燃料を補給する基地を建設したり、衛星の寿命を延ばすための中継地を作ったりすることができる。
DSIの取締役リック・タムリンソン氏は、「われわれはいずれ、宇宙での『オアシス』のような存在になるだろう。それは空気や燃料を提供できる場所で、言うなればガソリンスタンドのようなものだ」と述べた。
<宇宙で燃料補給>
DSIは2016年初めに「ファイヤーフライズ」と呼ばれるカメラを打ち上げる予定で、撮影した写真によって科学者が小惑星の構成要素を見極められるようになるという。同社のデービッド・ガンプ最高経営責任者(CEO)によれば、第一段階は約2000万ドルのコストがかかる見込みだという。
その1年後には、より大型の宇宙船を打ち上げ、2─3年のミッションで小惑星に着陸してサンプルを持ち帰る予定だ。中でも最もドラマチックなのは、この大型宇宙船で小惑星をキャッチして軌道を変え、2021年までに地球の周回軌道上に乗せるという計画だ。DSIは宇宙に建造物を造るため、燃料の生成のほかニッケルと鉄の採掘を行う方針で、ガンプCEOは「もし宇宙で資源を作り出すことができれば、火星探査を行うNASAにとってもコスト削減につながる。すべてを地上から打ち上げるには多くの費用がかかるからだ」と述べた。
一方、プラネタリー・リソーシズは、地球と月の間で小惑星を研究するため、宇宙に望遠鏡を打ち上げることにしている。その後は、より遠くにある無数の小惑星のデータを集めるため、レーザーを搭載した宇宙船も打ち上げる予定だ。
同社のアンダーソン氏は、「われわれは2020年までに宇宙で小惑星の資源を加工することができるようになっており、宇宙空間で初の燃料補給基地ができているはずだ」と語る。
小惑星探査は、利益を生み出すという点で投資家の注目を集めているが、一方でこのビジネスは全人類にとっても関係があるものだ。
かつて地球では、大型の小惑星が衝突したことによって起きた気候変動で恐竜が絶滅した可能性があり、NASAでは将来こうしたことが再び起きるのではないかと真剣に頭を悩ませている。
鉱山技師でエコノミストのブラッド・ブレア氏は、「人類が生き残るためには小惑星の問題に取り組まなければならない。なぜなら地球を死の星にしてしまうほどの大きな小惑星は、統計的に見ていつか必ずやってくるからだ」と語った。
(原文執筆:Susan Thomas、翻訳:梅川崇、編集:宮井伸明)

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