消費増税点検会合2日目、予定通りの実施に賛否両論

消費増税点検会合2日目、予定通りの実施に賛否両論
8月27日、政府は来春に予定している消費税率引き上げの是非を判断するため、有識者から意見聴取する「集中点検会合」の2回目を開いた。2月撮影(2013年 ロイター/Shohei Miyano)
[東京 27日 ロイター] - 政府は27日夕、来春に予定している消費税率引き上げの是非を判断するため、有識者から意見聴取する「集中点検会合」の2回目を開き、消費増税が経済に与える影響等について「経済・金融」をテーマに議論した。
首相のアドバイザーで増税への慎重論を展開してきた浜田宏一・内閣官房参与(イェール大学名誉教授)が引き上げ時期の1年先送りを主張したほか、3人が慎重姿勢を示した。他方で、熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミストら4人が予定通り実施すべきと主張するなど、予定通りの実施に対する賛否がきっ抗した。
浜田氏は足元の景気情勢について、最終判断の焦点として注目された4─6月期の実質国内総生産(GDP)2.6%は「力不足だ」とし、予定通りの増税は「アベノミクスの挫折を招く可能性を持つ大きな賭けだ」と警告。現行5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる増税案の代案として、「それぞれ1年ずつ延長する」ことを求めた。さらに、「小刻みな増税が技術的に可能なら、14年から毎年1%ずつ引き上げを行う」代替案も主張し、予定通りの引き上げに対して慎重論を展開した。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の片岡剛士氏も政府が予定している2段階引き上げには「合理的な根拠はなく、十分な検討が必要」と慎重な対応を求めている。景気の現状は「本格回復」とは言えないとし、予定通りの消費増税を織り込んだ2014年度の実質経済成長率はゼロ%台と試算。「この数値は対外経済の悪化といったリスクが生じた場合、容易にマイナス成長となり得る」と危機感を示し、消費増税は「デフレからの完全脱却を果たした上でも遅くない」と先送りを主張している。
また、クレディ・スイス証券のチーフエコノミスト、白川浩道氏は「早期の消費税大幅増税は日本経済のデフレ脱却の確率を低下させるリスクがある」とし、代替案として「小幅で連続的な増税は考慮に値する選択肢」と主張した。
宍戸駿太郎氏(国際大学・筑波大学名誉教授)は増税不用論を展開。消費増税は「数年延期し、完全雇用達成後に検討を再開」すべきとした。長年の構造デフレ脱出には、より大胆な財政・金融シミュレーションに基づく成長戦略が不可欠で、その結果、財政再建は自動的に達成されると主張。消費増税は「デフレ再来の可能性」があると警戒し、先送りによる金利暴騰やインフレ悪化、円の暴落の恐れは「全くの杞憂(きゆう)」と反論している。
消費増税による景気腰折れを懸念する「リフレ派」が増税先送りなど慎重論を展開する一方、予定通りの実施を求める有識者らは、足元の景気情勢を踏まえれば、増税による反動減に耐え得るとして、財政の信認が崩壊した場合の市場への影響などに懸念を示した。
大和総研のチーフエコノミスト、熊谷亮丸氏はアベノミクスの効果によって「日本経済は着実な回復が予想される」とし、「消費税増税は十分可能」と主張。国際金融市場では、日本財政の持続性に対する慎重な見方が強まっている点も指摘し、消費増税が見送られた場合は「海外投資家が決められない政治に大きな失望感を抱く恐れ」があるとしている。その上で、消費増税による景気への悪影響を緩和するため、1)住宅投資・耐久財消費の激変緩和措置、2)給付金、3)投資減税・法人税減税、4)賃金引き上げ・雇用増を実現した企業への減税、5)真に必要性が高い分野での公共投資──の必要性を訴えている。
東大大学院教授の伊藤隆敏氏も予定通りの消費増税に伴う景気の落ち込みは「軽微」とし、「増税とデフレ脱却は両立する」と指摘。消費増税の引き上げは予定通りに行うべきと主張している。仮に消費増税の計画を修正する場合は、法改正など「時間と政治的エネルギー・コストの方が大きい」とし、デフレ脱却まで先送りすれば「金融・財政同時引き締めのリスクが高い」と強調。さらに景気への影響を軽減するには補正予算編成など対応策もあるとの見解を示し、「今は消費税率引き上げのタイミングとスピードを議論すべき時ではなく、第三の矢(成長戦略)の実現を議論すべき」と訴えた。
このほか、BNPパリバ証券の投資調査本部長、中空麻奈氏は社会保障・税一体改革の一環として、消費税率の引き上げの徹底を主張。「2段階で2015年までに10%に引き上げる予定通り」のやり方に従うべきとした。1%ずつの小刻みな引き上げでは「実体経済が支払うコスト」が大きくなると反論。予定通りの実施に向け、低所得者層への配慮のほか、投資減税や住宅取得者向け優遇措置など景気下振れ抑制策の同時実施を提案した。
三菱総合研究所チーフエコノミストの武田洋子氏は「消費増税に伴う景気後退リスクと、見送りによって財政の信認を損なうリスクをてんびんにかければ、後者が重い」として、先送りによる財政信認の問題に警告を発し、「消費税率引き上げは粛々と実施すべき」と同調した。
出席者は、伊藤隆敏・東京大学大学院経済学研究科教授、稲野和利・日本証券業協会会長、片岡剛士・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員、熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミスト、宍戸駿太郎・国際大学・筑波大学名誉教授、白川浩道・クレディ・スイス証券チーフエコノミスト、武田洋子・三菱総合研究所チーフエコノミスト、中空麻奈・BNPパリバ証券投資調査本部長、浜田宏一・内閣官房参与(イェール大学名誉教授)の9人。

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