日経1万4000円は天井か通過点か、ドル100円突破がカギ握る

日経1万4000円は天井か通過点か、ドル100円突破がカギ握る
5月7日、日経平均が取引時間中としては約4年11カ月ぶりに1万4000円を回復した。都内で撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 7日 ロイター] 日経平均<.N225>が取引時間中としては約4年11カ月ぶりに1万4000円を回復した。
連休中の欧米株高や円安進行など外部環境の改善を背景に主力輸出株を中心に買いが先行し、東証1部の9割超が値上がりする全面高商状。同水準を目先のレンジ上限に置いていた市場関係者も多く、天井到達かそれとも通過点に過ぎないのか、ドルの100円突破がカギを握るとみられている。
調整含みだった前週とは一転して、連休明けの日本株は一気に大台を突破。市場では一段高の可能性を指摘する声も強まっている。国内ではアベノミクスを背景に内需を中心とする景況感の改善が続くとみられているほか、海外勢を中心に買い遅れた投資家などが多く、良好な需給環境が相場を支援するとの見方が多い。日経平均は向こう3カ月間の上値めどとして1万6000円を視野に入れる市場関係者も出始めた。
ただ、ドル100円を突破しない現状では、株価の上値は限定的との見方も少なくない。これまでの株価上昇は期待先行であり、実体経済とは依然かい離がある。実際、足元で発表されている国内企業の2014年3月期見通しも、主力輸出株を中心に市場期待に届かないケースが目立ち、円安が進まない状態ではファンダメンタルズからの裏付けは乏しい。積み上がった裁定買い残などリスク要因も指摘され、一段の株高には外部環境の更なる好転や為替レンジの円安シフトなどが必要との声も出ている。
市場関係者の見方は以下の通り。
●1ドル100円突破で次のステージに
<岡三証券 日本株式戦略グループ長 石黒英之氏>
日経平均の3カ月レンジ予想:1万3500円─1万6000円
日経平均は1万4000円を回復したが、通過点にすぎないとみている。外部環境はこれまで不安定だったが、米雇用統計が非常に良く、欧州中央銀行(ECB)も日米にそろって金融緩和を強化する動きとなっており、投資環境としては株式などのリスク性資産に資金が向かいやすい状況だ。あとはきっかけ待ちで為替が1ドル100円突破となれば、日本株は上方向に拍車がかかり、次のステージに入るとみている。
米国に先日出張したが、日本株への興味は強く、買いそびれている投資家は依然として多い。大型株はこれまで買ってきている面もあるため、海外投資家からは、中小型株への興味もかなり示されていた。日本株市場は流動性も潤沢で時価総額もあるため、需要を取り込みやすい。
●政府・中央銀行の積極策で日本株優位は変わらず
<みずほ証券 投資情報部長 稲泉雄朗氏>
日経平均の3カ月レンジ予想:1万3500円─1万6000円
日経平均の1万4000円台は過去の累積売買高が少なく、需給面からは上昇しやすい水準だ。今後の米中経済指標が悪くても日本の場合は、政府と中央銀行が強力なタッグを組んで積極的な政策を推進している。日本株には米ダウ平均を上回るパフォーマンスが期待できる。仮に米連邦準備理事会(FRB)の出口論が出ても、円安を通じて日本株は恩恵を受ける。リスク要因は為替が1ドル100円を超えた際の新興国からの円安批判や、積み上がった裁定買い残だ。何らかの悪材料が出た場合、裁定解消売りから下げ幅が拡大しやすい。
●ドル100円などで年後半にかけ一段高の展開
<BNPパリバ証券 日本株チーフストラテジスト 丸山 俊氏>
日経平均の3カ月レンジ予想:1万3500円─1万4500円
欧州中央銀行(ECB)理事会での利下げにより、追加緩和が欧州経済を下支えするとの見方が広がったほか、米国では雇用統計など予想を上回る経済指標の発表を受けて、世界景気の先行き懸念が後退した。日本株にとっては外部環境の改善に加え、円が対ドル、対ユーロで下落したことが日経平均1万4000円回復の背景だ。
ただ今後は上値の重さが徐々に意識されるだろう。目先、欧米経済が一段と成長するとは考えづらく、足元での企業の設備投資が低調なこともあり、夏までは踊り場を迎えそうだ。一方、国内では内需を中心とする景況感の改善が続き、株価を下支えする見通し。日経平均は当面、1万4000円を挟んだボックス相場となりそうだ。年後半にかけては外部環境の更なる好転やドル/円の100─110円レンジへの移行などを手掛かりに1万5000円を目指す展開とみている。
●「酔い」がさめたときに驚きも
<アストマックス投信投資顧問 証券運用部 シニアファンドマネージャー 山田 拓也氏>
日経平均の3カ月レンジ予想:1万3100円─1万4500円
日本株は上がるから買う、買うから上がるというパターンに入っており、一段高の可能性もある。ただ、今の相場は気持ちで上昇している部分が大きく、実体経済は市場の期待ほどにはまだ改善していない。これまでに出ている国内企業決算でも市場の期待より慎重な見通しが示されている。「酔い」がさめたとき、相場はこんなに高いところまで上昇していたのかと驚くかもしれない。日経平均は指数寄与度の大きい銘柄の勢いが落ち始めていることも注意しておくべきだろう。
(ロイターニュース 株式マーケットチーム)

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