インタビュー:急激な円安や金利上昇心配=中原元日銀審議委員

インタビュー:急激な円安や金利上昇心配=中原元日銀審議委員
4月4日、元日銀審議委員の中原伸之氏は、ロイターのインタビューに応じ、日銀が打ち出したマネタリーベース(資金供給量)を2年で倍増させる量的緩和について、あまりに急激・巨額な金融緩和と指摘。2月撮影(2013年 ロイター/Shohei Miyano)
[東京 5日 ロイター] 元日銀審議委員の中原伸之氏は4日、ロイターのインタビューに応じ、日銀が打ち出したマネタリーベース(資金供給量)を2年で倍増させる量的緩和について、あまりに急激・巨額な金融緩和であり、「急激な円安や長期金利上昇などが起きないか私も心配」と懸念を示した。中原氏は2001年の量的緩和導入の先導役だった。
これまでも中原氏は、安倍晋三首相の事実上のアドバイザーとして、現在は50兆円超の当座預金残高を年末まで100兆円に引き上げるなどの量的緩和策の再採用を提唱してきた。ただ同氏は2012年末に138兆円だったマネタリーベースを14年末に270兆円まで拡大するとの日銀の発表について「あまりに急激な金融緩和で驚いた」と指摘した。
「市場と駆け引きしながら政策を出していくのが資本主義経済での中央銀行だが、今後2年間の政策の手の内を見せてしまった。リーマン・ショックのような危機が起きた際に追加手段が残されていないのでは」と懸念。先々の政策を縛る今回の発表手法は「戦時中の統制経済を連想させる。日銀の『資産倍増計画』だ」と表現した。
その上で「巨額な資金供給を行うのに必要な国債を市場から買い集めることが可能なのか、政策の実効性も不透明だ」「量は質に転嫁する。急激な金融緩和で円安や長期金利上昇が起きかねない」と懸念する。
更に「従来政策からの大幅な方向転換にもかかわらず、審議委員が全員一致で決めたのには驚いた」と述べ、委員らの有識者としての見識が問われると同時に「結論ありきで会合が進んだ印象」と警戒感を示した。
(ロイターニュース 竹本能文;編集 佐々木美和)
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