アングル:岩田氏「金融緩和で円安」、誘導批判の回避がカギに

アングル:岩田氏「金融緩和で円安」、誘導批判の回避がカギに
3月5日、次期日銀副総裁候補の岩田規久男・学習院大教授は、日銀が金融緩和で金融機関の手元資金を示す当座預金を増やせば、期待物価上昇率が上昇し、円安や株高につながるとの見解を示した。写真は都内で撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)
[東京 5日 ロイター] 次期日銀副総裁候補の岩田規久男・学習院大教授は5日、衆院議員運営委員会で所信表明し、日銀が金融緩和で金融機関の手元資金を示す当座預金を増やせば、期待物価上昇率が上昇し、円安や株高につながるとの見解を示した。
4日も都内の講演で同様の発言をしているが、主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では為替を目的とした金融緩和がけん制されたばかり。就任後には、日銀の金融緩和が円安誘導とみられないよう情報発信に工夫する必要がありそうだ。
岩田氏は、日銀が2%の物価目標達成を目指し大胆に金融緩和を進める姿勢が市場の信認を得れば、予想物価上昇率の上昇を通じて予想実質金利が下がり、実際の物価が上がり始める前に円安・株高が進むと繰り返し説明。4日の講演では、当座預金残高が10%増えると予想物価上昇率が0.44ポイント上昇すると図表を使い説明。「期待物価上昇率が2%ポイント上がれば、為替は15円の円安、日経平均株価は4000円上昇する」と踏み込んだ。
また、5日の所信表明後の質疑では「円安誘導とみられる外国債券(外債)購入は必要ない」と述べたが、「外債購入、手段としてはとっておくべき」とも発言し、将来の金融政策手段として含みを残した。
安倍政権にとって金融緩和期待による円安・株高は政策の一丁目一番地だったが、「通貨の競争的な切り下げを回避する」との表現が盛り込まれた2月のG20声明などを受け、円安など周辺国に影響を与えるほどの積極緩和は難しくなるとみられている。安倍政権としては、日本のデフレ脱却が世界経済にもプラス、との理屈で金融緩和強化について海外の理解を求めていかざるを得ない。
G20声明については「これまでの円安は許すが、これ以上はダメと言われたのも同然だ」(通貨当局関係者)との見方もある。日本同様に強力な金融緩和を続ける米国などは日本の緩和強化に理解を示しているとされているが「1ドル100円以上の円安は許してもらえない」(別の通貨当局関係者)との声も聞こえる。
参院選を控えた安倍政権、消費増税を実施するためにも景気回復ムードを演出したい財務省などは、現行水準で安定するか緩やかな円安基調が持続することに期待する。ただ円安誘導との国際的な批判が高まれば元も子もなくなるため、金融緩和が円安誘導を目的としたものでない点を強調し続ける必要がある。こうしたなか、政府関係者のなかにも「発信しすぎているが大丈夫だろうか」として、岩田氏の発言を危ぶむ声が出ている。岩田氏が副総裁に就任するのであれば、情報発信の仕方にも工夫が求められそうだ。
(ロイターニュース 竹本能文:編集 宮崎大)

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