アングル:グリッロ氏、今を変えたいイタリア有権者取り込み「大金星」

アングル:グリッロ氏、今を変えたいイタリア有権者取り込み「大金星」
2月25日、改革継続の審判を国民にあおぐものとして注目されたイタリア総選挙。何より目をひくのは、コメディアンのグリッロ氏(中央)率いる「五つ星運動」の躍進だ。ジェノバで撮影(2013年 ロイター/Giorgio Perottino)
[ローマ 25日 ロイター] 改革継続の審判を国民にあおぐものとして注目されたイタリア総選挙。モンティ政権が推し進めた痛みを伴う改革路線を継続する中道左派連合が勝利すると予想されていたが、ふたを開けてみれば、反緊縮の中道右派が予想以上に票を伸ばした。
しかし、何より目をひくのは、コメディアンのグリッロ氏率いる「五つ星運動」の躍進だ。
反緊縮、ユーロ圏離脱の是非を問う国民投票などを主張するグリッロ氏は、選挙の数週間前から目を見張る勢いを見せていたが、よもや4分の1もの票を集めるとは予想されていなかった。
最新の開票結果によると、下院(定数630議席)は中道左派連合が過半数議席を確保。一方、上院(定数315議席)は中道左派が121議席と、ベルルスコーニ前首相の中道右派連合の117議席を上回る議席を確保したものの、モンティ首相の中道連合(22議席)と組んでも過半数に達しない。こうしたなか、グリッロ氏の「五つ星運動」は上院で54議席を獲得し、下院でも単独では第1党となる見通しだ。
グリッロ氏は選挙後「快挙だ。われわれは3年で最大政党になった」、「素晴らしい冒険だった。これからは選挙戦の公約をすべて実行していきたい」と淡々と述べた。
グリッロ氏は選挙戦で、汚職がはびこる政界に憤る有権者の心をつかんでいった。
ロンドンのシンクタンク、デモスは「グリッロ氏成功の影響はイタリアだけでなく、広く波及する。彼の成功は変革への意欲を示す。メーンストリーム政党はこれを深刻に受け止めるべきだ」と指摘した。
グリッロ氏は、今後の連立協議で重要な鍵を握る人物となる。主要政党は「彼ら(五つ星運動)と協力して合意できる点を見出していく」とベルサニ氏の民主党(PD)メンバーが述べるなど、早くもグリッロ氏に秋波を送る。ただ、当のグリッロ氏がその役を演じたいかどうかは未知数だ。
<スキャンダルにうんざり>
インターネットでの予備選で選出された「五つ星運動」の候補は、ほとんどが政治の素人。4分の1がブルーカラー出身だ。
グリッロ氏は、自分は「五つ星運動」の「保証人」、スポークスマンにすぎないと称している。
既存政党の「ゾンビ」と一緒にされるのを嫌って政治討論番組にはまったく出演しない。「五つ星運動」の候補者にもそれを禁じている。
グリッロ氏は、その巧みな話術で理想的な「顔」になっている。しかし、多くのアナリストは、「五つ星運動」の支持者は専門技術を持つ若者など、地に足がついた考えを持つ現実主義の人が多いと指摘する。
インターネットやソーシャルメディアを通じて結成された「五つ星運動」の台頭は目覚しい。初めて挑戦した2010年の選挙では1.8%しか得票できなかったが、翌年のミラノ市長選挙では3.4%に得票率を伸ばした。
昨年の地方選挙では4人が首長に当選した。その平均年齢は31歳。「老人」が幅をきかせるイタリア政界では珍しい。
総選挙の投票を目前にした22日、グリッロ氏は、トレードマークのハスキーボイスでこう訴えた。「われわれはイタリアで、3番目、2番目、最大の党になっている」。
その時点で、それが現実のものになると考えた評論家はほとんどいなかった。だが、全国の投票所の外でロイターの取材に応じた有権者のコメントは、何か変化を予感させるものだった。
その1人、グリッロ氏を支持するローマ在住の弁護士(49)は「スキャンダルや腐敗にはうんざりだ。議会に求めるのは若くて新しい人。信用が失墜した古い政党のメンバーではない」と語った。
(Gavin Jones記者;翻訳 武藤邦子;編集 山川薫)
*誤字を修正して再送します。

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