アングル:敦賀原発、危険な場所で長年稼働

アングル:敦賀原発、危険な場所で長年稼働
12月10日、日本原子力発電の敦賀原発をめぐり、原子力規制委員会が2号機建屋の直下にある断層は「活断層の可能性が高い」との判断を示したことは、危険な場所で原発が長年にわたり稼働してきた実態を裏付けることとなった。2011年7月撮影(2012年 ロイター/Issei Kato)
[東京 10日 ロイター] 日本原子力発電の敦賀原発をめぐり、原子力規制委員会が2号機建屋の直下にある断層は「活断層の可能性が高い」との判断を示したことは、危険な場所で原発が長年にわたり稼働してきた実態を裏付けることとなった。
国は活断層の真上に原子炉など重要施設を置くことを「想定していない」との文言で禁止している。東京電力<9501.T>が福島第1原発事故で強調した「想定外」という誤りを、日本原電が安全の根幹部分で抱えていたことが濃厚になった。
<危険性の指摘、80年代以前から>
活断層の真上に原子炉などの重要施設の設置を禁じているのは、地割れにより原子炉建屋が傾いたり、安全確保のために重要な配管などが破損して機能しなくなる恐れがあるため。ところが、1970に運転開始した敦賀原発は日本で唯一、敷地内に活断層(浦底断層)の存在が確認されている原発だ。
同社が浦底断層を活断層だと認めたのは2008年3月だが、鈴木康弘・名古屋大教授は、「浦底断層が活断層であることは1980年代以前から可能性が指摘され、1991年には確実視されていた」と批判。同教授は、今回、原子炉直下の破砕帯が活断層である可能性が高いと指摘した調査団のメンバーだ。
<活断層が原発敷地にある異常ぶり>
浦底断層は敦賀原発2号機原子炉建屋から250メートル程度しか離れていない。活断層の恐ろしさは、大都市・神戸に甚大な被害をもたらした阪神大震災(兵庫県南部地震、1995年)で証明されている。鈴木教授とともに調査団に加わった宮内崇裕・千葉大大学院教授は、10日の規制委会合で「兵庫県南部地震をはるかに超える大地震が起きる可能性ある。こうした断層が原発敷地内にあること自体が異常事態で脅威的」と警告した。
規制委は来年7月までに耐震安全性を含む再稼動の新しい安全基準を策定する予定。原子炉など重要施設の直下に活断層があるケースに限定せず、敷地内や近隣にあった場合に稼働を認めるかどうかも焦点となりそうだ。規制委の田中俊一委員長は今月5日の会見で、活断層が原子炉の直下にあることとは別に、原発の近くにある場合の扱いも「疑問を持っている」と語り、地震学が専門の島崎邦彦委員長代理に判断を委ねていることを明らかにした。
<規制委は独立性保てるか>
福島原発事故を教訓とした原子力行政の最大の変化は、安全行政を経済産業省から取り上げて、一元的に担う規制委を9月に発足させ、利用と規制の行政組織を分離したことだ。福島事故の国会事故調査委員会は今年7月に公表した報告書で、「規制する立場とされる立場に逆転関係が起き、規制当局は電気事業者の虜(とりこ)となっていた」ことを、事故の根源的原因に挙げた。国際原子力機関(IAEA)からも規制と推進の分離の必要性を指摘されてきた。
規制委が今回、既存原発に対する事実上の「レッドカード」を出すという前例のない判断に踏み切ることになったのは、規制委の政治からの独立性が法律で保証されたことも一因とみられる。
すでに規制委は、原発内の断層調査について稼働中の関西電力<9503.T>大飯原発で着手し、今後は東北電力<9506.T>東通原発、北陸電力<9505.T>志賀原発などでも予定されている。一見厳しそうにみえる規制委による敦賀原発に対する判断も、「原発に対する信頼を回復させ再稼動にめどをつけるには、安全な原発とそうでない原発を峻別すること」(政府関係者)との考え方が背景になっている可能性もある。
今月16日に投開票される衆議院総選挙は、原子力のあり方が大きな争点となっている。次期政権が、法律で保証されている規制委の政治からの独立性を尊重するかどうかは、原子力行政を前進させるのか、「3.11」以前に戻すのかの試金石になりそうだ。
(ロイターニュース、浜田健太郎;編集 久保信博)

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