武器輸出に資金援助、防衛省が新制度創設を検討へ=関係者

武器輸出に資金援助、防衛省が新制度創設を検討へ=関係者
 11月27日、防衛省が軍事装備品の輸出を後押しする新しい資金援助制度の創設に向けた検討に入ることが分かった。写真は自衛隊の護衛艦。ハワイ・オアフ島沖で7月撮影(2014年 ロイター/Hugh Gentry)
[東京 27日 ロイター] - 防衛省は、軍事装備品の輸出を後押しする新しい資金援助制度の創設に向けた検討に入る。武器を日本から調達する国や、他国との共同開発に乗り出す日本企業などを金融面で支援。政府開発援助(ODA)では扱えない相手国の軍事力向上に協力できる体制を整える。
日本との安全保障関係を強化することが狙いだが、世論の反発など実現には紆余曲折が予想される。
<16年度予算に反映>
防衛省は、有識者による研究会を12月中旬にも立ち上げる方向で調整している。輸出案件の発掘から相手国や競合国との交渉、輸出に当たっての資金援助、修繕・管理まで、「輸出を促進するためのすべての問題を議論する」(関係者)という。
研究会には安保政策や武器輸出に詳しい有識者のほか、金融や法律の専門家、防衛産業の関係者などに参加を打診した。複数の関係者によると、2016年度の予算要求に具体的な施策を盛り込めるよう、来夏までに提言をまとめる予定だという。
制度の本格的な検討はこれからだが、政府内では独立行政法人や特殊会社を通じて財政投融資を資金援助に使う案などが浮上している。途上国が日本から武器を購入する際に有償・無償で援助をしたり、相手国の産業振興につながる共同開発・生産に参画する日本の装備メーカーに、低利融資を提供することなどを想定している。
また、輸出した武器を使いこなす訓練や修繕・管理の支援に、退役自衛官などの人材を派遣する機能を付加することも議論されている。
「ファンド機能と実行部隊。国際協力銀行(JBIC)と国際協力機構(JICA)をミックスしたようなイメージだ」と、関係者は話す。既存の政府系機関を活用する以外に、新組織を設立する必要性も、研究会の議論に上る可能性がある。
<シャングリラの公約>
日本は4月に武器の禁輸政策を見直し、一定の条件を満たせば輸出を許可する防衛装備移転三原則を導入した。5月の東アジア安全保障会議(シャングリラ対話)で講演した安倍晋三首相は、南シナ海をめぐって中国と緊張状態にある東南アジア諸国連合(ASEAN)の海洋安全保障を支援することを約束した。
しかし、それ以降に決まったASEAN向けの協力は、ODAを使ってベトナムの海上警察、漁業監視部隊という非軍事部門に船舶を無償供与する案件のみ。官民の一行が需要を探りにマレーシアへ飛んだほか、ASEAN各国を日本に呼んで装備品の展示会を開催、掃海艇の造船所に案内するなどしているが、軍隊向けの武器輸出は具体化しそうな案件がまだない。
防衛省はODAで許されていない軍事支援向けの資金援助や、需要の発掘、修繕・管理の協力体制を整えることで、装備品の輸出を促進したい考え。「三原則の見直しで審査プロセスは整ったが、積極的に武器移転を進めるような制度が構築できているわけではない」と、関係者は話す。「新たな三原則が生きるかどうかは、今後の政策次第だ」と語る。
一方で、実現には財務省や経済産業省、外務省など関係省庁との調整のほか、武器輸出拡大への反発が予想される世論の説得が必要になる。関係者は「この仕組みは必要だ、そうみんなに理解してもらえるようにしないといけない」と話す。
防衛省の報道官はロイターの取材に対し、「防衛装備移転についてはさまざまな検討をしているが、何も決まっていない」としている。

久保信博、ティム・ケリー 編集:北松克朗※

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