米アマゾンが赤字転落、開発投資や欧州景気減速が重し

米アマゾンが赤字転落、開発投資や欧州景気減速が重し
10月25日、ネット通販世界最大手の米アマゾン・ドット・コムが発表した第3・四半期決算は、最終損益が2億7400万ドル(1株当たり0.60ドル)の赤字となった。写真は2008年、コロラド州で撮影(2012年 ロイター/Rick Wilking)
[サンフランシスコ 25日 ロイター] ネット通販世界最大手の米アマゾン・ドット・コムが25日に発表した第3・四半期決算は、赤字に転落した。開発向けの支出増や欧州の景気減速が響いた。
決算を受け、アマゾン株は時間外取引で221ドルと小幅下落した。
最終損益は2億7400万ドル(1株当たり0.60ドル)の赤字。前年は6300万ドル(同0.14ドル)の黒字だった。
第3・四半期の損失には、共同購入クーポンサイト運営会社の米リビングソーシャル向け投資に絡んだ減損費用も含まれる。
売上高は27%増の138億1000万ドル。
ロイター・エスティメーツがまとめたエコノミストの予想は、平均で1株当たり0.08ドルの純損失、売上高は139億ドルだった。
BGCパートナーズによると、アマゾンは第2・四半期まで18四半期連続で黒字を計上していたが、第3・四半期で連続黒字記録がとだえた。
<年末商戦は競争激化>
アマゾンは、第4・四半期の売上高について、アナリストの見通しを下回る予想を示した。営業利益については、幅の広い見通しを示した。
モーニングスターの株式アナリスト、RJホットビー氏は「ガイダンスには量販店や大規模小売店との競争激化を織り込んだのだろう」と指摘。「今年の年末商戦は激しい競争が予想され、アマゾンにとっても、最終的にどのような結果になるかは不透明だ」との見方を示した。
アマゾンは今年の年末商戦で一段の競争激化に直面する。ターゲットやベスト・バイなど大手小売企業は、一部商品について、アマゾンのウェブサイトと同価格での提供を計画。ウォルマートが一部都市で即日配送を試験導入するほか、ターゲットはオンラインでは買うことのできない店舗限定品の提供を増やすとしている。
<開発投資や欧州経済が重し>
アマゾンは、新たな物流倉庫や、クラウドコンピューティング事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」をサポートする技術に対して、大規模な投資を行っている。タブレット、電子書籍端末「キンドル」を通じて販売するデジタルコンテンツにも多額の資金を投入する。
トム・スクータック最高財務責任者(CFO)は、技術やインフラ、デジタルコンテンツに対する大規模な投資は今後も続ける、と述べた。
こうした「キンドル」製品は原価で販売されているため、短期的には利益の圧迫要因だ。アマゾンは、長期的には、消費者にキンドルを通じて同社から商品を購入してもらうことで利益を稼ぎ出すことを狙う。
アマゾンは9月、新型「キンドル・ファイア」を発表。スクータックCFOは、需要は「ファンタスティック(すばらしい)」としている。
ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は声明で、新型で199ドルの「キンドル・ファイアHD」、新型電子書籍端末「キンドル・ペーパーホワイト」、エントリーレベルで69ドルの電子書籍端末「キンドル」が、販売台数でみて同社サイト上での3大ベストセラーと述べた。
CFOは、「キンドル・ファイア」のユーザーはデジタルコンテンツの購入や無料ビデオコンテンツの視聴が多いと指摘。新たなタブレットや電子書籍端末の導入は、デジタルコンテンツ販売にプラスと述べた。
欧州の債務危機とリセッションを背景に消費者需要が冷え込んでおり、成長著しいネット企業も影響を免れない、との懸念が出ている。
イーベイのスワン最高財務責任者(CFO)は先週、欧州経済の弱さを理由に、今年の年末商戦は「そこそこ」との見方を示した。
アマゾンの第3・四半期の北米売上高は前年同期比25%増の78億8000万ドル。欧州を含む海外は17%増の59億2000万ドル。
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