コラム:金相場が発する「危険な9月」のシグナル

コラム:金相場が発する「危険な9月」のシグナル
8月7日、金価格は春先に大きく値崩れして以降は概ね落ち着いていたが、ここにきて再び下降線をたどっており、再び金融市場に警告を発し始めたのではないだろうか。写真はニューヨークで6月撮影(2013年 ロイター/Shannon Stapleton)
[7日 ロイターBreakingviews] - By Ian Campbell
最近の金相場は、再び金融市場に警告を発し始めたのではないだろうか。春先に大きく値崩れした金価格は、再び下降線をたどっている。米連邦準備理事会(FRB)が9月に量的緩和縮小に着手するという観測の再浮上が背景にある。
今年4月、金価格の10%を超える下落は、FRBの「無制限な」量的緩和への期待終了という大きな変化が接近していることを示唆していた。その後、米10年債利回りは1.6%から2.6%に跳ねた。新興市場は下落し、商品市場は停滞した。文句なしの勝者は先進国の株式市場だけであり、米株はS&P総合500種指数が約10%上昇した。
足元の金相場下落は多分4月の繰り返しだが、先進国株式市場にとって良いニュースは恐らくない。
米国から聞こえてくる経済ニュースは、FRB当局者を焦らせるには十分な内容だ。FRB内でハト派とされるシカゴ地区連銀のエバンズ総裁も8日、経済指標次第では9月に緩和縮小を開始する可能性があると述べた。FRBの懸念が減れば減るほど、投資家の不安は増える。
投資家の不安は金相場を一段と下押しする可能性がある。4月ほどのペースではないにせよ、金相場は金融市場における「炭鉱のカナリア」であり、他のマーケットでさらに大きな問題が起こる可能性を示唆している。とりわけ、資金の安全な退避先とされる国債が再び危なく見える。FRBの資産買い入れ縮小、より確かな経済成長とインフレ率の上昇は、すべて国債市場にとっては逆風になるが、利回りはまだ非常に低いままだ。
商品市場と新興市場は金相場より2年早く、2011年4月に下落トレンドが始まった。どちらのケースも、米経済回復と米ドルの超安値からの漸進的な上昇は、結果的にネガティブな要因となった。米緩和策が縮小されれば、米ドルはさらに上昇し、商品と新興市場は下げ基調継続に傾きやすい。
原油相場は下降トレンドに対する抵抗力を見せている。北海ブレント原油先物は4月とほぼ変わらない水準で推移している。しかし、原油価格はFRBがいったん引き締めに動けば急変する可能性がある。それは商品需要と世界のGDP成長率にとっては良いことであろうし、FRBが臆病になるべきではない理由の1つだ。
先進国の株式市場についてはどうだろうか。7月の上昇より6月のぐらつきの方が有効なシグナルと言えるかもしれない。緩和マネーという燃料がついに切れ、市場金利の上昇が伴えば、割高感を増した株式市場が打撃を受けないと考える方が難しいのではないか。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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