再送-WRAPUP 1-日銀「展望リポート」14年度小幅上方修正、賃上げの重要性強調 

(本文を一部修正しました)
    [東京 31日 ロイター] - 日銀は31日、半年に1回公表している「経済・物
価情勢の展望」(展望リポート)を発表した。2015年度までの見通しを7月と比べて
ほぼ据え置き、民間エコノミストとの比較では高めの見通しを維持した。2%の物価目標
の達成を判断するうえで、家計の雇用・所得動向を主なリスク要因として挙げた。
    14年度の成長率は、政府による経済対策を踏まえ小幅上方修正とした。会見した黒
田東彦総裁は、消費増税による景気腰折れの可能性は低下しているとの見通しを示した。
総裁はここ数カ月はBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)が伸び悩むことにも言及
。リスク要因の顕現次第では、物価目標達成に向け、政策調整を行う方針も改めて示した
。

    <14年度成長率0.2ポイント引き上げ、「増税で腰折れの可能性低減」>
    
    展望リポートでは、新興国経済の減速を反映し、13年度成長率を前年度比2.7%
と0.1ポイント下方修正した一方、14年度の成長率は1.5%と0.2ポイント引き
上げた。
    物価については、13年度見通しを0.7%と0.1ポイント引き上げたが、14年
度は1.3%、15年度は1.9%とそれぞれ据え置き、2%目標は15年度に達成可能
との見通しを維持した。    
    
    今後の経済見通しの変動要因として、前回4月同様に、海外経済、消費税引き上げの
影響、企業や家計の中長期的な成長期待、財政の中長期的な持続可能性を挙げたが、今回
新たに、家計の雇用・所得動向を加えた。
    日銀としては従来から重視しているが、円安によるエネルギー・食品価格の上昇で物
価が順調に上がりつつあるため、バランスのよい物価安定の実現に向けて、賃上げの実現
動向を従来にも増して重視していることを示した格好だ。
    
  
    黒田総裁は会見で、14年度の成長率見通しの上方修正について「消費税引き上げに
よる成長率への影響が、政府の経済対策などいくつかの要因で緩和されている」とし、増
税で景気が腰折れする可能性は低くなったとの見方を提示。物価が2%の目標に向け順調
に上昇しつつあると金融緩和の効果に自信を持っていることを印象付けた。
 
      <BEI伸び悩み、「必要なら政策調整」>
       
    ただ、予想インフレ率の指標のひとつで、物価連動国債と普通国債の利回り差から算
出されるBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)について、「半年前や1年前と比べ
ると着実に上昇している。ここ数カ月はどんどん上がっていく状況でない」と指摘。内外
のリスクを点検し、物価目標の実現に必要があれば、当然政策調整を行うとも語った。

  展望リポートの内容を受け、市場では「目標達成が難しいとみられている中で、外部
要因や消費税引き上げに対する警戒感などから、来年序盤に向けて追加緩和期待は一層高
まりやすく、これがドル/円相場を下支えする可能性がある」(みずほ証券・チーフFX
ストラテジスト、鈴木健吾氏)との追加緩和期待が聞かれた。
    
    一方、経済・物価について「日銀の見通しが絶対に違う、という証拠もいまのところ
ない。政府主導で春闘での賃上げを目指すなかで、所得、消費の好循環が出てくる可能性
もなくはない」(RBS・チーフ債券ストラテジスト、福永顕人氏)と、順調に物価上昇
が続く可能性を指摘する声もあった。
    

          <政策委員の大勢見通し> 
     対前年度比、%。なお、< >内は政策委員見通しの中央値。
                        実質GDP           コアCPI         消費税率引き上
                                                                げの影響を除く
                                                                コアCPI
 2013年度           +2.6─+3.0         +0.6─+1.0                      
   <中央値>         <+2.7>            <+0.7>                         
  7月時点の見通し     +2.5─+3.0         +0.5─+0.8                      
   <中央値>         <+2.8>            <+0.6>                         
                                                                               
 2014年度           +0.9─+1.5         +2.8─+3.6       +0.8─+1.6
   <中央値>         <+1.5>            <+3.3>          <+1.3>
  7月時点の見通し     +0.8─+1.5         +2.7─+3.6       +0.7─+1.6
   <中央値>         <+1.3>            <+3.3>          <+1.3>
                                                                               
 2015年度           +1.3─+1.8         +1.6─+2.9       +0.9─+2.2
   <中央値>         <+1.5>            <+2.6>          <+1.9>
  7月時点の見通し     +1.3─+1.9         +1.6─+2.9       +0.9─+2.2
   <中央値>         <+1.5>            <+2.6>          <+1.9>
 
 (ロイターニュース 竹本 能文 編集;田巻 一彦)

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