コラム:米デフォルトに有効なサーキットブレーカー

コラム:米デフォルトに有効なサーキットブレーカー
10月7日、状況が不透明な局面では、全てのポートフォリオにサーキットブレーカーが必要だ。写真は米ワシントンの連邦議会議事堂。6日撮影(2013年 ロイター/Jonathan Ernst)
ジョン・ワーシック氏
[シカゴ 7日 ロイター] - 状況が不透明な局面では、全てのポートフォリオにサーキットブレーカーが必要だ。債務の上限突破が迫るなか、株価や債券のインデックスとは逆方向に動くインバースETF(上場投資信託)を検討するのは良い考えだ。
最初の主要なハードルは10月17日。この時点で、財務省が債券を発行するには新たな権限が必要となり、権限が得られなければデフォルト(債務不履行)に直面する。市場がもしも、議会が財政問題で合意できないことに動揺したら、どうなるか。トレーダーがもし、これ以上の債券発行はないと確信すれば、財務省証券の金利は急騰するだろう。
インバースETFを活用すれば、政治的なリスクをさまざまな手法でヘッジできる。財務省証券の利回りが上昇(価格が下落)すれば利益が得られる「プロシェアーズ・ショート7─10トレジャリーETF」は検討に値する。10月4日までの1年に同ETFは2.4%上昇した。米債券市場と連動する「バークレイズUSアグレゲート・ボンド・トータル・リターン・インデックス」はこの期間、リターンが1.7%のマイナスとなった。同ETFの手数料は年間0.95%だ。
債務上限をめぐる現在の混乱は、債券価格を下落させ、米政府の信用に対する信頼感を後退させるだけにはとどまらない。米経済全体にも、悪影響は及ぶだろう。政府は歳出を少なくとも3分の1、削減することが必要になってくる。つまり、防衛セクターの下請け業者から、社会保障給付金の受給者まで全員が、支払いを待たされることになる。そうなれば、米国は再びリセッション(景気後退)に陥る可能性もある。
BMOプライバート・バンクのジャック・アブリン最高投資責任者(CIO)は「最終的には混乱は収まり、株価も回復するだろうが、米経済の18%が機能停止に陥れば、影響は残る。財務省証券がデフォルトとなれば、米金融市場は崩壊する」との見方を示している。
最も大きな影響が出るのが株式市場だ。こうした事態をヘッジする手法の1つが、オールパーパスベアETFの「ディレクション・デイリー・トータル・マーケット・ベア・1X・ETF」。「MSCI・US・ブロード・マーケット・インデックス」と逆の動きをし、年間手数料は資産の0.67%だ。S&P総合500種が10月4日までに16%上昇しているため、このETFは19%近く下落している。
インデックスをショートにするよりも緩やかなアプローチとしては、すでに十分にヘッジされているポートフォリオを保有することだ。
投資信託「パーマネント・ポートフォリオ」は、米株にも債券にも過度に投資することを嫌う心配性な人向けだ。これはポートフォリオの約3分の1が株式で、4分の1が金・銀塊とコイン、27%が債券、残りがキャッシュとなっており、年間の手数料は0.69%。
同ファンドはサーキットブレーカー戦略をとっているため、今年の大半に見られたように、米株が急伸し金が下落すればパフォーマンスは悪くなる。同ファンドは今年、10月4日までの時点で3%下落した。株価が37%下落した08年にはファンドは8%の下落にとどまった。
<ボラティリティー指数に注目を>
ウォールストリートは、現時点では、デフォルトの可能性について、メインストリートほどには懸念していない。しかし、もしあなたが元本を維持する必要があり、ポートフォリオに収入を頼っているとすれば、株価の日々のボラティリティーを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー・インデックス(VIX指数)を参考にして、市場がどう政治に反応しているのかを判断することが重要になる。
VIX指数は今年初めにかけ22に達したが、3月にはその半分に低下した。しかしその後は上昇に転じ、直近週には18を上回った。ただし、2008年の80と比べると、それほど際立った数字ではない。
それでも、最も打撃を受ける可能性が高いのはどこなのか、考えることが大切だ。最もリスクエクスポージャーが大きいのはどこか。ポートフォリオの大半が債券であるなら、金利上昇への備えが必要になる。
念頭に置くべきなのは、インバースETFの場合、それが反映する市場がプラスであれば、パフォーマンスはマイナスになるという点だ。こうしたETFは、最悪の事態への保険であり、主流の投資先ではないと考えるべきだ。
また、特定の指数が下落すると、2倍、3倍の利益が得られるレバレッジドETFにも注意が必要。これは不慣れな投資家向けではなく、ストップロスリミットをつけて購入するのが賢明だ。危険性の高い商品であるため、どの程度の損失まで耐えられるのか、考える必要がある。
どのような手法を選ぶにせよ、市場が、もしくはワシントンがどのタイミングで、どう動くのか、見極められるとは思わない方がいい。推測に失敗し、損失を被る可能性が高い。大半の投資家は乗り遅れるのが常であり、市場が回復した際も復帰に時間がかかることが多いものだ。
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