コラム:iPhone5を買わない理由

コラム:iPhone5を買わない理由
9月21日、世界中で多くの人がiPhone5に飛びついたことだろうが、自分はその1人になるつもりはない。真のイノベーションの渦中にあるのはスマホではなく、タブレット端末だ。写真は21日、都内で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)
By John C Abell
世界中で多くの人が、米アップルの新型スマートフォン「iPhone5」に飛びついたことだろう。自分はその1人になるつもりはない。5年前に初代モデルが発売されて以降、私はiPhoneの新製品が出るたび、たとえ契約期間が残っていたとしても、必ず新機種に買い替えてきた。しかし、今回はその習慣を見送ることにした。
アップルは今回も販売台数の記録を作っているが、私はiPhone5の登場を、携帯端末の主役としてのスマホが「終わりの始まり」を迎えたとみている。誤解しないでもらいたいのは、少なくとも今はまだ、iPhoneや他のスマホに愛想を尽かした訳ではないということだ。iPhone4Sが自分にとって最後のアップル製品になるとも考えていないし、スマホがもう役に立たないと言っている訳でもない。
iPhoneはあまりにも日常生活に溶け込んでいるので、それがもたらす「幸福感」の多くがソフトウエアによるものだということを忘れてしまいがちだ。4Sは十分に速いし、素晴らしいカメラも搭載している。ディスプレーも高性能で、わずか1年前にはアップルの自慢の種だった。
iPhone5の4インチ画面採用や次世代高速通信LTEへの対応も十分に好感を持てるものだ。しかし、iPhoneの改良が抜本的なものであろうと小さいものであろうと、毎年のように買い替えるだけの理由はもう見当たらない。市場に出回っているスマホはすでに十分ハイスペックであり、真のイノベーションの渦中にあるのはスマホではなく、タブレット端末だ。
われわれの心を奪う携帯端末の座は、スマホから7インチ型タブレットに取って代わるだろう。市場に出始めた7インチ型タブレットは、iPadにとって初めて本当に競合する製品であり、消費者にとっては初めてiPad以外の選択肢となり得るものだ。
小型タブレットは機能的であり、iPadとは違ってポケットサイズのため、文字通り携帯性にも優れる。グーグルの「Nexus(ネクサス)7」を使っていると、iPadが重く、格好悪いとさえ感じる。アップルが小型版iPadを市場投入するという観測もあるが、小型版が発売されれば、画面サイズ10インチの現行iPadの売り上げをあっという間に抜くだろう。
それが機械というものだ。機械は一切の妥協を排し、性能を上げつつ小型化する。ノートパソコンの性能が上がって価格が下がったことで、デスクトップパソコンはもはや、購入する際には何か特別な理由が必要に感じられる存在になった。
われわれはまだ過渡期の始まりにいるに過ぎないが、軽量化されて処理能力の上がったタブレットは今後、ますます日常生活に入り込んでくるだろう。そうなれば、なぜスマホとタブレットを両方持たなければならないのか、なぜ携帯電話を毎年買い替えないといけないのか、という疑問に突き当たるはずだ。
結論から言えば、多くの消費者にとってはタブレットがメインの端末になり、電話はアプリの1つになるということだ。小型タブレットが生活の中心になれば、スマホは間の抜けた端末ということにさえなるだろう。
タブレット時代の本格的な幕明けを迎えた今、私は2年前と比べ、物事がどこに向かっているかについて確かな手ごたえを感じている。決して後ろ向きではなく、横向きに小さな一歩を踏み出したつもりだが、その道を選んだのは、iPhone5が十分に革新的ではないという理由からではない。タブレットで起きていることに比べると、携帯電話で想定できるイノベーションは取るに足らないものになっているからだ。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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